(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

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日本最速!愛知県知事選挙分析

毎度おなじみ選挙分析ですよ、奥さん! 久々の選挙分析ですよ!
さて、昨日の愛知県知事選。与野党激突は何と32年ぶり。久々のまともな選挙。それが如実に現れているのが投票率。2003年の知事選が38.91%だったのに対し、今回は52.11%。実に13%アップ。前回よりも投票した人が約80万人も増えたわけで、如何に今回の知事選に関心があったかがわかりますな。
では、ここからは色んな角度から見ていきましょうかね。

女性は立ち上がったのか?

連日野党の女性議員が大集合。「女性よ立ち上がれ」とばかりにアジっていたわけですが、まずはそれの効果検証を。
民主などが推した石田芳弘氏陣営(ビジュアルは小泉純一郎)は、選挙戦後半、攻撃対象を柳沢発言に絞り、自公が推す現職の神田真秋氏を攻めた。ま、これはいいわね。それも戦略なんで。問題はその効果。女性をターゲットにした戦略である以上、どれくらい女性が動いたのかが問われるわけですよ。そうでなきゃ連日連夜女性議員に演説させ、共感を呼び起こそうとした意味がないんでね。
で、もしこの攻撃が効果的ならば、男性に比べて女性の方が投票に行くであろうと。「柳沢けしからん」となれば多くの女性が投票に行くであろう。そうなれば、総投票数の女性票の比率が増え、男性票は少なくなるはずだ。そんな仮説が成り立つわけですな。そこで、まずは過去の選挙における男女の投票比率を見てみましょうか。
(表1)主要選挙における愛知県での男女投票比率
       男   女
2007知事選 49.8% 50.2%
2005衆院選 49.3% 50.7%
2004参院選 50.2% 49.8%
2003衆院選 49.7% 50.3%
2003県議選 48.6% 51.4%
2003知事選 49.4% 50.6% 
愛知県選挙管理委員会データより筆者作成
……ダメじゃん。2005年の衆院選より、女性票の割合は減ってるし。無風でつまらんかった2003年の知事選の方が上って結果が何より雄弁。これじゃ「投票率が上がったのは女性の力だ」なんて言えまへん。「2003年の県議選の方がよっぽど女性は動いてたね」という何ともしまらない話。

柳沢発言では女性は立ち上がらず

これが結論。福島瑞穂、お疲れ。あんた意味なかったよ、どうやら。

柳沢発言は影響したのか?

続いては女性に限らず、柳沢発言の効果について検証を。
「あちこちのマスコミは接戦になった理由を柳沢発言に求めているんだけど、本当にそうなのかね」というのが出発点。なんか安易過ぎる気がするんだよね。わかりやすいところに結論を押し付けている感がありまして、ええ。女性票の比率でも明らかなように、今回の選挙に限って女性が特別な投票行動をしたという形跡はないわけですよ。だとするならば、柳沢発言は全く選挙結果に影響してないってこともありうるんじゃねえかと。そういう話ですよ。
そこで(自民・公明)(民主・社民)(共産)の3勢力が、過去の選挙でどれだけのシェアなのかを比較してみましたよ。あ、国民新党は除外ね。だって……データに入れても仕方ねえじゃん。
(表2)主要選挙における3勢力のシェア比較
      自・公 民・社  共産
2007知事選 48.4% 46.1%  5.5%
2005衆比例 52.4% 40.5%  7.1%
2004参比例 41.4% 50.6%  8.0%
2003衆比例 45.3% 47.7%  7.0%
愛知県選挙管理委員会データより筆者作成
結論から言いますよ。

柳沢発言は影響せず

だってそうでしょ。前より民・社は獲ってないんだから。柳沢発言で追い風受けたんであれば、前と同じ程度獲ってもおかしくないし、何より自・公が票を大きく減らしていないとおかしい。実は元々、愛知県というのは「愛知民社」という言葉があったくらい民社党が独占的に強かった地域。そのため、今もって民主党が強いんですよ(新進党も激強だった)。国政選挙では長らく自民が苦杯をなめてきた場所で、2005年の郵政解散による小泉旋風でやっとこさ民主を追い落とした。そういう経緯を含めて考えれば、民主健闘なんて到底言えませんよ。全然ダメって言える部類。
ちなみに2003年・04年・05年のシェア平均をとると、自・公が46.4%で、民・社46.3%。ということは民・社は平均通りの結果であり、自・公は平均よりもだいぶいい成績だったってわけ。これをとってみても柳沢発言叩きが如何に意味なかったかがよくわかる。平均値をベースに考えれば、自・公は全然票を減らしてないわけですから。

