(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

無知の知

偉そうなことをよく書いてますが、所詮タケルンバも若僧なのですよ。ところが、何故か管理職をやることが多く、若手仕切り業が長いので、見た目はともかく、心持ちは近いのであります。ええ、オレは永遠の若手なんですよ。年は10年以上とってないのですよ。何せ14歳のときに「オマエ42歳だろ」と言われていたくらいで。ええ、年齢は3倍どりなのですよ。オレなりのドッグイヤーなんですよ。先取りで加齢していた分、最近は現状維持祭りなのです。
しかし最初の頃はよくぶつかっていたわけで。ま、今を思えば単純にオレの能力不足が原因なんだけども、本当に能力が足りないと、能力が足りてないことがわからんのですよ。「無知の知」とはよく言ったもんで。わかんねえクセに、あれやこれやを押し付ける。それが対立を生む。こういう単純なことがよくわからんのですな。
ところがある程度の経験を積み、そこそこの障害にぶつかってると、ある日突然悟りを開くというか。ある種の境地に達するのです。で、オレが至った境地はこれ。

押し付けてもしょうがねえ

結局指示する相手は他人なので、オレの意見を押し付けてもしょうがねえと。「それは無理」と気付いた。あるいはポジティブに諦めたら意外とうまくいくようになったんですよ。
それまでは何から何まで指示していたんですよ。あれはこうして、次にああしてと。でもそれはオレのやり方なんだと。で、ある結果を出すためには、他の方法もあるだろうと。「2」という答えを出すには「1+1」じゃなくてもいい。「3−1」でもいいし、「4÷2」でもいい。その人なりのやり方があるんだから、そこはほっといていいんじゃないか。「最低限これはクリアしてくれ」というラインは譲れないけども、それを出すまでの過程は任してもいいのでは。そう考えるようになったんですな。
で、そうなると万事うまくいくようになったんですよ。任しているから、任されたほうは責任感もってやるようになるし、どうやればいいかを考えるから、どんどんスキルアップするようになる。それまではオレから一方的に指示していたけども、向こうから聞いてくるようになってコミュニケーションも良くなった。またオレの方も、何から何までチェックしなくてすむようになったので、単純に仕事が楽になり、もっと全般的な管理をできるようになった。いいことづくめ。
そして最大のメリットは、オレの予想以上の結果が出るようになったこと。結局全てオレが指示すると、オレのレベル以上の結果は出ないんですよ。それどころか、オレが誰かにオレ方式でやらせると、オレがやったより劣る結果が出る。オレの意図が100%伝わるわけじゃねえですからね。
ところが任せると、任せた相手にオレ以上の能力があれば、オレがやるより遥かに良い結果が出る。予想を上回ることもあるし、予想もできなかった仕上がりになることもある。「オレが求めるもの」という上限がなくなるので、限界突破できるのですな。「ああ、みんなの能力を縛っていたのはオレだったんだなあ」と気付かされる瞬間でもあります。
但し、予想以下の結果が出るリスクはある。任せたヤツが残念なら、当然に仕上がりも残念になる。これもまた真実。ただそこのコントロールこそが管理する側の仕事になるんじゃなかろうかと。「あれやれ、これやれ」と「オレが求めるもの」という上限ラインに向けて動かすのじゃなくて、「好きにやってみな」「でも、最低限これはやれよ」と下限ラインで待ち構え、そこに下がってきたら追っ払う。そういう門番の役目こそ管理業務じゃありませんかね。10年経ってそう考えられるようになりまして、ええ。
ところが問題なのは、こういう考え方と古い価値観のオッサンとは相容れんのです。別にオレは年上と相性が悪いなんてことはなくて、10歳上とか20歳上の人と普通に友達付き合いができるし、旅行に行ったりもするのですが、価値観が古いオッサンとはどうにもならんのですよ。彼奴らは「そういう考え方はダメだ」「そういう考え方をするお前もダメだ」という論理で参りますので。決め付けんなよ。
ただ論理学的に言うと、オレみたいな考え方がダメだとは言えないわけですよ。それでうまくいってる現実がある限り。ということは、話の前提が間違っとるので、オレもダメとは言えないんですがね。どうもそこをご理解いただけないようでして。
で、そういう古い価値観のオッサンが上に来ると、オッサンより有能な若手は辞めて行きます。オッサンより上の仕事させてもらえんからね。その結果、オッサンより残念な能力の人だけが残り、オッサンはそのうち定年になり、指示をされる相手がいなくなって、全般的に煮える感じになり、香ばしくなっていくと。こんな流れかと存じます。
自分を残念と思えると、何もかも楽になっていいんですけどね。繰り返しですが、「無知の知」って大事ですよ。