(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

ディベート資料の集め方

ディベートを教えるときによく聞かれるのが資料の集め方。オレみたいな10年選手は、何の気なしにパッパカパッパカ集めてしまっているし、何事もなくやっているのだけれど、慣れてない人にとっては、この手順とか段取りが謎のように見えてしょうがないらしい。別に大したことしてないんだけどね。特別な力持ってるわけじゃないし、誰でもできる手順なんだけども。
つい最近も聞かれたばかりなので、ここで詳しく回答しときますか。意外と単純で普通なのよ、S。こういうものに複雑な種明かしなどないのだよ。今回は今話題の「ガソリン税暫定税率」を例にしてみますか。このテーマでディベートをすることになった場合、タケルンバはどうするかということで書いてみたいと。

基礎1 言葉を学ぶ

何事も基礎が大事なんですよ。基礎があるから、上に色々積み上げることができる。意外と地味なところが大事なんです。ここをおろそかにすると、結局は何も身につかない。
まずはこのあたりの資料で基礎を

まずは単純に辞書・事典とかにあたるのが王道。ここでテーマそのものを調べる。今回であれば「ガソリン税」とか「暫定税率」とかね。ズバリの単語を調べるのがファーストステップ。「ガソリン税って何?」「暫定税率ってどういうこと?」とか。この問題の良し悪しを考える前に、それがどういうものかを理解しねえとどうにもなりませんからな。こういうところからきちんと疑問を潰しておく。
そのための資料としては「広辞苑」「現代用語の基礎知識」はベタ中のベタ。大体どこの図書館でもあるし、これを常備している家庭も珍しくねえでしょ。電子辞書とかにも入っているし。
もし無ければWikipediaでもいいです。調べる単語によっては編集合戦によって荒れているけど、基礎を調べるだけならこんな手軽なものはない。家でできるしさ。それにネットだからこその利点がある。
それは「わからない言葉をたどりやすい」というリンク機能。結局「基礎を身につける」が主眼なのです。調べた結果、自分が知らない他の言葉が出た場合、それを放っておいちゃ意味がない。わからないことがないように、そうした言葉も調べるべきなんですよ。「ガソリン税」の項にはこういう記述があります(2月19日15時現在)。

ガソリン税(がそりんぜい)とは、正式には「揮発油税及び地方道路税」をいう。

ガソリン税 - Wikipedia

この場合「揮発油税」「地方道路税」という言葉を知らないのなら、これも調べる。この場合、辞書・事典だと、他のページをめくる面倒くささがあったりするわけですが(参照ページが載っていたりはするけども)、Wikipediaの場合はリンクがはってあるので、クリックひとつで調べることができる。この手軽さにはかなわんわけですよ。類似とか周辺の知識をまとめて集めやすい。「知識のわらしべ長者」と言いますかねえ。「職人ありがとう」でございますよ。

基礎2 論点を学ぶ

最低限の言葉を理解したら次に進みましょう。具体的にどういう意見があり、どういう論争があるかを簡単に調べてみます。その資料としてはこれがポピュラー。

これのいいところはひとつの論点に対し、賛成・反対両側の意見が載っていること。お互いの長所・短所がわかりやすく、ポイントを把握しやすい。また論点の最後にある「データファイル」も参考になる。ここで紹介されている参考文献、新聞・雑誌などを合わせ読めば、最低限の知識としては十分。高校・大学なんかだと「来週ディベート、準備1週間」みたいなパターンが多いわけですが、そのくらいのレベルであれば、ここまでの手順でもある程度はできます。
注意は最新のものに必ずしも該当の論点が載っているとは限らないこと。古い年のものに載っている場合あり。目次・索引などで調べると吉。

雑誌資料を集める1 検索しよう

ここまで終えると、何となくわかった気になります。知識を身につける準備段階としてはOK。あとはより具体的な資料を集めにはいるわけで、タケルンバとしてはまず雑誌資料を探すわけですが(雑誌が先である理由は後述)、ここでいきなり図書館に行ってはダメ。何故なら図書館は資料を集める場所であって、資料を調べる場所じゃないから。資料を検索する場所としては図書館は不向きなんですよ。Excelで表とかをつくるわけにいかんし。手順としてはこういう感じがいい。

