(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

雑誌版メイド・フォー・ユー

昔のマクドナルドはつくり置きをしていたもんだ。見込みであらかじめつくっておく。ある程度の時間が過ぎたら捨てる。そういうやり方。
しかしこれだと無駄がある。何せ廃棄ロスが生じるわけで、このゴミになる分がもったいない。またつくり置きなので、その分、味も悪い。そこで今やっているシステムが「メイド・フォー・ユー」。昔と違い、注文を受けてからつくる。つくり置きしない。そのため廃棄ロスが少ない。注文の分だけつくるので、無駄がない。しかも出来たてなので味も良くなる。アツアツだ。
で、思ったのは、これを雑誌に転用できないかなあと。どうも現在の雑誌販売システムっていうのは効率が悪い。無駄が多すぎる気がする。

返本が多い

雑誌もかつてのマクドナルド同様、見込みで刷って、販売するわけですな。で、余った雑誌はどうなるかというと、出版社に返本される。出版社に戻り、一部はバックナンバーとして販売されるけど、大体は再生紙行きですわね。読まれることなくリサイクル行き。これ、もったいない。

品切れリスクがある

かと言って、刷らなきゃ刷らないで機会損失を被る。品切れになっちゃ売れませんからね。まして雑誌は書籍と違って、刷りなおす時間の余裕がない。見込みを間違ったらリカバーできない。需要が供給より少ないと、返本が多くなって損失が出るし、かといって需要が多すぎると、売れないことで機会損失が生じる。まことに悩ましい。

輸送コストがかかる

つくられた雑誌は本屋などに配送され売られるわけですが、この輸送コストがもったいない。人件費もかかるし、ガソリン代もかかる。時間もロスするし、この手間があるから締め切りが前にある。締め切りが前にあるから、話題の鮮度が意外に低い。生産と販売の距離が近づけば、輸送コストも減るし、時間のロスもなくなるのでは。

梱包の上下が痛む

輸送に関連して、雑誌ならではの問題なんですけど、梱包された際、雑誌の上下が大体傷むのよね。特にマンガ雑誌少年マンガ誌は表紙の紙がやわいので、梱包の上下が大体ロスになるんですよ。破れたりなんだりで。汚れるしさ。
ということは、輸送しなければ、梱包の必要がなければ、こういうロスもない。余計なお金がかからない。

雑誌版メイド・フォー・ユー

そこで雑誌版メイド・フォー・ユーの登場。どういうものかと言うと、要は雑誌印刷機ですよ。レーザープリンターの親分みたいなのをご想像いただきたい。こういう手順で使用する。

  1. 買いたい雑誌を選ぶ
  2. 号数を選ぶ
  3. 部数を入力
  4. 機械が印刷を開始する
  5. 印刷されたものが落下
  6. 機械が印刷された紙の束を二つ折りにする
  7. 隅っこを巨大ホッチキスでガチャッガチャッ
  8. 完成!

こんなヤツ。コンビニにあるようなタッチパネル式の端末と、レーザープリンターを組み合わせればできそう。セブンイレブンにあるようなコピー機なら、タッチパネルがデフォルトであるので、あれを使えばそのままいける。雑誌のデータはPDFファイルでやりとりすりゃいいし、高度な通信インフラは必要ない。全部A4用紙で打ち出せば、二つ折りも必要ないしな。意外と安くできない?
しかもメリットも多い。

返本ロスが発生しない

売れた分だけ印刷するので、返本が一切発生しない。売れた分即ち売上。非常にシンプル。わかりやすい。

機会損失が発生しない

しかも機会損失もない。欲しいものを欲しいときに欲しい分だけ手に入れられる。ジャスト・イン・タイム方式でもあるわけでして。

輸送コストがかからない

生産する場所と販売する場所が完全一致。輸送の手間が一切かからない。梱包にともなうロスも発生しない。

バックナンバーも販売できる

バックナンバーのデータさえあれば、いくらでも売れるし買える。紙で保存していれば劣化するけども、PDFのデータだから劣化しないので、古い雑誌を新品状態で手に入れることができる。

販売スペースをとらない

コンビニとかだと窓側が雑誌コーナーになっているわけですが、こういうスペースがいらない。平積みにガッツリ積む必要がない。
見本用に何ページが抜き出した見本版を置いて販売につなげる方法もあるね。「この先はご注文を!」みたいな。

立ち読みされない

本来売れるはずの読者を立ち読みで失っている面があるわけですよ。特にマンガは。1冊丸々はいらないけど、「こち亀」だけ読みたいなんて人は、結構立ち読みで済ますわけで。
そういう人も買わずにいられない。立ち読みされて雑誌が汚くなることもないしね。勝手に袋とじを破られたり。

部分売りもできる

先ほど書いたように、マンガだと一部だけ読みたいという需要があるわけですな。そういう人たち向けに部分売りもできる。「こち亀」だけとか。「HUNTER×HUNTER」だけとか。1冊丸々だと200円。どれか1つだと100円とかにすりゃ新たな需要は掘り起こせる。やや割高の値段にすれば、1冊丸々の購入者も減らないだろうしさ。

考えられるデメリット

一方、デメリットはこんな感じ。

雑誌がしょぼくなる

きちんとした工場でつくられてないので、その分、雑誌のクオリティは下がります。製本されてないしね。このシステムだと紙の束でしかないので。本というより束だわな。

写真・画像に弱い

工場の印刷機じゃないので、細かい印刷面も弱くなります。カラーグラビアとかに影響がありそう。

印刷コストが高い

あちこちに印刷スタンドを置くため、大量生産ができない。そのため、1枚あたりの印刷コストは高くなります。生産現場ごとの生産数はどうしても減りますのでね。

時間がかかる

印刷する時間がどうしてもかかるので、客を待たせます。印刷機待ちが発生。

中を見てから買えない

立ち読みできないので、中を見てから買えません。このあたりメリットがデメリットでもある。
こんなところでしょうか。
ただ雑誌のしょぼさは割り切ればいい。文字データとして欲しい人はそれでもいいだろうし、印刷コストの問題は、それ以外のコスト削減でお釣りがとれる気がする。時間に関しては多少はかかるけども、最近のコピー機の速さを考えれば、そんな大きな問題じゃない気がするし、中を見れない問題については、見本版とかで対応すればいいような気がする。
写真誌とかはともかく、モノクロページが多く、活字中心の雑誌であればこういうやりかたの方がメリットがありそうな気がする次第。ま、ここまで大掛かりにしなくても、そろそろ雑誌をPDFで配信して販売するくらいのアイディアはあってもいいような。「印刷はご家庭で」みたいにしてもいいわけだし、これだけ通信環境が発達しているのに、わざわざ手作業で輸送するバカバカしさを考えるとねえ。
またこういうやり方をすれば、交通が不便な地域でもタイムラグがない。雑誌が1週間遅れみたいなこともない。ダウンロードして印刷すりゃOK。船便とかで運ぶ必要ゼロ。
雑誌にはメイド・フォー・ユー的なシステムが合う気がするんですけどねえ。如何ざんしょ。