(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

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平日食べ歩き戦記 その2 - 金龍苑

ガンジーラーメンをあとにした我々3人は、京成本線を西に。目指すは新三河島駅。日暮里の隣にある小さな駅。ここに焼肉界の聖地とも呼ぶべき、名店がある。その名は「金龍苑」。


どうよ、このガード下の光景。右も左もなんもなし。ガード下唯一の店舗となってしまった感。

1軒だけぽつんとある。しかしこの店こそ知る人ぞ知る名店なのである。聖地なのである。
しかしこの聖地。一見にはなかなか敷居が高い。その最大の障害は、この店のオバちゃん。かなりのツンデレなのである。「焼肉界史上最高のツンデレ」の名を欲しいままにしているオバちゃんなのである。
大体、予約からしてこうだ。

  • タケルンバ●「すみません、予約をお願いしたいんですけど」
  • オバちゃん○「(ムッとした感じで)何人?」
  • タケルンバ●「3人なんですけど」
  • オバちゃん○「3人? あのね、1人でも欠けたら予約キャンセルになるよ!」
  • タケルンバ●「???」
  • オバちゃん○「うちは3人からしか予約とらないからね! 2人になったらダメだからね」
  • タケルンバ●「……それでいいです……」

また店内に入ってもローカルルールがある。

  • スープものは最初に頼まないとダメ
  • 肉の追加は1回まで
  • 火の調節禁止(オバちゃんが設定する弱火でジグジグ焼かなければならない)

……なかなか厳しい。
そして店の前に行ってもオバちゃんの洗礼。予約は18:30。着いたのが18:10。早めに入れないかなあとオバちゃんに話しかけてみる。

  • タケルンバ●「こんばんは。予約したものですけど、入れます?」
  • オバちゃん○「予約は何時?」
  • タケルンバ●「18:30です」
  • オバちゃん○「じゃあ18:30まで待って。準備してるんだから!(バタン)」
  • タケルンバ●「……」

難攻不落の強敵である。大抵の者はここで萎え、焼肉の聖地へ進むことができない。焼肉の聖地であるオバちゃんは最強の門番なのである。オバちゃんに堪えぬ者に、最高の肉との出会いはないのである。
しかし18:30になっても聖地の扉は開かれず。……なんか作業してる。……何が起きてるんだ?
そう思ってると突如オバちゃんが出現。こう言い放つ。

「あのね、トイレがつまって大変なの! もうちょっと待ってて」(バタン)

……はぁ、左様で。なんだか大変な日に来てしまった。とはいえ念願の金龍苑である。肉はすぐそこで我々を待っている。食べずに帰れるか! そして食べずに死ねるか!
そして18:45。やっと聖地の扉が開かれる。

「あのね、トイレは今日ダメだから! トイレのときは近くのパチンコ屋に行ってきて! それでいい?」

はい、いいです。とにかく食わせて下さい。とりあえずやっと聖地入場を許可され店内へ。テーブル席が2つ。お座敷に3席。合計5席の小さな店内。正直言ってキレイとは言えない。いや、汚い。ズバリ言えば汚い店内。本当にうまいのかを疑いたくなるビジュアル。

メニュー。煮しまり具合が凄い。何たる保護色。とりあえず塩ハラミ・カルビ・ロース・ミノを注文。ルールに従ってテグタンスープも頼む。そしてそこからは至福のときが待っていた。

塩ハラミ。肉厚。そして程よい脂加減。「肉食ってるぞ!」という気分になる。程よいかたさと、それでいてほどけるように崩れていく繊維の絡まり方が見事。

タレカルビ。ロースにしてもそうだが、程よくきちんと寝かしてあるので、肉の旨みが深い。噛んでいくと、肉の奥からじんわり染み出してくる。そこにカルビの場合は脂身のうまさが加わる。

もう間違えようがない。外しようがない。
カルビがうまかったので、上カルビも頼んでみた。

上になると霜降り感アップ。脂の旨みと甘さが増量。さすがに上。
ただ、個人的には普通のカルビも好きかな。肉としての旨さは、普通のカルビの方がある。値段の差以上の味の差はないような。ま、このあたりは好みの問題。オレはアッサリ好きの赤身好きなもので。霜降り派は迷わず上を。

テグタンスープ。辛さ・甘さ・ダシのコク、そして絶妙の塩加減。すべてが融合した逸品。これはうまい。少しライムをきかせてあるのか、ほのかな酸味もいい感じ。ここにご飯をぶち込めばアナタ! 間違いないですよ。何杯でもいけますよ。
で、このあたりになるとオバちゃんの機嫌も良くなってくる。仕事がひと段落したようで、世間話をふってくるようになり、笑顔を見せだす。
……スーパーデレモードがスタートか?
最初のツンツンぶりはどこへやら。気がつくとなかなかのフレンドリーな応対。最終的には店の外まで出て我々をお見送り。

「また来てちょうだいね」

おお、まさしくこれはツンデレ。げに正しきツンデレ。ツンで始まり、デレに終わる。「焼肉界史上最高のツンデレ」は確かにアナタだ。
最初は怖いが、実はフレンドリー。馴染めば実に居心地の良い空間。そして待っているのは最高の肉たち。これは確かに聖地。焼肉好きが訪れるべき巡礼地。

我々はここを、焼肉を追い求め続けたものだけがたどりつく「焼肉終着駅」と呼んでいる。

【閉店】金龍苑 (きんりゅうえん)

この記述はダテじゃない。ウソ偽り誇張なし。キムチもうまい。ナムルもうまい。ハラミもロースもカルビもうまい。ミノやテグタンもうまかった。
汚いビジュアルで繁盛するにはワケがある。焼肉好きは終着駅へ急げ!