(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

団塊世代がいいとは思えないこれだけの理由

「76世代」であり、ズバリ1976年生まれ。ロストジェネレーション直撃のオレが来ましたよ。

いやいやいや。これは被害妄想だって。「隣の芝生は青い」であり「ないモノねだり」じゃありませんか?

ただ、必ずしもこの世代が不利で、今の世代が有利とは言えんのよ。だって世の中はもっと複雑でしょ。確かに今の方が就職事情はいいかもわからんけども、トータルで見ていいかどうかわからん。

幸せのツマミ食い - (旧姓)タケルンバ卿日記

こういうことじゃありませんかねえ。良いこともあれば、悪いこともある。トータルで考えればどっちがいいかはわからん。これはなんとなく人の方がよく見える。「隣の芝は青い」であり「ないモノねだり」であり、「人が食ってるものは、うまそうに見える」じゃありませんかね。上の世代にすりゃ「お前らの方がうらやましいよ」かもしれんし。お互いに「おっ、うまそうなもの食ってんな」と思っているだけじゃないの?
それにこの団塊世代がいいという理由も怪しいもんだぞ。

  • 仕事が多種多様でしかも豊富
  • 低学歴から高学歴まで学歴に関係なく幸せを勝ち取ることが出来た
  • 就職さえ出来れば終身雇用が約束された
  • 女が男を支えた
  • 高度成長期でもありあらゆる分野での国家支援があった
  • 転職しても職で困ることはなかった
  • 年金支払いがあてに出来た
  • 将来に明るい展望があった
  • 25年の住宅ローンを安心して組めた
  • 満額の退職金又は割り増しの早期退職金で死ぬまでの人生プランを立てられる
http://alfalfa.livedoor.biz/archives/51261054.html

ひとつずつ潰していこうか。

仕事が多種多様でしかも豊富

そんなことないっしょ。今の方が多種多様でしょ。昔が良かったなんて根拠はない。
総務省統計局のサイトに、国勢調査の時系列データがあります。

これで産業別の就業者数を見ていきましょうか。

「その2 産業別割合」を見ると、第1次産業・第2次産業・第3次産業の比率は次のように変化してます。

  • 第1次産業 32.7% → 10.9% → 5.0%
  • 第2次産業 29.1% → 33.6% → 29.5%
  • 第3次産業 38.2% → 55.4% → 64.3%

(左より1960年・1980年・2000年)

ひと目見りゃわかりますわね。第1次産業がメチャクチャ減って、第3次産業がメチャメチャ増えている。第1次産業の減少分が27.7%、第3次産業の増加分が26.1%。40年で第1次産業から第3次産業へ就業者が移った。これが実に明確。
そしてその中身はというと、「卸売・小売業、飲食店」が6.9%増。「サービス業」が15.4%増。第1次産業という「農業・林業・漁業」の3分野しかない限られた仕事から、モノを売ったり、食べ物を売ったり、あるいは各種サービスを提供したりする仕事に移行してきた様子がよくわかるデータになっておりますよ。これで「昔の方が仕事は多種多様」とは到底言えない。少なくても現在の方が選択肢が多いのは疑いようもない事実。
1960年当時には0%になっている「分類不能の産業」も、2000年には1.2%いますしね。これぞ昔にはなかった仕事が創造されていることの証明ですよ。今の方が仕事は多種多様で豊富です。また、それを団塊世代が切り開いたという側面もありますしね。仕事の種類が少ないし、仕事そのものも少ない。しかし人口数は多い。そこで新たな仕事をつくり、雇用を創造していった。そういうパイオニア的側面もある。それを今の世代は享受できる。団塊世代がナタ一本で切り開いたけものみちを通れるわけですからね。しかも今やメインルートになっているものもある。決して今が恵まれないとは言えねえです。

