(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

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子持ちししゃもがボツリヌス菌感染でリコール

ちょっと気になるニュース。アメリカで子持ちししゃもがリコール。ボツリヌス菌で。

Product is sold in New York, New Jersey, Pennsylvania, Maryland, Florida, Virginia, Georgia, Texas, North Carolina through retail stores.

Botulism recall for uneviscerated fish | Food Poison Journal

ニューヨークや、ニュージャージー州ペンシルバニア州メリーランド州フロリダ州バージニア州ジョージア州テキサス州ノースカロライナ州で販売されている商品。

扱っているのはここ。

Product is imported from Japan.

Botulism recall for uneviscerated fish | Food Poison Journal

となっている商品なので、今後の食品輸出にも関わる。日米二国間だけではなく、日本の食品に対する信用に関わる話で、早晩大きな問題になってくるはず。
焦点は、子持ちししゃもにボツリヌス菌が何故? という点。
パック詰め製品のボツリヌス菌感染例として、日本でも1984年にからし蓮根で事故が起きている。

今回の全国にまたがる事件はなんらかの特殊な事情でからし粉にボツリヌス菌の微量汚染がおこり,これを使用した真空パック三香製造からしれんこんが菌発育に好適であり,流通過程で常温相当期間の後有毒化が進んだために生じたものと考える。今後食品衛生行政にこの教訓を生かす必要があろう。

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減菌処理が不十分であった為に、パック内に残留した菌が食中毒になるレベルにまで繁殖したであろうと。

Gourmet family Brand Large Mouth Smelt Komochi Shishamo is vaccum packed in uncoded styrofoam tray.

Botulism recall for uneviscerated fish | Food Poison Journal

今回も「vaccum packed」、つまり真空パックされた商品による事案なので、参考になる。
しかしながら今回の件は「子持ちししゃも」という海産物に関わるもの。

ボツリヌス菌(学名:Clostridium botulinum)は、クロストリジウム属の細菌である。グラム陽性の大桿菌および偏性嫌気性菌。土の中に芽胞の形で広く存在する。

ボツリヌス菌 - Wikipedia

ボツリヌス菌は土の中に存在する菌であり、一般的には農産物に関わる菌であり、海産物に関わる菌ではない。少なくても「子持ちししゃも」、即ちカラフトシシャモが生育する環境に存在する菌とは考えられない。
となると一般的に疑われるのは製品製造過程での混入であり、その後の減菌処理が適正かどうかであり、輸送時においての温度管理体制が問われるところ。本来「子持ちししゃも」本体にボツリヌス菌は感染していないはずだから、工場の設備であるとか、加工工程であるとか、加工した場合の調味料であるとか、商品をパックしたトレーとか、そのあたりが汚染されていたと考えられる。
この場合、工場の設備理由であれば、その工場で生産されたすべての食品を疑う必要があるし、加工工程の場合は従業員の衛生状態が疑われる以上、やっぱりすべての食品がアウトと思われるし、調味料に原因があるならば、その調味料の使用を止めるとともに回収する必要がある。トレー理由の場合も同様で、同ロットのトレーはすべてアウトと判断しないと食品安全上不十分。
今のところ農林水産省から国内向けのアナウンスはないけども(2011/03/05 0:50時点)、国内向けの同商品の流通があるかどうかも気になる。

ボツリヌス毒素の致死量は体重70kgのヒトに対しA型毒素を吸入させた場合、0.7〜0.9μgと考えられており、ボツリヌス毒素1gの殺傷力は約100万人とも言われる(ちなみに青酸カリは経口投与の場合5人/g)。自然界に存在する毒素としては最強。

ボツリヌス菌 - Wikipedia

という菌のリコール事案なだけに、行く末が気になる。
蛇足ながら、カラフトシシャモを扱う企業は同地域の海産物、具体的にはサーモンやカニキャビアなんかも扱うのが一般的であるし(オホーツク海あたりでとれるものという考え方)、輸出入を扱う企業という視点であれば、エビやイカなどの冷凍食品全般を疑うのが当たり前(冷凍シーフードミックスをイメージしてみよう)。
話はアメリカの問題では終わらない。これは日本の問題だ。