(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

「接近・展開・連続」は大西鐡之祐イズムです

岡田武史監督の「接近・展開・連続」ですが、あれ、どうも違和感あるわけで。

パクりじゃん

この一言に尽きるのですよ。ラグビー好きにはどうしても違和感がある。「おいおい、それをサッカーに持っていくなよ」と。ラグビーの麗しい思い出として残しておけよと。
ご存知の方も多いと思いますが、あえてご説明いたしますと、「接近・展開・連続」をラグビーに持ち込んだのは故大西鐡之祐氏。早稲田大学ラグビー部の監督。「前へ」の故北島忠治監督率いる重量級フォワードの明治大学や、日本よりも体格に勝る外国勢と戦うための戦術ですよ。そして今に至るまで早稲田大学ラグビー部に引き継がれるカラーでありますよ。「接近・展開・連続」でバックスが売りの早稲田。「前へ」でフォワードが売りの明治。こういうカラーがあるので、早明戦(明治関係者には「明早戦だ」と怒られる)はいつも面白い。
でもって、ラグビーもサッカーも起源を同じくするスポーツだし、海外勢とは体格差があるという事情も似ているので、この大西理論を持ち込むのもわからんでもないし、むしろそういう考え方をして自然かと思うんだけど、しかしそれにしても配慮がないなあと。なんというか、岡田監督のオリジナルみたいな扱いになってる気がしまして、ええ。「考えたのオレだよ、オレの戦術だよ」的な。
すくなくても大西鐡之祐を知らない世代はわかりようがないもんね。こういう背景を知らないから。1916年生まれの方だもんね。ご存命なら92歳。サッカーファンは比較的年齢層が若いので、知るわけねえ。
ただ、1916年に生まれた人が、既にこういう理論を実践していたことを知って欲しいのですよ。「接近・展開・連続」という言葉を使っていたことを知って欲しい。こういう戦術で世界と戦おうとしていたことを知って欲しい。強い相手と戦う際に、日本は何で勝負できるのか。こういう視点で勝ちに行った名指導者を忘れて欲しくないなあと。そう思うわけでありますよ。
しかも岡田監督は早稲田大学出身だしな。同学の偉大な指導者に対する敬意が欲しいなあと。もっと大西鐡之祐に対する言及があってしかるべきだし、マスコミもそれを取り上げて欲しい。まして「接近・展開・連続」を言っている以上は、バーレーン戦みたいな試合をしちゃ困る。ありゃ「接近・展開・連続」じゃねえもの。「キック&ラッシュ」だべ。フィジカルに勝るチームの戦術。とりあえず縦に放り込んで、力で解決みたいな。いくらアジアでは日本優位であっても、「接近・展開・連続」を売りにするチームの戦い方じゃないもんな、ありゃ。
そういう意味では、実はオシム時代の方が「接近・展開・連続」っぽかった。ショートパスをつないでつないで、走って走って、連続攻撃で相手を崩すというのは正しく「接近・展開・連続」。あるいは最近のアーセナルもそうだし、バルサはクライフ以来ずっとこのスタイルを志向している。圧倒的なフォワードを持たないチームの生きる道として世界で確立されたスタイルでもあるので、「接近・展開・連続」を名乗る以上はきちんとそれを実現して欲しいし、日本で「接近・展開・連続」を名乗る以上は大西鐡之祐にもうちょっと触れて欲しいと思う次第。
オシムの言う「エレガントなサッカー」って「接近・展開・連続」以外のなにものでもねえと思うんだけどね。