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風は吹いていない - 千葉県知事選挙分析

ちょっと遅くなったけど、森田健作、千葉県知事選に勝ったねえ。

ま、有利な展開であったのは確かなんだけどさ。

森田健作の圧勝?

結果を見る限り大差がついたのは事実だし、圧勝に見えることは間違いない。

こういう見出しがでるのも当然だろうし、

千葉県知事選に圧勝した俳優の森田健作氏(59)

http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/chiba/090330/chb0903301247004-n1.htm

という前置き付きで紹介されるのも無理からぬこと。
ただ、よくよく内容を見ると圧勝と呼んでいいものか。「見かけの圧勝」という感じじゃないかねえ。

(表1)2005年・2009年千葉県知事選挙での森田健作候補の得票シェア比較*1
森田健作 その他候補 シェア
2005年 954,039 1,122,809 45.9%
2009年 1,015,978 1,214,772 45.5%

前回は3候補、今回は5候補での選挙戦ということもあり、票が分散するのは当たり前といえば当たり前だが、しかし圧勝といいながら、シェアは下げている。けれども、シェアは下げていても2位以下との票差が開いている。だから圧勝に見える。差が大きく見えている。
つまりは、ライバルがひとりじゃなかったこと。一騎打ちの構図にならなかったことが大勝の最大の理由。吉田平候補か、白石真澄候補かが出馬していなかったら、もっと接戦になったかもしれない。確かに保守分裂の選挙にはなったものの、票を食い合った二人を尻目に、自らは票をガッチリ固め、前回並みの得票を得て当選したと。こんな感じのことが言えそう。
出口調査の結果を見ても、そのような感じがうかがえる。2005年3月14日の「毎日新聞」夕刊5面によると、支持政党別の投票行動は次のようになっている。

(表2)2005年千葉県知事選挙の出口調査*2
堂本暁子 森田健作
自民支持 37% 62%
民主支持 62% 33%
支持政党なし 51% 43%

それぞれ自民・民主の基盤をおさえ、無党派層の「風」を多く受けた堂本当選と。そういう構図がうかがえる。
一方、今回の知事選挙はこんな感じ。

「支持政党なし」と答えた無党派層のうち45%が元衆院議員の森田健作氏(59)に投票したと回答した。民主党などが推薦したいすみ鉄道前社長の吉田平氏(49)に投票との答えは24%にとどまった。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090330k0000m010131000c.html

自民支持層は69%が森田氏に投票したと回答した。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090330k0000m010131000c.html

民主支持層で吉田氏と答えたのは60%。森田氏との回答が28%を占め、白石氏にも票が流れた。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090330k0000m010131000c.html

自民支持層の吉田氏に流れた割合が不明なものの、これを表2の要領でまとめると、こうなる。

(表3)2009年千葉県知事選挙の出口調査*3
森田健作 吉田 平
自民支持 69% ?
民主支持 28% 60%
支持政党なし 45% 24%

前回よりも自民党支持層を固め、民主支持層は減らしたものの、支持政党なしの無党派層は前回同様の水準。
……ということは、4年前と変化がないだけなんですよ、森田健作は。同じ戦いをして同じ結果を手に入れた。但し、相手が一本化されてないため弱体化し、その分差がついた。これだけのこと。

一本化シミュレーション

それを検証するために、今回の吉田・白石両名の票を合算し、森田健作とのシェアを出してみた。2005年の堂本暁子との比較を並べることで、動向がわかりやすくなるはず。

(表4)2005年・2009年千葉県知事選挙での主要候補に対する森田健作候補のシェア比較*4
2005年*5 2009年*6
市部 49.3% 50.4%
町村部 53.9% 57.1%
県計 49.8% 50.8%

派手な見た目とは裏腹に、地方をガッチリまとめたのが町村部の数字からうかがえる。前回選挙でも町村部の強さは目立ったが、今回はますます町村部で強みを発揮したという印象。手堅い選挙をしている。

