(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

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小僧寿しのラーメン進出ってどうなんでしょうか

ラーメン進出って死亡フラグとしか思えないんですしお寿司。

31日、小僧寿しは既存の物流網、店舗設備、人員などを活用し、ラーメン店を新業態として展開すると発表。
減退傾向にある「持ち帰り寿司」単一市場からの脱却を測り、新たな事業の核として育成する方針だ。

経営再建中の小僧寿し 既存店舗を再活用しラーメン店業態に進出 | ZUU online

まず、そもそもの話として「本業がうまくいかねえのに、それより苦手な副業に手を出してうまくいくわけねーだろ」というツッコミをせざるを得ません。「経営再建中なのに、本業建てなおさずして副業やるってどういうことよ」とも思います。

同社は同時に、4億円の事業運転資金を年率6%で借入すると発表。こちらはラーメン店展開の資金に充てると見られる。

経営再建中の小僧寿し 既存店舗を再活用しラーメン店業態に進出 | ZUU online

建て直ってない本業の信用でお金を借りて、ラーメンに突っ込むという行為を博打と呼ぶのでは疑惑も拭えません。
ごくごく一般的な話として、ラーメンの方がお寿司より参入障壁が低く、競争が激しいんですよ。誰でもできますから、ラーメンは。技術的に一部の人しかできないような高度なものはないし*1、一部の人しか仕入れることができないような食材もない。やろうと思えば誰でも作れる。
しかしだからこそ難しい。誰でもできるから、誰でもやろうとする。そのために競争が激しく、軽い気持ちでやった人間は失敗する。ラーメンは誰でもできるけど、成功するのは一握り。
先ほど「誰でもできます」と書いたけども、調理技術としては簡単だけど、量をともなったり、質の安定化をともなったり、1日単位での味の平準化をともなったりすると、途端に難しくなる。家族一食分のスープを作るのは簡単だけど、商売するのに必要な百食分のスープを作るとなると難しい。朝のスープと昼のスープ、そして夜のスープでは味も変わってくる。酸化もすれば、水分量も変わる。
夏場に気温35度とかの調理場で、スープ作りを5時間できますか? という話でもある。豚骨を鍋でひたすら煮れば豚骨スープはできる。が、そういう環境に耐えられる体力はあるかどうかとか。豚骨を10kg単位でひたすら運ぶ力はどうよとか。単純な作業も、量があれば難しくもなるし、何より苦痛だ。
飲食チェーンとしてのノウハウとか、従業員のスキルで解決という話なのかもしれないが、幸楽苑とか日高屋とか、そういう専門のチェーンだってうまくいかない店もある。それを経営再建中の小僧寿しができるというその根拠が不思議なわけです。寿司とラーメンに共通点があって、仕入れ食材が一緒であるとか、調理技術が似ているという話なら別だけど、そういうわけでもないし。
コンサルに吹き込まれたのかなあ。でも、コンサルタントだって「魚の方がよっぽど参入障壁高いよ」って知ってるはずなんだよね。

プロフェッショナルコンサルティング

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こちらの本なんかでも語られているくらいで。

サンプル版にチラッとさわりが書いてあるので、興味のある方はどうぞ。
で、どのくらい魚が難しいかというと、新しくできたお店で、良いマグロを置いているところが少ないところで察してください。マグロは一部の仲卸と懇意にならないと、良いのが入らないので難しい。そして量も確保できない。なので新規参入組はサーモンに走る。サーモンは商社とか海外メーカー経由で買えるから。あるいはブリとか。養殖できるからね。マグロを得意にしてる居酒屋チェーン店なんてあんまりないでしょ?
なので、せっかく参入障壁が高い寿司のノウハウがあるんだから、本業でやれるだけやって、少なくても立て直してからラーメンやればいいのになあと思うわけです。寿司よりラーメンの方がよっぽどレッドオーシャンだよとしか思えないわけです。持ち帰り寿司が減退傾向なら、宅配寿司とか、デパ地下進出とか、イートインとか飲食店化とか、回転寿司を第一に考えない理由が不思議。……つか、みんななんでラーメンやろうとするんだろね。
夏のラーメン屋厨房で衰弱経験をしたことがある人間からは以上です。

*1:このあたり、ちょと語弊はあるけども。