  • 検索する
  • リストをつくる
  • 図書館に行く
  • コピーを入手する

リストをつくるところまでは自宅・会社・マンガ喫茶などでやり、そのリストをもって図書館へ。こうするだけで能率は全然違う。
その際はこちらのサイトが便利。

これの「雑誌記事索引の検索」を使います。何せ国会図書館なので、ない資料はない。町の図書館だと「うちにはおいてないっす」があるわけですが、それがないので確実なわけですよ。日本国内においては最強。これを元にリストをつくれば、少なくても日本の雑誌は全て網羅した形になるので。
またこの「抜けがない」というのが大事なところ。上のボックスで検索範囲を年指定できますが、これで「2005年〜」で検索すれば、2005年以降の雑誌資料は全て出てくる。出た資料を全部読めば、こと日本の雑誌記事に関しては「知らないことはない」になるわけで、相手に予想外のことを言われるリスクがない。これが決定的。知らないことを言われたら、対抗する術がないですからな。またこういうところが自信にもなる。堂々と「2005年以降の日本の雑誌は全て目を通しました」って言えるわけで。意外とこういうところで説得力が決まったりしますからね。社会人のプレゼンとかだと露骨にあるでしょ。「こいつ、調べてねえな」みたいな自信なさそうなヤツ。そういうヤツにならんですむわけですよ。準備によって自信が決まることも多いのですな。
あとはこれを使い、該当しそうな言葉をガンガン「論題名」に打ち込んで検索してみてください。この場合は「ガソリン税」「暫定税率」「道路特定財源」「揮発油税」「地方道路税」あたり。これまでに出てきたよく聞く言葉で検索してみる。ここで基礎が生きてくる。言葉を知らなければ検索できないわけですよ。どういう言葉が関連があるかわからんとどうにもならん。基礎の有無が能率を決めるわけですな。
年指定は古くからはやらんでいいです。雑誌の場合、あんまり古い資料は意味がないことが多い。データ自体が古かったりするんで。2001年以降で十分だし、あんまり時間がないときは2005年以降でもいいくらい。テーマ自体が古い場合はかなりさかのぼらないとどうにもならんけど、旬なテーマなら最近のだけでええですよ。

雑誌資料を集める2 リストをつくろう

検索した結果はリストにまとめます。検索しただけじゃ意味がない。検索した結果をリストにまとめてこそ意味がある。タケルンバはこんなリストをつくってます。

最低限必要な情報はこの4つ。

この4つの情報があれば、どこの図書館に行っても困らない。タケルンバはそれに加え、入手した場合チェックマークを書く欄と、どこの図書館にあるのかという欄をつくってます。「国→国会 都→都立 区→区立」という分け方。できれば近場で済ませたいのと、コピー代の問題がありまして。国会図書館はなるべく行きたくないのよ。コピー代が高いから。ま、これも後述します。
あとは好みで各自付け足されたし。何で検索して引っかかったのかっていう「検索単語」とか、「記事見出し」とか、「著者」とか。それぞれの必要性に応じてどうぞ。オレも最初のうちはこういう項目があったんだけどね。やっている過程で面倒くさくなり、こういう形になりました。各々やりやすいように。
リストの順番は新しい順。その理由は、この国会図書館の検索だと、新しい順に表示されるから。いちいち順番をいじるのは面倒なので、どんどん下に足していく。同じ雑誌の資料が出てきた場合は並べたほうがいいけどね。ま、それくらい。アイウエオ順とかに行列を並べ替えても、どうせ漢字の雑誌名で微妙なことになるんでね。気にしないようにしてます。
あとついでに、これまでに読んだものの中で参考文献に上がっていたもの。これも付け加えておいてください。どうせ図書館に行くなら、こういうの入手しておくと吉。手間は少ないほうがいいんでね。「ガキの使い」にならんようにしませう。

雑誌資料を集める3 図書館に行こう

リストが出来たら図書館へ。優先順位は「市町村区→都道府県→国会」の順。要は行きやすい順。学生の場合は学校が先でも可。特に大学なら市町村より充実しとる可能性が高い。また準備段階でオレがしているように、どこの図書館にあるか分類しておくと楽。市町村や都道府県の図書館でもWebで検索できるところは増えてますからね。できるならやっとけ。
あとは図書館でモリモリ該当資料を見つけ出し、マシンのようにひたすらコピー。この時点では資料の良し悪しは判断せず、金を惜しまずコピーしておく。ひたすらリストにある資料を集めることに集中。それ以外を考えると能率が下がるのでねえ。もちろん「なんじゃこりゃ」「使えねえ」みたいなこともあるんだけども、それを図書館でやるとキリがない。「試験勉強中に読み出した卒業アルバム」みたいなことになることあり。「引っ越し梱包中の卒業文集」みたいな。あれ、読み出すと夢中になるよね。
あと、なるべく国会図書館でコピーするのは避けたい。1枚25円もとられる。

それ以外の図書館は大体1枚10円なので、なるべくは国会図書館以外を利用推奨。国会図書館にしかおいてないものだけにとどめたいですな。大量にコピーするとかなり違ってくるんで。1000円で100枚か40枚かってな差ですから。
あとコピーするときに忘れちゃならんのが、それがどの資料なのかがわかるようにすること。大抵の雑誌だと、はじっこに雑誌名とか巻号が書いてあるんだけども、稀に何も書いてないものがあります。その場合、どこかにメモ書きしておかないと、これが何の雑誌で、何号なのかがわからなくなってしまう。ここは注意。