2005年の結果を見る限り、森田健作は都市部で弱く、町村部での強さが目立った。ライバルの弱体化により、強みがますます活き、弱みを隠せた感じがする。

(表5)2005年千葉県知事選挙 大票田6市での堂本暁子森田健作比較
堂本得票 森田得票 票差 堂本率 森田率
千葉市 145,113 138,737 ▲6,376 51.3% 48.9%
船橋市 90,356 78,450 ▲11,906 53.5% 46.5%
松戸市 66,379 62,981 ▲3,398 51.3% 48.7%
市川市 64,159 56,125 ▲8,034 53.3% 46.7%
柏市 50,818 42,820 ▲7,998 54.3% 45.7%
市原市 45,407 48,695 3,288 48.3% 51.7%
6市合計 462,232 427,808 ▲34,424 51.9% 48.1%
(表6)2009年千葉県知事選挙 大票田6市での吉田白石・森田健作比較*7
二者得票 森田得票 票差 二者率 森田率
千葉市 166,471 151,744 ▲14,727 52.3% 47.7%
船橋市 84,291 78,465 ▲5,826 51.8% 48.2%
松戸市 67,514 68,252 738 49.7% 50.3%
市川市 65,142 62,201 ▲2,941 51.2% 48.8%
柏市 60,872 54,167 ▲6,705 52.9% 47.1%
市原市 45,788 50,066 4,278 47.8% 52.2%
6市合計 490,078 464,895 ▲25,813 51.3% 48.7%

有権者20万人以上の市を抜き出し、直接比較してみたのがこちらだ。今回の選挙では森田健作に「風が吹いた」「無党派に支持された」と言われているが、こうして見る限り、確かに前回よりは数字はいいし、得票を増やしているものの、都市部での弱さは引き続き残っている。「風が吹いた」「無党派に支持された」という都市型選挙での強みは、少なくてもこのあたりのデータからは感じられない。

あくまでも数合わせのシミュレーションだが

もちろんここで行ったシミュレーションは単なる数合わせであって、吉田平白石真澄両候補の得票を合計して考えてみただけのこと。この両者が候補を一本化したからといって、このシミュレーション通りの合計値になるわけじゃない。
ただ、結果を見ても森田健作の圧倒的な強さは感じられない。あくまで前回に比べ、やや上回るという程度の加算。
それにだ。そもそも今回の選挙は国政選挙ではないし、政党選択とは言いがたい側面がある。

同知事選で与党は候補者の一本化に失敗。多くの自民党県選出国会議員や地方議員が森田氏の応援に回ったが、森英介法相は吉田氏を、林幹雄幹事長代理ら数人や公明党県本部は白石真澄氏をそれぞれ支援するなど対応が割れた。

http://www.jiji.com/jc/zc?k=200903/2009032900190&rel=j&g=pol

今回は自民党分裂選挙だったし、公明党白石真澄を支援していた。民主党も微妙に割れている。

こんな感じで、安易でわかりやすい問題を結びつけるのもあれだし、

「元気」という曖昧な単語に結びつけるのもあれだ。もし「元気」が有権者に受けていれば、今回は2回目の知事選なわけで、もっと得票を伸ばしてもおかしくないし、都市部でもっと風を受けているはずだ。
なので、このあたりの評価が無難なのかもしれんね。

松沢知事は「千葉県の知事を決める選挙で、国の政党の人気度を測る選挙ではない」と、国政の影響を“書き立てた”報道を批判。「県民と接してきた量が一番多かった森田さんが勝ったとみるべきだ」とした。

http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/kanagawa/090405/kng0904051227000-n1.htm

町村部で強かったわけで、日常の活動が功を奏したと見るべきじゃないかな。都市部での得票は敵失というか、ライバル一本化がなされなかった幸運が大きいかと。

4年後はどうなる?

知名度のある候補が出ると、如何に現職知事だとしても森田健作は厳しいかな?というのが率直な印象。市部で弱いというのは、風ひとつでひっくり返されることを意味するので、非常につらい。
もちろん現職知事なわけで、実績があれば支持されるし選挙戦を有利に戦えるけども、その実績がなければ地盤としていた町村部の支持を失うわけで、よりどころを失う。なかなか難しい4年間がはじまったと見るべきでしょうな。
以上、こんなところで。