(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

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映画「ヤング@ハート」評 - 泣くべき人が泣くための映画

昨日は渋谷まで「ヤング@ハート」を見に行ってきた。

これ、ずっと気になってた映画。

やっと日本で見れるかと。そういう感じ。ハンカチを装備。号泣する準備をして映画館に乗り込んだ次第。
おじいちゃんが、おばあちゃんが歌う。集い、練習し、歌う。そのドキュメンタリー。その日々をただ追う。ひたすら追う。ただそれだけなのだけれど、その中に泣き笑いがある。お年寄りの癒しもあり、思わず笑ってしまう場面を挟みつつ、悲しいシーンがある。
そしてそこには悲しさを浮き彫りにする歌がある。歌が流れ、その歌詞を目にするとき、悲しみの場面と、歌う人たちとがあいまって、より悲しくなる。涙を誘う。歌詞を映画の中のおじいちゃん・おばあちゃんに投影することで。そして自分自身に投影することで。悲しみの陰影は深くなる。


仲間の死を知らされた直後の、刑務所での慰問でのシーン。歌うのはボブ・ディランの「Forever Young」。

あなたに神のご加護がありますように
願いが叶いますように
常に他者の力となり
他者があなたの力となりますように


星への梯子が届き
最後まで昇れますように
あなたの若さが永遠でありますように


永遠に若く、永遠に若く
あなたの若さが永遠でありますように

ヤング@ハート−オリジナル・サウンドトラック(ライヴCD付2枚組) - はてなキーワード

星への梯子が届き、最後まで昇っていった仲間がいる。それを知らされて歌う。残った人たちはただ歌う。歌詞が映画の一場面を通し、これ以上ない重みを持って胸に迫る。
クライマックスはColdplayの「Fix You」

最善を尽くしても
うまくいかない時
欲しい物を手に入れても
必要じゃなかった時
疲れているのに眠れない時
お先真っ暗になる


掛け替えのない人を失ってしまうと
涙が頬を伝う
愛が無駄になってしまった時
それ以上辛い事があるだろうか?

ヤング@ハート−オリジナル・サウンドトラック(ライヴCD付2枚組) - はてなキーワード

辛い時、悲しい時って、みんなこういうもんだ。こういうもんなんだ。誰だってそういう時を過ごしてきたんだ。うまくいかない時もある。いや、うまくいかない時の方が多いかもしれない。
だから、そういう人にこそ、この映画を見て欲しい。今、幸せになっている人は見なくていい。うまくいっている人は、これを見ても得るものは少ない。立ち上がる気力や生きがいを失い、両手や両足をもがれたような精神的痛みに直面し、何もできなくなっている。そういう人はこの映画で得るものがあると思う。
傷ついている人ほど、この映画は悲しい。自分に悲しい体験があればあるほど、悲しさがわかる。歌詞の重さがわかる。歌う素晴らしさがわかる。そして生きる喜びがわかる。
傷の深さに反比例した癒しを、この映画は与えてくれるはず。泣きたい人は、この映画を見て泣くといい。泣き終われば、きっと次にすることができるだろうから。最後にニッコリ笑い、映画館を出れば、しばらく元気に過ごせるのではないだろうか。

ヤング@ハート−オリジナル・サウンドトラック(ライヴCD付2枚組)

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サントラCDもなかなかいい。傷つき、悩む人ほど歌詞が染みるし、歌声が染みる。プロの歌手でも出せない味。それが生きてきたという証。
こういうお年寄りにワタシはなりたい。