香港の記事で思い出した。そうそう、昨日、一蘭に行ったのだけれど、日曜の夕食どきだったせいか、凄く混んでいた。で、よくよく周りの話を聞いていると、どうも海外からの観光客率が高い。主に聞こえてきたのが北京語と広東語。中国と香港からの観光客ばっかだったのだ。
ただ、これは合点がいく。というのも、オレは香港に行くと毎回ネタ探しのために本屋に行き、怪しい本を探すのが好きなんだけど、香港で売っている日本向けガイドブックとかだと、一蘭の掲載率は高いんだよね。すこぶる高い。
ラーメンと言えばトンコツラーメン
アジア全般で最も有名な日本式ラーメンのお店といえば味千ラーメン。
こちらがトンコツラーメンなので、どうしても「ラーメンといえばトンコツ」なんですよ。一番有名な店を通じて、そのジャンルを理解する傾向はどうしてもあるので。
なので、ガイドブックとしてもトンコツ系から載せる傾向がある。「康竜」「九州じゃんがら」「博多 一風堂」なんかもよく見る。当然、ここに一蘭も入って来るよね。
B級グルメが中心
「せっかく日本に来るんだから、和食を食べたいんじゃないか?」と日本人としては思うけど、あちらのガイドブックに載っているのはB級グルメが中心。ま、若い人向けの本を中心に見ているので、予算的なものがあるので当然といえば当然なんだけど、比較的リーズナブルなものが好まれる傾向にある。
なので、取り上げられているのも、ラーメンやトンカツ、カレー、立ち食いそば、回転寿司とかだったりする。あるいは食べ放題店が特集されていたりもする。1食1,000円くらいが目安になっている気がするな。それより高いと好まれない。食べ放題でも2,000円まで。
高くてうまいものは現地でも食える
それに寿司とか天ぷら、あるいは和牛などの高級なものは、金を出せば現地でも食べれるんですよ。現実に今年のマグロの初セリ、大間のマグロを競り落としたのは香港の回転寿司屋だった。
牛肉で言えば松阪牛、果物では栃木のあまおう。こういうものは、現地のデパートでも買えるし、そこそこいい店に行けば食べれます。向こうのデパ地下行くと、日本の食材がわんさか並んでいる。日本の最高級品は日本に来てまで食べる必要はない。
となると、あちらの人にとって日本で食べるべきは、向こうで食べられないもの。つまりラーメンやカレーなんかの日常食ということになる。海外進出してない店がいいわけですよ。寿司とか食べても自慢できない。「一蘭行ってきたよ!」「さぼてんのトンカツ食ったぜ!」の方が自慢できるし、「松屋ってところは、カレーにもみそ汁がつくクレイジーな店だぜ!」って経験をした方がネタになるわけですよ。
事実、ガイドブックではどこも吉野家より松屋推しになっている。これは吉野家は香港にあるけど、松屋はないという事情があるから。香港で食えるものは後回しで当然だよね。
食券式・オーダー式が好まれる
あと傾向として、やたら食券式の店とか、オーダーシートで注文する店が好まれる。
まあ、これは旅行者として理解できる話で、会話で注文を通すよりラクだから。食券買えば、それが出てくる。オーダーシートで注文すれば、それがそのまま出てくる。余計なコミュニケーションがいらない。言葉の問題もない。ガイドブックには自販機のガイドが手厚く書いてあるので、それを見ながらピッピすりゃおk。手軽。
もうひとつは、あちらではオーダー式はポピュラーであるという事情。メニューがずらーっと書いた紙があって、そこの横に数を書いて注文するって形式は結構ある。飲茶では特によく見かける。なわけで、あちらの人にとっては違和感なく注文できる。ストレスが少ないってところはあるね。
アジア客を巻き込むには
という事情があって一蘭は人気だったというわけなんだけど、改善点もあるし、他の店も、こうすればいいんだと思う。
自販機のボタンは大きく写真入りで
言葉が通じない場合において、注文の手がかりは写真。ビジュアルが一番強い。なわけで、自販機で食券を売る場合、ボタンに注文するものの写真があるというのが、最も視覚的でいいと思う。英語表記とかもあるとはいいと思うけど、それよりもビジュアルの方が確実。日本人に対しても親切な改善足りうるし。
個数ボタンは混乱のもと
電車の切符販売機なんかもそうなんだけど、あのボタンで悩む人は多いんだよね。「このボタンはなに?」「どうすりゃいいの?」みたいな。松屋とかの「店内」「弁当」なんかもそうなんだけど。
こういうボタンは混乱の元。本当はない方がいい。海外からの観光客だけじゃなくて、たまに年輩の人もフリーズしてるからなあ。おばちゃん、おばちゃん。行列できてまっせ。先に「店内」押せばいいのよ。触っても爆発しないから、機械は。
写真メニューは必須
店内には写真メニューは必須。でなければ、主なメニューだけでもいいから、壁にその写真を貼っとくといい。大体の人はメジャーなものを求めて食べに来るわけだから、その写真を指差せば注文のコミュニケーション上は十分。そういう余地があるといい。
メニューのナンバリング
できれば、写真と合わせて番号をふっていきたい。「1.ラーメン」「2.ライス」みたいにしておけば、「ナンバーワンプリーズ」で会話が成立するし、筆談するときもラク。
オーダーシート注文体制
そして紙注文ができるといい。一蘭的な味の調節だけに限らず、ものの個数を書き込む形式。
写真メニューやメニューのナンバリングをやっていると、このオーダーシートに効果大。写真メニューで「1はラーメン」と理解すれば、オーダーシートの表記が日本語で「ラーメン」でもわかる。なんとかなる。
言葉が通じなくてもなんとかなるもんよ。言語よりも、理解できる取っ掛かりがあるかどうかの方が重要だよ。
ラーメンの今後
最後に、ここからはラーメン限定の話だけど、今後はトンコツ系の人気は下がると思う。これは単純な話で、日本のラーメンに詳しくなれば、トンコツ系以外に行きたくなるのは自明の理だから。「醤油もあるぞ」「塩うめぇ」「味噌もなかなか」って感じに発展するはず。ジャンルの広がりの過程ってそういうもんだから。
その中でトンコツに続くステップとして無難なのは魚介系でしょうね。煮干し系、カツオブシ系。アジアにはナンプラー、ニョクマムといった魚醤文化があるので、魚介系のうまみに理解がある。これまではトンコツという動物系に行ってたわけだから、その反動として魚介系に行くっていうのがわかりやすい流れかなあと。欧米と違って海苔にも抵抗がないし。潮州系の麺屋では、海苔をトッピングするのはポピュラーなので。
現実に「麺屋武蔵」は向こうでも評判になっているし、今後は武蔵をとっかかりに魚介系人気がじわじわ広がってくる気がしている。永福町「大勝軒」とかが来るかもな。醤油でも鶏ガラじゃなくて、煮干し系というところがポイント。
ま、最後の項は完全に個人の独断に基づく予想ですがね。以上、ちょっと食について語ってみました。