(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

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物議が金を生む

最近、大相撲が盛り上がってますよねえ。場所中の取り組みは元より、それが終わっても礼儀作法やら、デーモン小暮閣下の騒動やら、何やら。ま、大相撲は興行スポーツであり、プロスポーツ*1。盛り上がり、注目されてナンボでありますが、よくよく考えてみると、ちょっと前までは大相撲の人気は凋落する一方だったわけです。「相撲離れ」とかって言われてたわけです。それがこの復活。この展開を考えるに、エリック・ビショフというプロレス関係者の自伝の言葉が、どうにもこうにも頭をよぎるわけです。

物議が金を生む(Controversy Creates Cash)

Eric Bischoff: Controversy Creates Cash (WWE)

Eric Bischoff: Controversy Creates Cash (WWE)

露骨な言葉ながら、これほどプロスポーツ、ことにプロレスというエンターテイメントビジネスの核心を突いた言葉はありません。
問題があってこそ人々は注目し、関心を持ち、それが集客や視聴率、グッズ販売につながって、お金を生むと。そういうことでありますよ。
で、アメリカ型のプロレスと現在の大相撲って似てるんです。どう似てるかというと、プロレスっていうのはベビーフェイスという善玉と、ヒールという悪玉によって成り立っておりますが、アメリカのプロレスで盛り上がるのは、強くて憎らしいヒールのチャンピオンがいて、そこにベビーフェイスのチャレンジャーが立ち向かっていく構図なんですね。
そしてこのチャンピオンがありとあらゆる汚い手を使い、防衛を重ねていく方が盛り上がる。「え? それってアリ?」って手法をとるほうが、ベビーフェイスへの同情が集まるし、「次こそは!」みたいな期待も高まるし、いざ勝ったときの熱狂も凄いと。こういう構図なのです。
そして今ってまさにそうだよね。絶対的ヒールのチャンピオンに朝青龍が帰ってきた。強い。むかつく。他のヤツ、頑張れ。見る側が最も感情移入しやすいケースなわけですよ。そして朝青龍が強いからこそ、まわりの挑戦者まで光る。朝青龍が勝てば憎しみがまして、さらに注目度が上がる。負ければ負けたで、アンチは満足する。そういうオイシイ構図になっとる。
また礼儀作法やなんやらの騒動が絶妙な味付けになってますね。ガッツポーズの件。いじればいじるほど、盛り上がれば盛り上がるほど、角界関係者がオイシイ展開になってる。
「物議が金を生む」
まさにそういう展開。
プロレスのテレビ中継が次々と切られ、話題になることが減った今、こういう姿勢ってとっても大事だなあと思った次第。プロは注目を集めてナンボ。物議をかもすことがなくなったプロレス界に、人々の目が集まらなくなったことを考えてみても、この話は反証されるでしょうなあ。
見られてこそプロ。金を集めてこそプロ。朝青龍はプロですよ。自分に注目度を集めることで、結果的に対戦相手を光らし、角界全体を光らせているわけだから。
ついでに言うと、プロレスではヒールが試合をつくります。ヒールはバカじゃできない。同時にバカにならないとできない。お笑いのボケと相通ずるものがあります。漫才のボケ、プロレスのヒールという類似性を考えるに、松本人志・タイガージェットシン・朝青龍という並べ方をすると、物議の大事さがわかるんじゃないでしょうかね。
おしまい。

*1:このあたり「国技だから」という批判もあるだろうけど、選手(力士)がお金もらっているという意味で、プロスポーツであることは疑いようもないでしょ。放映権料とかチケット収入が原資なわけだし。