(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

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続・被災地の今を訪ねる(6)

続・被災地の今を訪ねる(5) - (旧姓)タケルンバ卿日記 より続きです。
原町火力発電所を後にして、海沿いを北上し、初日の宿泊地である石巻市へ。


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福島県から宮城県に入り、坂元駅へ。

正確には、坂元駅が「あった」場所。駅舎などの建物はすっかりなくなっていた。


建物の基礎と、

駅前の案内板のおかげで、ここに間違いなく駅があったことがわかる。


昨年はあったコンクリート建てのこのトイレもなくなっていた。


一方、ホームの風景は変わらない。


一年前の風景と同じ。


震災前のこの風景が、震災の結果、何もない場所に。
ただ、トイレの取り壊しやレールの撤去は、前向きな復旧への兆しではある。

路線を西側へ移し、2014年の着工が予定されている。

JR東日本は11日、東日本大震災で被災したJR常磐線駒ケ嶺福島県新地町)−浜吉田(宮城県亘理町)間14.6キロの復旧工事に当たる「常磐復興工事区」の現地事務所を宮城県山元町に開設した。JRが復興事業で工事区を設けるのは初めて。

http://www.kahoku.co.jp/news/2013/11/20131112t71022.htm

JR東日本によると、移設ルートに掛かる両町の地権者計約340人のうち、新地町は9割、山元町は6割程度の同意を得ているという。

http://www.kahoku.co.jp/news/2013/11/20131112t71022.htm

少しずつ歩みも具体化し、復旧そして復興へとの道筋も見えてきた。
このあたりを走っているとダンプが目立つ。工事関係車両が目立つ。それが南相馬などとの違い。人が動いているし、物資が動いている。具体的な何かが動いている気配がそこかしこに感じられ、前向きな鼓動を感じる。
しかしそうなってくると心配なのが人手不足であり、車両不足。

福島民報にこのような記事があった。

環境省は、仮置き場などから中間貯蔵施設への運搬手段として主に10トンダンプを想定している。1台で一度に9・4トン運ぶことができる。1年間の稼働日数を250日とした場合、帰還困難区域などを除く2750万トンを3年間で運び込むためには約2000台のダンプが1日2往復する必要がある。
ただ、県内の10トンダンプの登録台数は2329台(平成23年3月現在)だ。復興関連工事の本格化で需要が高まる中、県内の8割超の車両を確保することはほぼ不可能とみられる。さらに、1日に2000台近いダンプが動けば施設の建設候補地である浜通り地方へ向かう道路が渋滞することも予想される。

https://www.minpo.jp/news/detail/2013110211893

汚染廃棄物の輸送ひとつをとってみてもダンプが足りない。また、ダンプが大量に走るためには、道路というインフラ整備が不可欠で、放射線のために立入禁止区画がある現状で、そのルート確保はかなり難儀だ。
また、復興へと進むのは福島県だけではないし、また福島県内の話に限っても、ダンプが必要なのは被災地だけではないという根本的な問題もある。

除雪業務がない夏場は東北地方や北海道の業者の確保も可能になる。しかし、トラック業界関係者は放射性物質の運搬に懸念を示す。青森県の業者は「中間貯蔵施設へ行くと、会社の評判が悪くなる恐れがある。安易には引き受けられない」と慎重だ。

https://www.minpo.jp/news/detail/2013110211893

福島県内のダンプでは到底賄えない。県外のダンプが必要だけども、結局はそのダンプは他の地域との奪い合いになる。「除雪業務がない夏場は東北地方や北海道の業者の確保も可能になる」とあるが、それがどれだけ確保できるのか。
ダンプの役割は放射線物質の輸送だけではない。建設物資や建機、土砂や土のう、建材にアスファルト合材など、工事や輸送物資の数だけ役割がある。
今回、宮城県内ではダンプをたくさん見かけた。しかし同じ被災地でも福島県岩手県ではあまり見かけなかった。仙台市に近ければ近いほどダンプの台数が多い印象を受ける。それは大都市を背景にした環境面の有利さがあるだろう。道路事情が整っている順でもあり、輸送経路が確立している順でもある。
果たして東京オリンピック関連の工事が本格化したとき、東北のダンプは足りるのか。被災地にまわせるダンプがどれだけ国内にあるのか。これはなかなか悩ましい問題だと思う。今はまだ被災地の復興度合いに差があり、施工している工事内容に差があるから、ダンプがまだ必要ではない場所もある。


山元町から亘理町にかけて、海沿いにはこのような水面が高いままの河川がたくさんある。海が近いので、満ち干きの影響もあり、満潮時には橋桁近くまで水面が上がるようだ。
今は人が住んでいないから、治水工事が後回しにされている。しかしこういう工事だっていつかはしなくてはならない。
お金だけにとどまらない現実的な問題をどう解消するのか。全国的な人手の奪い合い状態にならないかどうか。ダンプ、ドライバー、建機、そしてそのオペレーター。工事現場に伴い、警備員だって必要だ。
石巻のホテルの部屋でそういうもろもろを考えて眠る。2020年のオリンピックは、被災地にとっての重石になるかもしれない。
(つづく) 続・被災地の今を訪ねる(7) - (旧姓)タケルンバ卿日記