(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

ウェブサービスのストロー効果

「ケイレキ.jp」を使ってみた。

ふうむ、なかなかおもしろいね。わかりやすく言えば「実名でやるTwitter」ってところか。より狭い内輪としての世界観だわな。
ただ、問題なのは「Twitter」をどう考えるかなのだろうなあと。Twitterとの距離感。似ているサービスだからこそ、どういう距離感を持ってケイレキ.jpというサービスを打ち出していくか。そういう戦略的な部分。
具体的に言うと、最近、Twitterと連動できるようになって、ケイレキ.jpでの書き込みが、Twitterで反映されるようになった。これ、便利な機能。ケイレキ.jpの存在をTwitterで知り、初めてみたって人は結構多いし、ケイレキ.jpの多くがTwitterユーザーのようなので、この連動はケイレキ.jpユーザーの多くにとってメリットが大きい。
しかしここが正に問題。

便利にしていいの?

そもそも「便利にしていいのか?」ってところに疑問があるわけよ。「不便な方が都合がいいこともあるんでねえの?」と。
便利というメリットがある。しかしその「便利」というメリットが、ケイレキ.jpにとってデメリットになりゃしないか? という懸念があるのね。ユーザーが求めるものを実装しても、ケイレキ.jpが望む展開にならないんじゃないか、という疑問があるわけ。

イメージするのはこれ。ストロー効果

交通網が整備されると、交通基盤の「口」に当たる市町村・地域に経済活動が集中し、「コップ」に当たる市町村・地域の経済活動が逆に衰える現象である。 特に長く細い(=1本の)通り道だけで大量の移動が起き、途中の中継地に移動に伴う経済効果が殆ど無いのを特徴とする

ストロー効果 - Wikipedia

これのウェブサービス版が起きるんじゃないか、という懸念をしとるのですよ。便利にすることで衰退するものが出てくるんじゃないか、という懸念。

コップ:木更津都市圏、ストロー:東京湾アクアライン、口:京浜
東京湾アクアライン東京湾横断道路)の開通で対岸の神奈川県川崎市と数十分で結ばれ、都内まで1時間30分程度を要していたものが大幅に短縮された。これにより、木更津が京浜のベッドタウンとなることが期待されたが、高額な通行料が毎日のマイカー通勤にはネックとなり、京浜のレジャー地区、特にゴルフ場投資が進む結果となった。他方、木更津から京浜への買い物客流出が促進され、木更津駅前は一気に寂れてしまった。

ストロー効果 - Wikipedia

このモデルに置き換えるとわかりやすいんじゃないかと思う。コップ(木更津)がケイレキ.jp。ストロー(東京湾アクアライン)がTwitterとの連動。口(京浜)がTwitter
東京湾アクアラインを建設していた当時の目論見では、木更津から横浜・川崎が1時間圏内で移動できるようになることで、木更津へ京浜地区からの流入を見込んでいた。ところが現実には木更津から横浜・川崎に出かける人が増え、駅前が寂れた。
同じことが起きるんじゃないか? 「どちらか」をユーザーが選ぶときに、よりアクティブで、より利用者が多く、より知名度があるサービスに流れるんじゃないか? Twitterと連動したことで、よりTwitterと比較されやすくなるんじゃないか? むしろユーザーの利便性を下げても、連動させない方が良かったんじゃないか? Twitterと似ているサービスだからこそ、余計にそう感じてしまうわけなんですよ。
似ているからこそ比べられる。比べられるからこそ既存のサービスに比べ、新規サービスは不利。さすがに規模ではかなわない。しかし利便性は高めたい。利便性を高めることで、それを売りにしたい。けれども利便性を高めることで、かえって独自性と矛盾する話になる。
今は立ち上がったばかりで、これからユーザーを増やしていこうという段階だから、さほど問題にならないでしょうけど、今後、規模を大きくしていく段階で、Twitterと如何に決別していくかというのはテーマになるでしょうね。同じなら片方でいいわけだし、差別化するならば、連動はかえってリスク要因になる。
Twitterを使わないユーザーが入り込んで来るタイミングがひとつの転換点なのかな。今はTwitterユーザーが流れ込んでいる段階だから問題がない。Twitterからの流入でプラス。しかしこれがTwitterを使わない層のユーザーが増えてくる段階になると、Twitterへ流出する可能性が高まっていく。「こっちもおもしろそう」でTwitterをはじめ、Twitterの利用をメインに据える人が増えるリスクが出てくる。
その段階に達するまでにケイレキ.jp独自の魅力を如何に確立できるか、という話でもありますけどね。ウェブサービスとして認知されるスピードと、戦略性の確立という競争。ま、新たな試み、新たなサービス。先行きに期待したいところです。