低学歴から高学歴まで学歴に関係なく幸せを勝ち取ることが出来た

そうですかね。昔の方が閉鎖的だと思いますよ。雇用も限定的で、よっぽど学歴に縛られてましたよ。六大学とか、関関同立というブランドは昔からあるわけですし。今、社長になっている人は高学歴の人ばかりですよね。で、こうした人は団塊世代なわけですよ。この世代が企業のトップクラスについている。その人たちが高学歴ばかりってことは、昔も十分学歴社会ってことですよ。
また低学歴の人が虐げられていた面もありましたしね。「女工哀歌」みたいな話は珍しくなかった。中卒で上京列車に乗って東京に出てくる。丁稚奉公のような状況で働き、給料はスズメの涙。田舎に帰ることは許されず、ただ耐えて働くのみの日々。まして今と違って労働法が整備されていない時代ですよ。ひどい扱いを受けていた人はごまんといる。今の方がよっぽどマシですよ。多少なりとも労働者の権利が守られている。
さらに言えば、今の方が低学歴でも一発逆転できますからね。昔と違って、今の方が商売できる余地、立身出世する余地がある。0円株式会社をつくれる時代ですよ。体一つでいくらでもできる時代。事業計画やアイディアひとつでお金をかき集めることもできますしね。それこそ、ちょっと前までは新銀行東京で5,000万円まで借りれたわけで。
昔の方が低学歴でも幸せというのは幻想ですよ。

就職さえ出来れば終身雇用が約束された

逆に言えば転職できなかったのです。転職という選択肢がない、それを許す時代背景がない。安い給料でも我慢して働くしかない。そういう限られた選択肢の社会だったのですよ。なにせ団塊世代。同じ年の人間はたくさんいるんで、他の会社に自分が入る隙間もないですしね。
「終身雇用が約束された」じゃなくて「終身雇用になるように働くしかなかった」が正解じゃないかと。

女が男を支えた

女は専業主婦であれってこと? 家庭に入れと。
でも単純な話、共働きの方が収入が増えるじゃないですか。その方が家計は楽じゃない? 女性も働くことができる。つまりそれだけ社会が豊かになり、選択肢の多い社会になったわけですよ。別に家庭に入ってもいいわけだし。男が主夫になってもいいわけだし。昔は否応もなく女性は家庭に入るしかなかったわけなんで。今の方が選択肢が多いだけ豊かでは? なんならオレは主夫になる気マンマンですが。

高度成長期でもありあらゆる分野での国家支援があった

そんなことはないでしょう。国家支援ということでは今の方がありますよ。失業対策にしても、子育て支援に関してもねえ。昔と比べたら話になりません。国だけじゃなくて、自治体の制度なんかもありますしね。
それこそ共働きに対する支援制度なんか昔はなかったですからね。保育所や託児所も少なかった。子を持つ女性が働きたくても働けなかった。それこそ昔は女性の片親というと水商売が定番だったわけで。それは子どもを寝かしつけてから働きに出れる数少ない職業という事情もありまして。昼間の仕事だと、実家の支援がないと難しかった。祖母に子をみてもらうとか。そういう環境がある人だけ、昼の仕事につけた面もあった。
それを考えても現在の方が恵まれてますよ。生活保護もあるしさ。

転職しても職で困ることはなかった

んなことない。そもそも転職が普通になったのって最近のことだよ。大体「デューダする」なんて言葉が流行ったのはそう昔のことじゃないからね。あるいは「とらばーゆ」とか。「とらばーゆ」なんてもうはるか昔の言葉のような気がするけど、創刊されたのって1980年。実は意外と最近ですよ。
ま、「とらばーゆ」は主に女性向けだけど、男も似たようなもの。そもそも求人情報誌とかもあんまりなかったし。もちろんインターネットなかったし。ファックスですら一般的でなかったし。まして団塊世代は同じ年の人間が多い世代。どこの会社にも自分と同じ世代のヤツがいる。どこにもいる。となると転職で入り込む余地なんかほとんどない。隙間が少ない。
それを思えば現在の方が恵まれてますよ。フリーペーパーあるし、ネットもあるし、ハローワークだってあるし。昔はハローワークといったら「職安」っていうイメージの悪いところだったわけで。今やハローワークで堂々と仕事探しできるんだから、随分世の中も変わったと思いますよ。昔の方が良いとは言えないぞ。

年金支払いがあてに出来た

結果的にあてにならなかったわけで。しかもそれを団塊世代を直撃しているわけでしてね。それこそ消えた年金記録もろもろで。
あてにして裏切られる方が、あらかじめあてにしないよりきつくない? 少なくても団塊の世代はこれまで払ってきた。払った分を期待するのが当然。あてにして当たり前。それが政府に裏切られようとしている。このショックは大きいぞ。
それに引き換え、今の世代はあてにならんことがわかっている。であるなら、それに依存しない生活をすりゃいいわけで、対策が打てる分マシ。年金分を貯金するとか、運用するとかすりゃいいんだから。年金払わないって選択肢もあるし。ギリギリになってパーになるより、早めにパーになることがわかっただけマシだよ。

