(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

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続々・被災地の今を訪ねる(7)

続々・被災地の今を訪ねる(6) - (旧姓)タケルンバ卿日記 より続きです。
女川原発を後にして北に向かいます。


あいにくの空模様。時折雨が強く降る状態です。海沿いをひたすら走ります。

2014年11月12日


七十七銀行の女川支店が横倒しになったまま残されていました。
撤去、解体される建物などがある一方で、こうして残っているものもあります。

2014年11月12日


南三陸町では違和感のある風景に遭遇しました。

2014年11月12日


あれ? ないぞ?

2012年10月24日


ここにあったはずのセブンイレブンがなくなってる!
調べたところ区画整理のため、9月30日で閉店していたようです。こうした店舗がない時に、仮設とはいえオープンし、地域を支えてくれたありがたい存在でした。
新たに建てられるものがある一方で、役目を終えてなくなるものもある。経済が動き、町が動き出すと、こういうことが起こってくるのでしょう。ひとつの節目なのかも知れません。

2014年11月12日


南三陸町の防災庁舎は変わらぬ状態のまま残されていました。

2014年11月12日


一方周辺はかさ上げ工事の真っ最中。盛り土をし、高台を作っています。そしてそこに建物を作るという計画のようです。

2014年11月12日


護岸のために置かれていた土のう袋は全て破れ、土が露出していました。前にも書いたようにこうした場所は珍しくありません。水辺に置かれれば、土のう袋は水をかぶり、耐久性が落ちます。そしてやがては袋が破れ、土が露出する。それが実際に起きているというだけのこと。
福島県宮城県福島県と走り、北に行けば行くほどこうした風景を見ることになります。道路の舗装状態も悪いままのところが残っています。堤防や河川などの護岸工事なども終わっていないところが山ほどあります。
今回見る限り、さすがに瓦礫処理という段階は被災地全域で終わっているようです。課題は次に移り変わり、瓦礫がなくなった土地を如何に再生するか。盛り土をしてかさ上げするのか。それとも別の高台に移転するのか。より具体的な問題に焦点が移っています。
逆に言うと、瓦礫の輸送・処理という問題がなくなったため、広域的な処理を必要とする問題から、より狭い地域での解決が求められる問題に変わっています。行き交うダンプの数が以前よりは少なくなっているのもそのせいでしょうし、そのダンプにしても他県ナンバーのものが減っています。

建設現場の人手不足のため、東北地方を中心に人件費が上がり、工事を請け負う業者が決まらない「入札不調」が深刻になっているからだ。

http://www.asahi.com/articles/ASG1Z530GG1ZULFA01J.html

また、人件費の高騰という問題も深刻になってきています。もともと復興のための労働力が必要なのに、その労働力が足りない。足りないから人件費を上げてでも人を集まる。それでも来ない。やがては限界に達し、公共事業の入札金額ではやってられない。入札不調になる。こういう負のサイクルが現にあります。

国土交通省労務単価を補正したり、通常4月からのものを2ヶ月前倒して適用したりと手は打っていますが、それ以上に労働力不足が深刻な状態です。
釜石に宿をとり、3日目の朝。

2014年11月13日


宮古市の田老地区では高台移転の工事が進んでいました。
土地から離れたくない。離れずに済むためには土地を変えねばならない。そのためには工事が必要で、お金も労働力もいる。
……じゃあ、どうするか。
先が見えてきたことで次の一手が現実的となり、現実的な一手になったことで、より苦悩が深くなることも。
じゃあ、どこに? 誰が? どうやって? お金は? いつまでに?
ここからはすべて手探り。ただひたすらに走り続ければいい状態が終わり、ここからがつらく切ない。復興に痛みを伴う段階になって来ています。
来年もまた、被災地を見に行きます。その変化を見届けるために。
(おわり)

シンプルが一番うまい - 新華園本店

さて、とりあえず一旦書き終えたということで、ここからはまた食べ物を。
被災地巡り2日目は釜石に泊まりました。釜石には抑えておきたい逸品があるんです。

新華園本店(釜石・ラーメン)

