(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

「できない前提」の男と「できる前提」の女

「こいつとは合わねえなあ」と痛感するのが旅行のとき。旅行ほど人の合う合わないが明確になるものはない。同棲も生活をともにするから、こういうところが出るが、旅行の方が露骨に出る。これほど価値観の違いが明確になるものはない。かくいうタケルンバが前の彼女と別れるきっかけになったのもそばをすする音旅行。「こらダメだ」とお互いに思ったことが理由。多少の違いは問題ないが、決定的に違った。

スケジュール通りに動く?動かない?

タケルンバは旅行のスケジュールを立てるのは好きなのだ。着いたらこうしてああして、あそこで食事して、次にどこそこに移動して云々と。こういう計画を立てるのは好き。あれやこれや調べ物をするのも好きだし、ガイドブックを読むのも好き。ただこれはシミュレーションが好きということで、妄想するのが好きなだけ。そのように動くべきだと思っているわけじゃないんですよね。あくまで想像の産物で。いざ現地に行ったら、スケジュールは変更してナンボ。「予定は未定」と割り切っているし、当初のスケジュールとまるで違うこともある。
ところがうちの前彼女様はそうでなかったのですよ。彼女様は一度スケジュールを決めたら、そのスケジュール通りじゃないとイヤなタイプ。

  • 「予定通りじゃないと、予定に負けた気がしない?」

とは彼女様のセリフ。……そんな大げさですかね。遊びで旅行してるのに、勝ち負けも何もねえでしょ。もっと楽に行きましょうよ。

  • 「これじゃスケジュールを消化できないじゃない」

できなくていいじゃん。別にスケジュールの消化が目標じゃねえんだから。楽しければいいじゃん。旅行で疲れてどうすんのよ。もっと気楽に行こうよ。

  • 「早く起きてよ。7時起床だよ」

眠いんですよ。疲れてるんですよ。どれかパスして休みましょうよ。あと1時間寝させてよ。……予定してた朝飯食えない? じゃ他のところで朝飯食えばいいじゃない。え? 予定と違うからイヤ? じゃ1人で食べて来なさいよ。その間オレは寝てるから。え? 1人で食べるのはイヤ? んなワガママな。あ、聞こえた。はいはい、じゃわかりましたよ。行けばいいんでしょ。え? もういい? ……じゃ、どうすりゃいいねん!
とまあこんな運びになるわけですよ。面倒くさいことになるのですよ。で、こうした揉め事はスケジュールに対する認識の差も大きいようで。

タケルンバ:理想の予定 彼女様:当然の予定

タケルンバにとっては「予定は未定」なのです。そもそも出来ると思っちゃいない。何故なら、スケジュール上の自分は完璧な自分だから。トラブルも起きないし、迷わないし、疲れもしない。そういう完璧な自分。で、スケジュールを立てているのは、旅行の妄想を楽しんでいるところがあるので、そういう理想の自分をイメージしているんですよ。妄想での自分は英語も完璧だし、ときに素敵な地元の女性と出会うのですよ。「あちらのお客様から」みたいなドリンク贈呈。そこからストロベリートーク展開みたいな。
ところが実際はそうは行かない。想定外のトラブルも起きるし、迷うこともあるし、何せ疲れる。現実は不完全であり、スケジュール通りにはいかない。だからこそスケジュールはスケジュールと割り切り、現実は現実と割り切っているんですよ。スケジュールを立てる喜びと、現実の旅行の喜びは別物。現実に合わせて動くべきだと思っているので。妄想は好きだけど、意外とリアリストなんで。だからできなくても気にならない。そういうもんだから。
ところが彼女様にとってのスケジュールは、当然できるものなんですよ。達成することが前提。だから達成できないと不満。「なんでできないの?」になる。また実際の旅行日まで、そのスケジュールが達成できることを妄想しとるようですし。予定が100%消化できることを楽しみにしている。そこから何%かが失われると、旅行の楽しみが少し失われると同じ感覚になるらしい。「できない前提」のタケルンバと、「できる前提」の彼女様。同じ予定を立てるのでもこうした前提の差がありまして、ええ。それで現地で合わなくて大ゲンカになった次第でありますよ。
ただ、今思うと合わせられたなあと。そう思う部分もあります。それはこの前提差を埋める努力。オレは「できない前提」なので、結構ゆるめでスケジュールを組むのですよ。あれもしたい、これもしたい。とりあえず全部入れとけと。できない前提だからこそ、ギュウギュウでもいいわけです。現地でどれか削ればいいんで。
一方彼女は「できる前提」なので、現実的な判断をするわけですよ。スケジュールを決めるときは。やれないことがわかっているものは、最初からスケジュールに入れない。できるものしか組み込まない。移動時間とか体力とかトラブルリスクとか、そういうものを計算に入れておく。こうしたところも正反対。現地ではオレの方が現実的だけど、予定段階では彼女様の方が現実的。
するとどうなるかっていうと、このあたりの自分の適当さ加減も彼女様の怒り原因になって、2倍怒られる。「だったらもっと現実的な予定を組んでよ」と。オレは元々「できない前提」なんで、結構適当にスケジュールを組むわけです。「あれも入れよう、これも入れよう」と。それを彼女様が「できないよ。無理だよ」と言っても「とりあえず入れとこう」と。そう言ってスケジュールに組み込んだ人間が、スケジュールをぶち壊しにするのは何事かと。ワガママはお前だと。そういうお怒りがあるようなのです。今思えば「なるほど」なんだけど、当時はこういう怒りがあるなんて思いもしなかったわけで。前提の違いで怒りの理由も違うのですね。
ま、旅行の際はこういう些細な違いで揉めることがあるので、心の余裕は必須。ケンカするとどんな旅行も台無しだからねえ。Have a good trip!