「本当に温室効果ガスを25%削減することになったらどうするんだろう」と思うことがある。できんのかなと。やる気あんのかなと。
言い出したわりに、行動がまるでないし。
米中などの削減努力を前提に「90年比で25%」という20年までの日本の温室効果ガスの削減目標を国際的に公約し、排出量取引導入を明言するなど国内対策を加速する姿勢を示した。
http://www.asahi.com/politics/update/0922/TKY200909220249.html
米中が動くこと前提だけど、仮に動いちゃったら日本の方が困ることにならんかね。「動かねえ」という決めうちだとしても、ちょっとなあ。まだ何もしとらんもんね。
25%って数字の重みを考えると、小手先じゃ到底実現できん数字だと思うのよ。
こちらの統計によると、日本の温室効果ガスの排出量はこんな感じ。
表1 日本の温室効果排出量(単位は100万トン、CO2換算)
1990 | 2000 | 2004 | 2005 |
---|---|---|---|
1,272.0 | 1,347.6 | 1,357.0 | 1,359.9 |
2005年は1990年に対し、7%増。この増えた7%を帳消しにするどころか、さらに18%のマイナスをせよと。
……無理じゃね? 単純に考えて無理だし、やるならやるで、もう動いていないとダメそうだし、やり方とかシステムを根本的に考え直さないと、到底実現できそうにない。
そもそも、テクノロジーでなんちゃらとか、技術革新でなんちゃらなんてのは、絵に描いた餅だと思うわけね。それでできるなら、もうある程度いい感じになっているはずだし。1990年より2000年時点での技術レベルの方が上なんだから、どうにかなってもおかしくないものの、実際は温室効果ガスの排出量は増えているわけだし、2005年でもそう。
それができねえってことは、技術とかの発展レベルより、消費による温室効果ガスの増加の方が大きいってことだわな。だとすると、現在の消費スタイルとかそういうのを見直さないと、どうにもならねえんじゃね? 現状維持とか微減くらいなら技術革新で何とかならんことはないと思うけど、25%なんて到底無理っしょ。
だとすると、例えば発電方式を火力から変える。火力から原子力って流れがあるのが自然じゃないかね。原子力発電は温室効果ガスが出ないということになってるし。発電コストも比較的安めだし*1。物理的に発電量を25%減らせないんだから、火力発電より温室効果ガスの排出量を減らせる方法で発電するしかないだろうなあ。しかもコストが高いだけでは国が貧しくなるから、程よく安い方法で。水力もいいんだけど、結構高いし。
あるいはさあ、運輸の話で言うとモーダルシフトだわな。
より温室効果ガスを出さない手段で移動する。
(環境:国土交通省における地球温暖化対策について【概要】 - 国土交通省 より)
人の移動に関しては、車や飛行機よりはバス、電車。荷物の移動も、車じゃなくて船、電車。
ところが、現実の話としては高速道路代が値下げされて、自家用車での移動花盛り。高速道路が無料化されたら、さらにドン!
まあ、そうだわね。
ここからデータを引っ張ってみると、こんな感じ。
表2 高速道路と一般有料道路の合計月別通行台数(単位:台/日)
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | |
---|---|---|---|---|---|---|
2008年 | 2,413,056 | 2,401,804 | 2,339,914 | 2,471,329 | 2,562,707 | 2,452,701 |
2009年 | 2,385,127 | 2,453,170 | 2,423,825 | 2,556,854 | 2,766,193 | 2,628,850 |
実際に通行台数も増えていると。
こういう状態の中で、25%削減をやろうとなると、ある種の強引なやり方が必要になるよなあ。「お前ら、車乗るな」と。
端的に言えば課税だし、料金値上げ。車に乗るとデメリットがあり、車より温室効果ガスを排出しない方法での移動にはメリットがある。そうするしかないわなあ。みんながみんな車乗るよりも、ある程度まとまった人数でバス移動してもらった方が、まだマシだし、電車に乗ってもらうとますますありがたやと。
って考えていくと、羽田ハブ空港化とかの話も、環境シフトが進んでいくと消し飛ぶ話。本気で温室効果ガスを減らしに行く場合、どうやったって鉄道への傾斜を進めなきゃならん。車の割合を減らさにゃならん。飛行機に頼りすぎるわけにもいかん。
となると、必要なのはハブ空港よりもハブ駅ってことになるような気がするのよね。海外向けは空路しか選択肢が基本的にないので、どうしようもないが(日本は島国だからのう)、国内的には新幹線で動脈的な物流のメインルートを確保しつつ、地域の中心駅に人と物を集める。ハブ&スポークは空路の話にとどまらず、本当は陸路にこそ必要な考えだと思うのよな。
ところが現実はそういう動きはあんまりなくて、相変わらず車。いや、まあ車好きだし、別にいいんだけど、本気で温室効果ガスを減らすつもりなら、ちょっとやばいんじゃないかなあ。見えているものが、車が増える政策ばっかだし。車の利用促進はいいけど、それと環境対策は矛盾するからのう。もちろん、短期的には矛盾しないこともありうるし、それこそ技術革新でカバーできるものもあるけど、25%という大きな数字の前では、あまりにも空虚な話になりそうで。
一体どうするんでしょうね。どっかで腹決めてモーダルシフトに思いっきり舵を切るか、「環境関係ねえ!」で開き直るかのどっちかだと思うんですけど。妙案はいきなり出てこないだろうしなあ。天から革命的な技術が降ってくるわけでもなし。難しいねえ。