実は釜石には「釜石ラーメン」というのがあるのです。その元祖がこちらのお店。

新華園本店のラーメン530円なり。
琥珀色に輝くすっきり醤油味のスープに、具はネギとチャーシュー、メンマ。

麺は極細ちぢれ麺。何でも忙しい新日鉄釜石の方に向けて作ったのがはじまりだそうで、茹で時間が短く、サッと出せるようにと考案されたもの。かれこれ60年もの歴史があるらしい。
スープがこってりしているわけでもなく、具が大量にあるわけでもなく、ガツンと来る要素は何一つないのだけれど、これがなかなかどうしてうまい。
麺にはピンッとしたコシがあり、ずるずるいける。スープはあっさりで飽きがこない。突出した要素はなく、地味目の要素で出来ているのだけれど、不思議とどうして個性がある。シンプルの極みというべき個性がある。後を引く。また食べたくなる。もうちょっと欲しいな。でも、もう少し大切に食べたいな。だからまた来よう。そんなラーメン。
余韻を大切にしたいラーメン。釜石に行く機会があったら是非再訪したい。まる。

小細工なしの刺身一本勝負 - 誰そ彼

せっかく三陸に泊まるなら魚介は外せないということで、こちらのお店に行ってまいりました。

誰そ彼(釜石・魚介)

釜石の有名店。

詳しくはこちらの記事などをどうぞ。
運良く予約なしで入店。いいタイミング。記事にあった松の一枚板のカウンター席に。
3,000円・4,000円・5,000円のおまかせの他、2,000円・3,000円の定食、他に単品料理がある。
とりあえず真ん中の4,000円のおまかせに。実に日本人的選択。中庸。全部で4〜5品が日替わりで出るそうな。何事も季節の旬のもの次第、仕入れ次第というわけ。

まず突き出し。豚肉と野菜のクリーム煮。豚肉は大ぶりで、歯ごたえがあってうまい。魚介メインではあるものの、ここは肉料理もうまいらしい。……そうなると肉も気になるじゃん。

カジキの煮付け。この日はカジキのいいのが入ったそうな。突きん棒漁でとったカジキ。

仕入れる魚はすべて、一度も冷凍していない活魚。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/reb/20120424/306750/?ST=rebuild&P=2

あー、そんな感じします。身がしっとり。冷凍モノ特有のパサパサ感がない。
一方で変な脂もない。脂が上品で程よい。口に入れると溶けてしまうという脂ノリではないが、噛んだ時に身から溢れ出る程度には脂がある。そのあたりが程よい。
続いてメインのお刺身登場。「こんな刺身は他では食えねえんだから」と大将が出してくれたものがこちら。

どーん! ぴっかぴかのお刺身! これで2人前。驚きの量。
お刺身はどれもひとつひとつが大きく切り分けられ、色がきれい。見た目がきれいなものは、食べてもうまい。
生の本マグロ。生のカジキ。生のタイ。生のヒラメに、そのエンガワ。プリップリのホタテは甘いし、ヤリイカはピンッとした新鮮そのもの。
どれも「……ふーっ、刺身ってこんなにうまいのか」と「刺身ってなんぞや」という刺身哲学の世界に引きずり込まれそうな。魂が抜かれるうまさ。
「こんな刺身は他では食えねえんだから」
うん、そうだ。こりゃ食えん。大将が胸を張るのもやむなし。うまいよ。

そしてカレイの焼き物が来る。
「皮がうまいから。皮まず食べて」
と言うので皮を。パリッパリです。脂がいい方に作用してサクサクです。カレイなのに結構脂ものってます。なんだよこれ。もう酒飲むしかないじゃん。酒ちょうだい、酒。
「刺身はちょっと残すんだよ。最後にご飯だすから。それでどんぶりにして食べるんだよ」
なんですと!! そんなこと言われたら怖くてお刺身食えないじゃん!!
急に弱気になってお刺身に手を出せなくなる。他でちびちび飲む。うまいものが控えているとなると弱気になるのである。やむなしである。

それを見かねてか、いくらをくれた。つまみにしよう。
「これをご飯にのせてどんぶりにしな」
これもどんぶりか! 結局お預けか! うまいけど地獄だな!!
……と思ったらご飯来た。締めよう。えっと、ご飯にいくらのせて、お刺身をザブンと醤油につけて、それをご飯にのせて……できた!

はい、うまいです。そらうまいに決まってますわな。

お椀もおいしゅうございます。生ふのりもうまい。お魚の身もうまい。おダシも魚の骨からとったいいおダシ。文句のつけようもございません。
品数は少ないけど、お刺身ドカン! で確かな満足。今回は食べ物全部大当たり。美味しゅうございました。次は予約しようっと。