(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

手焼き煎餅小説 - 恋に焼かれて

私は彼の荒々しさを愛していた。彼は私の全身を繰り返し繰り返し撫で回し、愛の海に全身を沈め、何度も何度も私をひっくり返した。
ひっくり返す過程で、彼は私の体をなめまわすように見つめた。鋭い眼光で、冷静に品定めをするように。
彼は時折液体を手に取った。それを私の全身に塗りたくる。時に手で。道具を使うこともあった。また、それをためたプールに荒々しく私を放りこむこともあった。私をつかんで、全身を沈めた。深く。深く。時に寄り添い、時に突き放し。私の心と体を自由にもてあそんだ。
私にはわかっていた。彼には私だけじゃないのだと。彼は手馴れていた。手馴れすぎていた。それまでの経験を物語っていた。彼の荒々しさは、それまでの経験が育んだものだと。幾多の関係が彼を育てていたのだと。
しかし彼の手にかかるひとときは喜びだった。全身をくまなくめぐる彼の手。転がされる感触。私は完全に彼の虜だった。すべては彼にささげていた。
体の反応はとても正直だった。彼に転がされると、体の一部が膨らんでくるのがわかった。ぷっくらとしたふくらみ。
「空気かい? 空気だよね?」
彼は独り言のように呟き、私を抱きしめ、その膨らみをなでるのだった。なでられると私はますます興奮し、その膨らみは大きくなる。
膨らみが大きくなるタイミングを見計らって、彼は手に刷毛を持ち、そっと液体をつけ、その膨らみをそっとなでた。液体が私に染み渡るのがわかる。全身が赤黒く染まっていくのがわかる。
私はこうして彼色に染まり、恋に焼かれていくのだった。
(完?)