(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

まだまだ山師が足りない

昨日、skypeチャットをしていたわけですが、そこでIT業界を巡る話になりました。で、ワタクシはまったくの門外漢なわけですが、漠然とこう思っているので投げかけてみたんです。

日本には山師がいない

他の国と比べて、あるいは日本の他の業界に比べて、日本のIT業界には山師が足りないと思うのですよ。少なくても俺はあまり知らないし、俺の視界にはあまりいません。俺が知らないだけとか、俺の視界が狭いだけかもしれないけど、他の業界に比べて、視界の狭い広いを飛び越えた圧倒的な存在感の山師がいないと思うのですね。「ITで一儲けしてやろう」というタイプ。ITとかWebの世界を金儲けの舞台として割り切り、技術を金儲けの道具として考えられるタイプ。こういう肉食系プログラマが割合少ないように感じるんです。
別の言い方をすると、「ものづくり」を手段として考える人間が目立ちにくいような。「つくる」行為が美化されすぎて、「つくる」ことが目的になり過ぎている。「つくる」が目的なので、できれば終了。その先がない。完成即ち目的達成。お金が欲しくないわけではないが、別に儲けなくてもいい。何故なら「つくる」という目的は達成されているから。そこで満足が生まれている。
そこでもっと「何のためのものづくりか」って視点があってもいいと思うんだよね。「日々の生活を便利にする」「暮らしを豊かにする」でもいい。そうした目的の中に、もっとギラギラしたエゴがあってもいいと思うんだ。
「金儲けしたい。売れるものをつくってガンガン売って、お金を儲けたい。儲けたお金でラクな生活をしたい」
こういう願望があって、あらゆる商売の中でITを選んだ。そういう人がいてもいいと思うし、これだけ大きな業界のわりに、そういう意欲的な人間が目立ってこないというのは、逆に妙な印象を受ける。これだけお金が動く業界なのにねえと。
でだ、そういう発想があることで、技術が発展というか洗練する面もあると思うわけね。

目的は「儲ける」

ゴールが「つくる」じゃなく「儲ける」になると、小ゴールとして「売る」ができる。となると「売れる」ものが善で、「売れない」ものが悪になる。その過程で「何が売れるのか」という視点も生まれるし、「どうすれば売れるのか」という改善もできるようになると思うわけね。「このままでは売れない。売るためにはどうすればいいんだろう」とか。あるいは「他のヤツがやっても売れないもので、俺が売る方法はないか?」とか。
そこに技術者にない視点が必要になってくる。一般的な営業的視点が必要になる。顧客視点でもあるし、総合的には経営者視点でもある。そういう複数の視点で技術とか商品を見つめなおすことで、より売れるものができるんじゃないかなあと。つくっただけで満足せずに、売る・儲けるという過程を経てやっと一息みたいな。そういう一歩進んだ発想ができるんじゃないかなあと思うわけですよ。
で、その過程で「儲ける」という山師的発想、意欲的な肉食系プログラマがいてもいいし、他業種のそういう人材を抱きこんでもいいと思う。別に「つくる人」と「売る人」は別だっていいわけだしさ。「儲ける」という目標のために分業をするというのはひとつの形だし。大事なことは「儲ける」という目的を共有しているかどうかで、目的を達成するための手段として、製作・販売の分業という選択肢が生まれるなら、それはそれでひとつの選択だし結論。
ところが現状はあまりそういう感じじゃなくて、仲間同士、技術者同士が集まってという印象を受けるのよ。「儲ける」という目的より、「つくる」という目的のために集まったケースばかり見えるし、目立つ感じがするのよね。それはそれでいいんだけど、そういう「つくる」に重きをおいたものに対するアンチテーゼとかないのかなあと。みんな「つくる」に向かっちゃつまんないじゃん。それに反対する概念があるから、「つくる」の重要性が出るんじゃないかなあ。極端な話、「たかがものづくり」という意見があってもいい。

「ものづくり」は美化されすぎ

ま、ITに限らず、「ものづくり」全般にそれは言えるんだけどさ。なんか「ものづくり」って言葉で、それがとても神聖でステキなものってことになっている。でもそれを家業として、生活の糧を得るためにやっている人間にとっては、それは毎日毎日お金を得るリアルな作業であり、繰り返しの日常。神聖という言葉からかけ離れた現実がそこにあったりもする。
その現実の中から「一発儲けたい」って人が生まれて当たり前だし、いないはずがないのよね。「ここから抜け出したい」と思う人がいても当然だし、「仕事はやめたい。しかし続けなければ生きていけない。ここから離れるには?」という切実な願望がベースにあったりもするわけで。
それに儲かっているから続けられるという現実もあるわけで。借金こさえて設備を導入したはいいが、その借金を返せなければ設備ごと差し押さえになってしまうわけで。
そういうリアルな生活観があまり見えないのよ、IT業界からは。自分が属してないし、あまりその世界を知らないからだけかもしれんけどもさ。でも実際はデスマーチがあったり、なかなかにきつい職場なわけでしょ。現実はなかなか厳しいわけですよね、IT業界だって。であるならば、そこからいかに抜け出すかという「儲けよう」発想になっても本来不思議じゃないと思うんだよな。
だとすると、ハングリーな人がいないんじゃなくて、そういう発想を持っていても言いにくい環境ではないとか、抜け出せる状態じゃないとか、外的の参入が少ないために、そういう刺激がないとかそういう要因を考えてしまう。山師が内部から発生しにくいし、外部から山師を呼び寄せる体質ではない。あるいは既に山師はいるが、とんでもなくブラックだとか……うう、それはありそうだのう。
ともかく、もっと山師的な発想が増えてもいいような気がしますよ。少なくても俺は儲けたいし、お金欲しいですけどね、はい。