(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

選挙向け騙し強化キャンペーン

いやあ、実に鋭いこと書いてるなあ、オレ。自画自賛1月26日付でこんなこと書いてたんですよ。

 内閣がスキャンダルまみれになっては、国民に負担を求めることなんて到底できないし、避けようとするはず。「ホワイトカラー・エグゼンプション」も回避するでしょ。他もまた同様。むしろ国民に媚びようと、税制優遇策を検討する可能性アリ。ま、ここに手を出したら末期もいいとこだけど。

そんでもって、このニュース。

サラリーマンに対する媚び発動ですよ、奥さん。税制優遇じゃないものの、残業代対策でイメージ回復ですよ、奥さん。
しかもこれ、かなり巧妙。どこが巧妙か、わっかるかな?

実はほとんどの会社員には意味なし

 従業員300人未満の中小企業については、負担増をさけるため、割増率を3年間据え置き、その後、引き上げるかどうかを検討する。

はい、まずここですよ。2つの数字に注目しましょうね。「従業員300人未満」と「3年間据え置き」です。
まず「従業員300人未満」ですけど、実は大多数の人がここに該当するんですよ。こんな資料があります。

この資料を使い、従業員の規模ごとに有業者を数えるとこうなります。

  • 1〜299人  38,811,800
  • 300人以上  14,317,300
  • 官公庁      5,505,200
  • その他法人団体  5,734,300

……わかります? 実に半分以上は中小企業に勤める人なんですよ。ということは、ほとんどの人の残業代には影響しねえってわけね。「残業代割増率50%に引き上げ」ってあるから、自分にとっておいしい話みたいだけど、実は全然関係なし。残業代が増えるのは少数派なのよ。数字は実に正直ね。

次の衆院選が終わるまでは据え置き

次に「3年間据え置き」です。今年は2007年。ということは、3年据え置くということは、2010年までは現行のままってことですな。
はい、ここでこの3年間に何があるか考えて見ましょう。例えば、衆院選は前回2005年にありましたね。郵政解散のヤツです。衆議院の任期は4年。これ、社会で習いました。さて、2005年の4年後はいつですか? 2009年ですね。ということは「次の選挙が終わるまでは争点にしねえぜ」ということなわけですよ。衆院議員は逃げ切り完了。
しかし問題がひとつあります。3年後には今年同様に参院選があります。ここで次の部分が生きてきます。

 その後、引き上げるかどうかを検討する。

迫る参院選。「やばそうだ」となりゃ上げるし、「勝てそうだ」となりゃ据え置きキープ。そういう検討をするってことですよ。いやあ、大人って汚いですね。でもそういうことを言ってるわけですよ、言外に。

  • 残業代割増率は50%に引き上げるけど、ほとんどの人は上がらないし、3年後に上がるとは限らない

これが真相です。

「努力する」は「しなくてもいい」

これも凄いですよね。

 改正案では、残業時間に応じて割増率を3段階に分け、〈1〉残業時間が月45時間までならば割増率は25%とする〈2〉45〜80時間ならば25%以上とするよう努力する〈3〉月80時間を超えたら50%とする

はい、ここで2番目に注目しましょうね。

 45〜80時間ならば25%以上とするよう努力する

ここでお役所言葉の登場ですよ、奥さん。「努力する」ってありますけど、これは「しなくてもいいよ」と読みます。努力すればいいんです。努力した結果できませんでしたでいいんです。
と、と、ということは、どっちみち月80時間までの残業代は上がらないってわけです。月80時間。大体1ヶ月の労働日数は22日か23日なので、それで計算すると、1日あたり3.5時間。5時退社なら8時半上がり、6時退社なら9時半上がりまでは、結局今までと変わらんわけね。恐らく大多数の人は月80時間の枠におさまるわけで、結局意味なし。

ホワイトカラー・エクゼンプションを導入すりゃ、そもそも残業代の意味がない

とどめはこれね。この話は残業代についてのこと。でも、残業代が出ない身分になっちゃ、そもそもこの話の意味がないわけね。で、「ホワイトカラー・エクゼンプション」というのは、ホワイトカラー(事務職)をエクゼンプション(適用除外)する制度。残業代の適用から外しましょうって制度。だから、これが導入すれば、割増率がどうだという以前に、残業代がまったく貰えなく人が出現するわけ。蛇口を良くしても、元栓を締めれば意味がないって話なわけですよ。
つまりこれは典型的なイメージ戦略ありきの目くらまし。「残業代割増」という言葉でいいイメージを持ったはいいが、実は意味がないという本質がない政策。こういうのに騙されちゃダメよ。今国会ではホワイトカラー・エクゼンプションは法案化しないようだけど、参院選が終わったら手のひら返しされるに決まってるからね。秋の臨時国会か、来年の通常国会で普通に法案出されるよ。自民党ってそういう党だし。
あ、そうそう。蛇足かもしれないけど、この政策の所管官庁はどこか知ってます? 答えは厚生労働省。大臣は誰かわかる? 答えは柳沢さん家の伯夫くん。もうわかるよね。こういうカラクリ。単なるイメージアップ戦略。ああ、実に浅いぜ。