(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

お笑いの非対称性

ま、嫌悪感を抱く人がいるってのはわかるんですけどね。ダウンタウン浜田のツッコミ。

日本のお笑い界には、誰かがボケると頭をたたいたり、胸のあたりをぽんとはたく“つっこみ”というものが存在するが、これは海外にはない日本独特の習慣である。

http://news.ameba.jp/special/2008/03/11882.html

いやいやいや。日本の習慣じゃないって。お笑い界のごくごく一部の芸であって、お笑い界の習慣ですらないからね。ましてあそこまでハードに大胆に叩いている人は珍しいし。「日本独特の習慣」と言われると困るなあ。
それに浜田があそこまでツッコミを入れるようになったのは、昔、あそこまでのツッコミをする人がいなかったからなのよね。誰もしてなかったから浜田がした。だから面白かった。
「お笑い」って非対称性があるのですよ。誰もがやることって面白くなくなる。誰もがやらないことが面白い。「笑う」という感情は意外性の裏返しで起きるもんなんで、「やらない」という常識を裏切ることで「笑い」が生まれる。「叩くことは良くない」という共通認識があるから、ツッコミは面白いわけだよね。しちゃいけないことをしてる。それが面白いと。

ダウンタウンが歌番組『HEY!HEY! MUSIC CHAMP』の司会を進行するようになってからは、この“つっこみ”は、芸人にだけでなく、ミュージシャンに対しても行われるようになった。

http://news.ameba.jp/special/2008/03/11882.html

そして浜田の功績はここ。お笑い界でのみ許されていたツッコミを、お笑い界以外に広げたこと。音楽界の人間や、時には素人までぶっ叩いた。これが面白かったわけだよね。非常識な行為で、タブーだったから。あれはやっちゃいけないことなんですよ。当時の常識でいっても、現在の常識としても。でもそれをやった。平然とやった。そこに浜田のツッコミの価値がある。常識を崩した。だから面白い。
ところが、これが常識的になってくるとつまらない。

彼(キム・ヒョンジュン)は「司会の浜田から頭につっこみを入れてもらうと、芸能界での仕事運が上がる」と聞きつけ、自ら「頭を叩いてほしい」と頼んで、実際に“つっこみ”を入れてもらったことがある。

http://news.ameba.jp/special/2008/03/11882.html

こうなってくるとツッコミは面白くもなんともない。単なる儀式。お笑いの手段ではない。意外でも常識外れでもタブーでもない。
ただ、これは浜田に対するパイオニアとしての果実ではあるんだよね。お笑い界以外にツッコミを入れる笑いを切り開いた。それに対する見返り。猪木のビンタみたいなもんですよ。発明権というか、対価。
問題は、これをただマネをする人。浜田のツッコミを形だけ真似て、お笑い界以外にツッコミを入れる。これはもはや面白くないし、芸でもなんでもない。浜田のつくった道を通っているだけ。しかもその道はもはや一般道。誰もが通れる道なので、そこを通ってもメリットがない。過去に見たことがある光景なので珍しくないし、予想できるし、意外でもないのに暴力をふるっているという悪いイメージが時々残る。
大体お笑いなんて、みんなと同じことやって面白いわけないんですよ。常識的なことが面白いわけない。非常識だから面白い。なわけで、本当は人がやらないところ、やらないところ。うすいところ、うすいところ。やりたがらないこと、やりたがらないことを抑えた方がいい。そうやって常識を崩すことで、先人たちは名声を手に入れたわけだから。
キャラ芸とかあるあるネタが不安なのはこういうところなんだよね。みんなやってることだから。珍しくないことだから、飽きられるのも早い。どんな分野でも既に流行っているものに手を出すのは間違いなんだよね。流行っているものは既に下り坂を迎えている可能性が高いので。
このあたり芸人もちょっと冷静に考えたほうがいいと思うんだけどね。ま、こういう頭があったら、とっくに売れてるか。