将来に明るい展望があった

どれだけありましたかねえ。それこそ団塊世代全共闘とかの世代でして。日本赤軍とかのテロがあったり。また冷戦の時代でしたねえ。米ソが対立していた。国際的に明るいとは言えませんねえ。今よりはるかに軍事的脅威があった時代なんで。ベトナム戦争なんかもあったしさ。
国内的にもどうだか。公害なんかもひどかったし、そんな暮らし向きは良くなかった。オイルショックなんかがあって、トイレットペーパーを奪い合って買うような時代ですよ。今より良いとは思えんねえ。気の持ちようだと思いますよ。

25年の住宅ローンを安心して組めた

そもそも25年の長期ローンを組んでまで、何で家を買わねばならんのかと。なんで賃貸で我慢せんのか不思議でなりませぬ。
よく「家賃を払うなら、その家賃分を払うローンを組んだほうがいい。そうすれば同じ支払額で、資産が手に入る」って話を聞くんだけど、この論理には欠陥がある。それはローンを組めば金利を支払わなくてはいけないわけですよ。余計に金を払うことになる。
せっかくなのでExcelで計算してみますか。Excelのテンプレートに「ローン計画書」という優れものがあります。借り入れ金額・利率・返済年数を入力すると、月ごとの返済額や、トータルの利息額などがわかる仕組みです。
これを使ってやりましょう。借入額は3,000万円。25年ローン。年利3%で計算してみましょう。ボーナスは考慮に入れず、同じ金額を毎月払っていくことにします。デフォルトだと「ローン期間が返済表の設定より長くなりました。表を適切な長さに延長してください」みたいなメッセージが出ますので、右上の「ユーザー設定」を押し、支払回数の初期値を「720」にでもしてください。
するとこうなります。

  • 月返済額  142,263
  • 利息合計 12,679,018
  • 支払合計 42,679,018

ザッと1,200万円を利息で払うことになります。25年300ヶ月にわたって返済していくので、月あたり4万円を余計にとられることになる。……これ、もったいなくね?
発想をかえて、逆に考えてみません? 家賃10万円のところに住み、利息分の4万円を貯めていく。ローンを組むのと同じ月14万円。こうすると年に48万円貯まる。10年で480万円。25年で1,200万円。これを年3%で運用すればもっと増える。25年後には1,800万円になる。600万円増える。同じ月14万円でも、片や余計にお金を払い、片や余計にお金が増える。どっちがいいですかね。25年のローンを組むことがこれでも幸せかね。持ち家が必ずしも幸せになるとは限らんよ。
しかも持ち家の場合、これに上乗せで維持費とか固定資産税がかかる。屋根の修理、壁の修繕。地盤がどうだ、水まわりがどうだ。こういう出費がある。でも賃貸ならこれもない。設備の問題は全て大家の問題。固定資産税を払うのも大家。付随するコストが大きく違ってくるわけですよ。賃貸もなかなか得だと思いません? ローンなんてまったく必要ないですよ。

満額の退職金又は割り増しの早期退職金で死ぬまでの人生プランを立てられる

これだって実は既に危ういわけで。で、その危うさに直面しているのが団塊世代でありまして。年金同様、これをあてにして生きてきたのに、これがもらえない可能性が出てきている。こっちの不安の方がはるかに大きいと思うぞ。最初からあてにしてない世代に比べてさ。
現在の問題は実は若い世代に対してはあまり深刻じゃないのよ。何故ならまだ老いるまでに時間があるから。問題は団塊の世代。もう時間がない。待ったなしで引退する。しかし引退できる備えがない。備えがあったと思って生きてきたが、実はそれがなかった。ヤバイ、どうしよう。これが現実。打つ手が限られる分、団塊世代の方がよっぽどきついと思うよ。わしゃロストジェネレーション世代だけど、なんだかんだであと30年は働けるから。でも彼らはそういうわけにいかない。これでも団塊世代の方が幸せって言えるかなあ。
一応こうやって10項目見たけども、オレ個人としては何ひとつ団塊世代がうらやましくありません。「76世代」で結構。「ロスジェネ世代」で結構。先があてにならない。未来は自分で何とかしなくてはならない。依存はダメだということがわかっただけでも、この時代に生きている意味があったと感じております。
オレたちの世代はそんな悪くないよ。そしてオレ以降の世代だって悪くないよ。世の中はまだまだ良くなっていきますよ。また良くできますよ。すべては心の持ち様。絶望しないことが肝要かと。自分が思うほど、人が食ってるものはうまくないぞ。意外と自分が食ってるものが一番うまいんだよ。何故なら、自分がうまいと思って注文したもんなんだから。
意外と現世代はいいかもよ。