(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

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ぼったくり焼畑農業店と客引きの相性は異常

この年末、ぼったくり居酒屋の話題が出ていましたので、ちょっとそれに関して。
結論から言うと客引きする居酒屋に当たりはありません。以下その理由。

そもそも新宿区内では条例でアウト

まあ初っ端からアレな話なんですが、少なくても新宿区では客引き行為自体がダメなんですよ。

「新宿区公共の場所における客引き行為等の防止に関する条例」というのが2013年9月に施行されておりまして、ええ。「酒類を伴う飲食をさせる行為の提供について、客引きをすること」と明確に禁止事項が定義されております。……どう見ても居酒屋アウトだな。
またこの条例の素敵なところは、「それらの行為の相手方となるべき者を待つこと」という項目があり、例えば信号のところで、信号待ちの人を狙って待つようなこともアウト。客引きの準備行為もアウトなのであります。

詳しくはこちらのポスターを。わかりやすくまとまっております。
この条例では罰則規定はありませんが、まあ、新宿区内で営業する「まともな」お店であればこの条例の存在は知っているはずですし、守りますよね、普通。客引きを使っているという時点でアレなのであります。

条例でセーフだとしても大人の配慮でしない

あとは、ちょっと新宿の事情に詳しい人であれば、「条例の有無に関わらず客引きはしない」ということもご存知かも知れません。
「や」のつく自由業の方々の関係各位により、歌舞伎町周辺には縄張りというかシマというものがあり、うっかりそれに触れる場所にて客引きをしてしまうと、「どなたのご紹介を受けてこちらでご案内をしているので?(丁寧)」というご指導を受けてしまう場合があります。
ですので、「新宿区公共の場所における客引き行為等の防止に関する条例」の有無に関わらず、従前から「まともな」お店は、この条例でも許されている店前での不特定多数に対する声掛けに留めるのが一般的でありまして、信号周辺などの目立つ場所での声掛けは致しません。そういった場所で声掛けできるのは、従前にそういったご職業の方々の知遇を得た方々でありまして、そうした従前のご挨拶がない場合は「よろしかったら弊社でお話し合いでも(丁寧)」ということになりかねません。
ですので、お店を離れた場所、通行量の多い場所での客引き行為に関連するお店は、それなりにアレであるか、チャレンジャーなのであります。稀に無知なだけって場合もありますが。

客引きは継続的に頼るものではない

ここからは飲食店の経営視点の話となりますが、「まともな」飲食店では「継続的に」客引きに頼ることをしません。変動費にとどめ、固定費にしません。
客引きに払うお金が何かということを考えると、要は宣伝広告費です。お店を宣伝し、来客につなげる。そのつなげ方が直接的であり、来店というゴールまで一気通貫というだけであります。
一般的に飲食店の宣伝広告費は、開店時などにかけ、その後の営業で回収するものです。どのお店も最初は誰も知らない状態。そのままだと誰も知らないし、誰も来ないので、宣伝し、名を広める。そうして初めて利用するお客様が来れば、そのうちそのお客様がリピーターとなり、リピーターが増えてくれば宣伝をしなくてもお客様が来るようになり、宣伝の必要がなくなっていく。広告宣伝費も減っていき、やがては回収することができる。故に変動費であるわけです。
これが固定費となっているということは、「宣伝広告費をかけ続けている=宣伝しないとお客様が来ない=リピーターがいない」ということを意味します。リピーターがいないということは、「また行こうと思わない=内容がアレ」ということ。満足度が低いお店の可能性が大きい。
また、宣伝広告費が固定費になっているということは、当然に飲み物や料理に客引きに払う費用が加算されています。客引きの取り分が一割ならば、一割分の料金が上乗せされている。その分、原価をかけられないし、味とか量とか、その他のサービスに影響が出る。するとお客様の評判が悪くなり、ますます広告宣伝費にお金がかかり……という負のスパイラルも発生します。
いずれにせよ、儲かっている「まともな」お店では起こりえない話であります。「良い店」は客引きを使わなくても満員御礼ですし。

そのお店、焼畑農業店ではありませんか?

「まともな」お店は継続的な営業を考えております。家業であれば自分たちの継続的な生活の糧を得なければなりませんし、企業のお店でも存続を前提とした営業をします。

ゴーイングコンサーン」という専門用語があるくらいで、企業の経済活動は継続性を前提とします。
ですので、「まともな」飲食店であれば継続を前提にするので、より長く続くお店をつくろうとします。お店の評判を高めようとする。リピーターを増やそうとする。そのために商品の品質を高め、サービスレベルを上げようとする。
しかし「まともではない」お店に継続性は必要ありません。お店の評判など関係ないし、リピーターもいらない。したがって商品の品質を高める必要もなければ、サービスレベルを上げる必要もない。
こうした前提に基づく焼畑農業店と客引きは相性の良さは異常。利用一発で最大限の料金をとってサヨウナラ。「二度と来ねえよ!」で結構。さすがに一年、二年も経つと悪い評判が溜まってくる。そうしたら看板をかけかえればいい。個室居酒屋→個室海鮮居酒屋→個室創作和食居酒屋とか。

消費税と焼畑農業

焼畑農業店と消費税の相性もまた異常。納税免除の関係がありまして、ええ。

消費税では、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税の義務が免除されます。

国税庁ホームページリニューアルのお知らせ|国税庁

新たに設立された法人については、設立1期目及び2期目の基準期間はありませんので、原則として納税義務が免除されます。

国税庁ホームページリニューアルのお知らせ|国税庁

会社を作る。設立1期目・2期目と消費税支払義務なし。3期目から納税義務がある。そこで会社をたたんで、別法人を作る。別法人になったので、店舗の看板かけかえる。また消費税払わなくて良し。払う必要が出ればまた新法人。このループ。
「まともな」家業であるとか、「まともな」企業であればこういうことしません。ちゃんと消費税払う。同じ屋号とか法人格を使い続けることにメリットがあるから。評判とか信用とかね。継続性に意義がある。しかし継続性に意義を見出さなければ、消費税カットというメリットがあるわけです。ま、脱税なんですがね。

同じ場所で看板が定期的に変わる店舗を信用しない

こういうことでもあります。会社の設立年度が最近であれば尚更。焼畑農業店の可能性が高い。
「まともなお店に行きたいならば、まともなお店がしないことをするお店には行ってはいけない」という身も蓋もないまとめにはなってしまうんですがね。新年になりましたし、12月末をもって閉店→看板かけかえをしようとしているアレなお店もたくさんあるんじゃないでしょうか。
元居酒屋店員からは以上です。