(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

問答無用で止める勇気

箱根駅伝なんかもそうだけど、日本人は浪花節が好きだよねえ。個人的には早く止めるべきだったと思うけど。昨日の大阪国際女子マラソンでの福士。

 「急に目の前が真っ暗になった」

このコメントから推測するに、典型的なハンガーノックではないかと。いわゆる低血糖状態。それが視力に影響し、筋肉痙攣につながってしまったのでは。で、こういう状態になってしまうと、レース中の回復は絶望的なんだよね。要は燃料切れなので。走りながら回復させることは不可能。アイドリング状態でしか動けない。であるならばリタイアがベターな選択なんだよね。競技としては成立しない状態なんで。
そして本来それを判断するのは第三者。何故なら、燃料切れを起こしている本人に、燃料切れであることを自覚できる余地はないから。そういうエネルギーもなくなっている状態がハンガーノックなわけでね。体内のエネルギーはブドウ糖をはじめとする糖分であり、血液中の糖分が不足する状態が低血糖である。でもって低血糖になると筋肉が本来の動きをしなくなるから痙攣するし、その筋肉の動きをコントロールする脳のエネルギー源もまた糖分である以上、まともな思考ができるわけない。むしろ脳が動かなくなるため、低血糖状態になると気絶することもある。である以上、そういう状態の人間に「走れるか?」って聞くのは何の意味もないわけ。それがハンガーノックであるかどうかの判断材料になるという意義はあっても、走れるかどうかの意思確認に意味がない。そもそも意思も何もねえという状態であるので。無思考であり無意識であり、ただの本能で動いているだけ。
だから正直言って、あのケースで止めねえ指導者というのは何だかなあと。というのもハンガーノックが起きた場合、指導者には二重の罪がある。

ハンガーノックを起こした責任

そもそもこれ。管理者としてどうなのよと。結局エネルギー不足を起こしたということは、次の理由があるわけです。

  • エネルギーの蓄積不足(食事管理)
  • エネルギーの消費計算(ペースコントロール
  • エネルギーの補給(給水・スペシャルドリンク)

どれだけのエネルギーを溜め込んでいたのか。そしてそのエネルギーが持つだけのペース配分であったのか。また途中でどれだけ補給すれば大丈夫であったのか。この計算がおかしかったから、燃料切れになったわけで、そもそもは指導者の計算ミスなわけですよ。ま、その理由は想定以上のハイペースで序盤突っ込んだことにあるわけですが、しかし先頭というのは、本来そのペースをコントロールできる立場なわけで、これは言い訳にならない。ハイペースについて行ったわけじゃないし。一人旅で自滅しただけ。
しかしこれは競技であり、人間が行う以上、そういうことは稀に起こる。であるならば、ここが問われる。

ハンガーノック後の責任

起きたことは仕方ない。問題は起きたことの危機管理。これが見事なまでにアレでして。となるとコトの前後ともにアレということで、非常に残念な指導体制だなあと思ってならないわけですよ。世間ではこういう完走は美談みたいになりがちだけど、スポーツとしてはナシ。死ぬか生きるかやってんじゃねえんだから。ま、そもそものマラソンは走り終えた後に力尽きたわけで、そう考えりゃマラソンの起源としては正しいがね。でもそんな荒んだマラソンでよろしいのですかねえ。
個人的に調整過程は革新的で、新しい試みと思っていただけに、こういう危機管理の部分が疎かだったのは非常に残念。マラソンは半年準備して、多くても年2戦という風潮が多い中、短い調整、長い距離を走りこまないスピード重視というのは刺激的ではあったんですがねえ。残念。