柳沢発言で痛かったのは共産党

むしろこっちの方が現実。柳沢発言があまりにもクローズアップされたために、2強対決の構図になって、共産党が埋没した。自・公より、よっぽど共産党の方が痛かったと言えるのではないかと。7%程度だったシェアが一気に落ち込んでいるのはその証拠。民・社にとって柳沢発言は、自・公の票ではなく、共産党の票を奪ったことになりますな。野党の食い合い。何とも皮肉なもんです。

  • 表面上は接戦も、実際は自公に実のある勝利
  • 柳沢発言攻撃はほとんど効果なし
  • とばっちりは共産党

これが今回の分析結果。民主党は早めに国会に戻ったほうが良さそうだ。愛知県民は実に健全なり。
(追記)2007/02/06 5:15
いくつか反論が寄せられたので、それにお答えしますかね。反駁スタート。

Q.現職有利な知事選で苦戦したということは、柳沢発言の影響はあるのでは?

A.ありません。少なくても、それを証明するデータがないです。

一般的には確かに現職が有利ですが、現職の神田氏はそもそも与野党相乗りで誕生した知事。与野党相乗りが崩れるってことは、神田知事誕生の前提が崩れたってこと。こういう状況では、一概に現職有利とは言えまへん。
ましてや場所は愛知県。民主党を敵に回したデメリットの大きさを考慮に入れると、現職ファクターを強調する意味はない気がしますな。苦戦の理由は柳沢発言ではなく、与野党相乗りという前2回の「勝利の方程式」が崩れたことに求めるべきでしょう。

Q.事前調査では神田氏が圧倒的優位だった。これが接戦になった以上、柳沢発言が影響したのでは?

A.してません。少なくても、影響していたことを示すデータがないです。

そもそも事前調査は参考程度にしかならんのですよ。何故なら事前調査と実際の結果が全く同じになることはないから。過去の様々な選挙を見ても、事前調査と実際の結果が一致することは稀ですよ。違って当たり前。
そうなる理由は、人間が情報をもとに考える生き物だからです。「楽勝っぽい」となれば、その楽勝側は「楽勝なら、オレひとりくらい投票行かなくてもいいよね」となる。一方、負けてる側は「こら必死に応援せねば」となる。いわゆる「アナウンス効果」が発生するんですよ。
そんなわけで、事前調査と実際の結果が違うからといって、それが柳沢発言が理由とは限りまへん。そういうデータがあればともかく、データもなしに苦戦の理由を柳沢発言に求めるのはちと強引かなと。

Q.柳沢発言が影響してないと言っているのはタケルンバだけでは?

A.かもしれません。みんな苦戦したのを柳沢発言に押し付けてます。

でも「柳沢発言のせいで苦戦した」ということを示すデータを誰も出してないんだよね。少なくてもオレは2つも出してるのにさ。「柳沢発言は関係ねえぜ!」ってデータを。
ハッキリ言って今のところマスコミで出ている分析は憶測にしか過ぎません。何故なら裏付けデータが何もないから。「現職なのに苦戦した」「事前調査で楽勝ムードだったのに苦戦した」は「苦戦したのは柳沢発言のせい」って理由にはならんのよ。何故なら、現職でも負ける人はいるし、事前調査と実際の結果がひっくり返ることは往々にしてよくあるから。これは根拠になりませんよ。
なわけで、舛添要一とかが柳沢辞任を言い出したのは片腹痛くて仕方なし。もうちっと結果を分析してから言えばいいのになあ。オレができるくらいなんだから、自民党ならもっといいデータがあるだろうに。マスコミで言われていることと現実は違いますぞ。