資料を読む

コピーを集めたら、あとはひたすら読む。読んで読んで読みまくる。いくら資料を集めても、読まないと頭の中には入りませんからねえ。
で、読む際は気になるところ、使えそうな図表、参考文献のところに付箋を貼っておく。処理は後回し。とりあえず付箋を貼って、まずは読む。読みながら、処理しながらだと、読むスピードが落ちる。「使えそうだな」とか「気になる」とかくらいのゆるい基準で付箋。細かく読むのは後回し。「これ意味がわかんねえ」も付箋。わからないものを無理に理解しようとしても無駄。他の資料を読んたあとに読めばわかることもあるので、それに期待して付箋しておく。
あとペンで線を引くのは薦めません。読みづらくなるので、後で萎える。作業効率も悪いし。付箋貼るだけなら電車の中とかでもできるけど、線引くのは難しい。どうせ線がグニグニになって、読みづらくなるだけだしね。まずは手持ち資料を一通り読み終えることを優先しませう。

付箋を処理する

一通り読み終えたら付箋ポイントを処理。ここではじめて細かく読んでいく。初見では「気になる・気にならない」くらいのいい加減さで読んでいいけども、ここからは「使える・使えない」くらいの視点で。役立ちそうにないものは付箋を外して除外。役立ちそうなら具体的な処理。
タケルンバの場合は、使える記述とかはカードにまとめる。「京大式カード」みたいなああいうヤツ。あれにまとめる。面倒くさくても、ここはなるべく手書き。コピー切り貼りでもいい気がするんだけど、頭への入り方が違う。手で書くと、やはり記憶の残り方が一味違うのよ。
図表・グラフなどはコピーし、やっぱりカードに。
参考文献はリストに加える。雑誌は大方手に入っているので、メインは書籍・新聞。書籍が後回しというのは、実はこの作業を経た後の方がいいから。参考としてよく上がってきたヤツを狙い撃ちで読んだほうが効率がいい。書籍は当たり外れが大きいのでね。またある程度の知識がないと、読んでもわからないという理由もあります。順序として、専門性が高いものは後回しにした方がいい。無難なものからじわじわと攻めたほうがよろしいかと。

リストを作り直す

手持ちの資料を読み終え、処理も終えたら、リストを見直します。ここでの見直しポイントがこの4つ。

  • 入手漏れはないか
  • 新たに検索すべき言葉はないか
  • 参考文献を加えたか
  • 引用元の資料であるか

漏れがあれば、漏れをなくす。気になる用語が出てきたら、それで検索する。読んだ資料に参考文献で挙げられていたものを加える。これに加えて大事なのが引用元にあたるということ。よく「○○によると」ってあるじゃないですか。その場合、その○○を読むべきなんですよね。特に新聞の場合、雑誌・書籍で「どこそこ新聞のウン月ウン日の記事」みたいな感じで引用されている。そういう場合は、その記事自体を確認すべき。引用後だと、どういうニュアンスの記事がわからんのでね。オリジナルを確認する。
このオリジナルの確認というのは結構重要でして。「伝言ゲーム」みたいなやりとりの結果、オリジナルと結論が違うことがある。ここでサボると痛い目にあうこともある。手を抜かず、オリジナルをリストアップし、直接確認することが重要。「え? オレそんなこと言ってないよ」はリアル生活でもよくあることなんでね。注意すれ。

ピンポイントで手に入れる

ここまでやれば、テーマに関わる大体の資料は集まっているはず。あとはそれを補完する資料というわけで、テーマに関わる言葉で検索しても出てきません。この先はピンポイント。ガソリン税道路建設の関連を調べるなら「道路」で調べたほうが手っ取り早いですしね。あるいは「公共事業」とか。そういう具体的な領域になってきます。この先は工夫が必要。
けれども、ここまでできれば一般生活なら十分。ディベートの資料集めとしても十分だし、大学生の卒論レベルでも大丈夫なことでしょう。ま、論文だとその資料をどう自らの研究やら主張やらにつなげるかが大事なんですけどね。
以上、国会図書館好きのタケルンバがお送りしました。これでわかったか。 >S
(追記)2008/02/20 22:45
意外と好評だったので、ついでにオススメの雑誌をひとつあげておきます。

要は新聞切り抜き雑誌。新聞の論旨の流れがよくわかる。意外と便利なのに、知名度が低い、隠れた実力者。そんなに分厚い雑誌でもないので、忙しい人が通勤ついでに読むのに丁度いい。1ヶ月の話題を総まくりできる。買わなくても、ある程度の図書館なら大体置いてありますしね。月に1回、図書館で読んでもよろしいかと。就職活動をしている学生にもオススメ。
また、新聞記事検索が面倒とか、縮刷版は小さくて見づらいという向きにも便利。新聞記事検索は件数がヒットし過ぎると煩雑になるので、このくらいサラッと、それこそ雑誌名通りダイジェスト的に扱ってくれたほうがわかりやすかったりする。また縮刷版のデメリットとして、コピーすると文字が潰れるときがある。拡大コピーにも限界があるのでね。その点、こちらは文字サイズが大きいので、読みやすいというメリットもあります。
月刊誌なので、1年さかのぼっても12冊。そんなに厚くない雑誌なので、全体をパラ読みしても、そんな時間はかからんです。索引もあるしね。マイナーだが役立つので、覚えておくと吉。