(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

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口蹄疫の簡単なまとめ

ドサクサに紛れて怪しい言説を振りまく不埒な輩も出てきたので、そろそろ口蹄疫について書いておきますよ。正しい知識と正しい対策があれば、別に恐れることは何もありもはん。

どんな病気?

基本的には偶蹄類に属する動物がかかる病気。蹄がふたつに分かれるヤツ。牛、豚、羊とか。

症状は、発熱と多量のよだれ。あと元気がなくなる。人間で言うと「だるい」ってヤツだと思われる。
あとは口内や舌、蹄に水疱ができる。それが破裂して傷になったり。「口とか蹄に症状がでる疫病=口蹄疫」ってわけ。

ユンケルとは一切関係がない。当たり前だ。

ヤバイ病気なの?

ヤバさの基準による。観点によって変わるため、一概には言えない。

重い病気なの?

重くない。直ちに生死に関わる病気じゃない。子どもの個体の場合、死亡例が多く見られるが、大人の個体の場合、死亡例は少ない。
「死をもたらすか否か?」という観点であるなら、さほどヤバイ病気ではない。

人間にうつるの?

人間への感染例はあまり聞きませんね。「まったくうつらないか?」と問われると、その100%の証明は難しいのでアレだけど、日頃家畜の世話をしている生産者でも、かかった事例を聞かないし、具体的な健康障害の報告例はついぞ聞かない。
口蹄疫ウイルスにはヒトも感染するが、ヒトには口蹄疫ウイルスに対する抵抗力があるので、具体的な健康障害にはつながらず、影響は極めて軽微である」という解釈が正解かな。少なくても一般生活でうつるような代物ではないので安心しておk。

じゃ、何がヤバイの?

感染力がヤバイ。動物に死をもたらす病気ではないし、人間にうつる病気でもなんでもないんだが、動物から動物へと流行が広まり安いので、放置すると影響がえらいことになる。畜産どころじゃなくなってまう。糞便や体液に直接触れたりするのはもちろん、空気感染でうつる可能性もある。
また口蹄疫にかかった動物は、排菌するウイルス量が増えるため、放っておくとよりデンジャラス。また発病しなくても、感染した動物(人間含む)はウイルス保菌者となるため、新たな感染源になることがあります。発病するのは基本的に偶蹄類だけなんだけど、ウイルスをばらまくのは偶蹄類に限らないってわけね。

対策は?

疑わしきはすべて殺す。治療という選択肢はありません。感染力が高いため、治療している間に、他の動物にうつしてしまう可能性が高いため、迅速に殺処分というのが正しい方法。
そのためワクチン投与という選択肢もとりません。ワクチンで下手に治してしまうと、ワクチンの効果によって保菌していたウイルスが消滅したのか、発病状態のみが抑制されたのかの見極めができず、二次被害拡大の種になってしまうから。対外的にはワクチンを使って口蹄疫を防いだ場合、口蹄疫ウイルスがない国=清浄国とはみなされず、生肉の輸入を停止するのが普通です。生肉輸出ができなってしまうわけ。
で、こうなると和牛輸出国の日本としては困るわけですね。「和牛は安心です」と言えなくなるから。生肉の状態で輸出できなくなるから。

現に日本はこれらの国からの生肉輸入を認めていません。これらの国が清浄国と言えないと判断されるため。日本もこのリストの仲間入りをしないためにも、疑わしきは殺処分にしているわけですね。
また殺処分した動物は、その動物がいた場所に埋めるのが基本です。何故なら死体からの二次感染を避けるため。感染した個体が出た場合、その場所にいた家畜を根こそぎ処分し、死体を埋め、そこ場所に動物がいなかった状態に戻し、消毒を行ってその地域からの二次被害を防ぎます。野生動物などが感染し、その動物の移動に伴って被害拡大ってケースが怖いからね。

現在宮崎で起きている口蹄疫について

やんや言われておりますが、対策としてはまずまず。そんな悪手はやっとりません。防疫の基本通りであります。関係者GJであります。
殺処分頭数が多いことについても致し方ありません。

宮崎県で発生している家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」問題で、同県は10日、新たに同県川南町の11農家の牛と豚計23頭に感染の疑いがあると発表した。これで、感染(疑い例も含む)が確認されたのは67施設で、殺処分される牛と豚は計7万6852頭となった。同町内では、農家が飼育する牛と豚の約5割が殺処分されることになった。

http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20100511-OYS1T00162.htm

頭数も割合も多く、とんでもないことになっておりますが、それだけ忠実に職務を遂行しているということです。この病気は疑わしい個体が1頭でも生き残るとまずい。やるなら徹底的に。根こそぎやらないと効果がない。例外をつくっちゃならんのですよ。
「うちのハナコだけは見逃してくんろ」
はできないのですよ。牧場Aで口蹄疫の個体が見つかったら、牧場Aにいた家畜は全部殺処分。これが基本なので。かわいそうな話なんだけどさ。

今後恐れるべきこと

感染地域の拡大が怖いです。感染経路は次の3つが考えられます。

生産関連車両の移動

トラックに付着したウイルスが云々のパターン。

ま、対策はとってるし、可能性は低いかな。

野生動物の移動

宮崎県周辺に拡大するとしたらこのパターン。感染した野生動物が移動し、その移動先で新たな感染個体が出現する。
これを防ぐには、既に口蹄疫が発生した場所の殺処分・消毒の徹底しかありまへん。

偏西風

宮崎県に隣接した場所ではなく、飛び地的に感染が広がった場合は、空気感染を疑う必要があります。ウイルスを含んだ飛沫、エアロゾルが風に乗って飛散することは十分考えられるので。
その場合、日本固有の理由として、偏西風の存在を考慮に入れておく必要があります。西から風が吹くということは、宮崎県から見て東側には飛散しやすいわけですな。東へ東へと日本は拡散しやすい。
これを逆に解釈すると、宮崎と地続きではない西の地域に拡散した場合(例えば長崎とか)、宮崎の口蹄疫が理由とは限らないということです。中国や朝鮮半島からの飛散ということも考慮に入れる必要があります。
こうした感染拡大がない限りは恐れる必要はありません。口蹄疫で恐れるべきは殺処分の頭数ではありません。感染地域の拡大です。殺処分の頭数は、関係者のGJの現れで、日本の畜産業を守るための「泣いて馬謖を斬る」と思っていただければ幸いでございます。

一番怖いのはデマ

ともあれ、口蹄疫は人間の生活上問題を起こす病気ではありませんし、肉を食べて感染するようなものでもありません。間違った情報によって不安が拡大し、パニックが起きる方がよっぽど問題であります。
安心して肉を楽しみましょう。肉、おいしいです。