(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

言い訳はさらに大きな問題を呼び起こす

言い訳は時に便利で、目の前の問題を一時的に片付けることができる。が、同時にもっと大きな問題を引き起こすということは、あまり意識されていないように思える。
例えば、最近おなじみの偽装問題。「知りませんでした」「気付きませんでした」という言い訳をする。
しかし、そうなると経営陣としては「社内を管理できていない」という経営者としての能力問題になってくるし、これが料理人であれば「食材を見抜く目がない」「料理人としてどうなの?」という話になってくる。
組織ぐるみという問題はかわすことができるが、その一方で、関わった人間の能力不足という問題が出てくる。

報道陣から「料理長は普通の肉と加工肉の区別がつかないのか」と質問されると、北田社長は「弁解の余地はない。甘い会社と言われても仕方ない」とうなだれた。

【食材偽装表示】修学旅行生にブラジル産を大和肉鶏として提供 加工肉を出したホテル社長は「返金しない」+(2/2ページ) - MSN産経ニュース

料理長は肉の見分けができない人間であり、彼を雇っていた会社はそういう能力の人間を雇っていたということになり、人事担当者の能力にも疑問符がつくし、当然に経営者もどうよ、というお話になる。
同じような話が楽天でもあった。楽天イーグルスの日本一記念セールでのお話。

出店している業者の一部が通常価格を引き上げて大幅に割引しているように見せかけていたなどの指摘が出ている

楽天での優勝セールで不当表示か 一部業者、大幅割引見せ掛け - 47NEWS(よんななニュース)

これに関する言い訳がこちら。

三木谷社長は、審査を受けず、便乗した形でセールを行っていた店舗があったとして、大幅に割引しているように見せるように行われた通常価格の引き上げは、こうした店舗によるものだと釈明した。

FNNニュース: 楽天の記念セールで不適切表示か

これも当初の楽天という会社ぐるみという問題から、そうではないよという言い訳をしたことにより、今度は「楽天の審査体制がザル」というまったく別の問題が発生している。
その結果、この問題を使って甘利明経済再生担当相に突っ込まれる。

楽天優勝セールでもネットに不届きものがいて、利用者が迷惑した」

「だから規制必要」と甘利担当相 楽天セール問題を持ち出し三木谷氏にチクリ - MSN産経ニュース

「今回の政府の考えは、ネット社会を否定するものではない。安全性に考慮することは、むしろネット社会の発展に資するものだ」

「だから規制必要」と甘利担当相 楽天セール問題を持ち出し三木谷氏にチクリ - MSN産経ニュース

あめま。
当初の会社ぐるみという問題はかわしたものの、楽天の管理が甘いという別の問題が発生したことで、今度は「そんな会社に国民の健康に関わる医薬品の販売なんて任せられないね」という話になる。
こうなってくると事態は厳しくて、「いやいや、管理はちゃんとやっているんですよ」と反論しようにも、管理ができてないから一部の店舗が暴走したわけで、この矛盾は否定出来ない。
一方、当初の指摘通り「いやいや、実は管理してました。あれは会社としての利益誘導策だったんです」ということにすると、今度は「ああいうセールを会社ぐるみでやるのは問題ですよね」「しかも嘘をつきましたよね。一度会社ぐるみを否定しながら、医薬品の話が出て手のひら返しってどういうことですか」となり、ますますつらい。
結局のところ、言い訳というのは問題をゼロにする効果というのはなくて、問題のすり替え効果しかない。会社の責任を個人に。個人の責任を組織に。そういう効果にしか過ぎなくて、一気に問題を解決するような冴えた発想とは言いがたい。
しかしそれでもなお言い訳をしてしまうのは、とりあえず問題をそらせるのと、口だけでできるというその手軽さにある。しかしながら、手軽にできるからこそ、その言い訳がはらむ他の問題を当事者が気付きにくい。小さな問題から大きな問題に話をすり替えてしまう。短期的な話から長期的な話にしてしまう。そういう恐ろしさ、危険性に理解が及ばない。
論理的ではない言い訳をすると、論理的な反論によって、より窮地に追い込まれやすくなる。言い訳は自らを追い詰める材料となる。
簡単にできるからこそ、やってはいけない。