国と乗り物を越えて
日本の都市交通システムはイケてないぞと。日本人はいいと思っているが、実は遅れてんよと書いたわけですが。
一方でこういうニュースもあります。国土交通省が北京・ソウルで使えるIC乗車券を配布予定。
北京五輪をきっかけに中国や韓国との行き来をより便利にしようと、国土交通省は今夏、北京とソウルの地下鉄やバスで利用できるIC乗車券各1000枚(予定)を購入し、日本から現地に向かう旅行者に無料で配る方針を固めた。
http://www.asahi.com/life/update/0322/TKY200803220171.html
「北京五輪なのに、何故韓国が絡むの?」と思ったあなた。実はこの謎解きは簡単。非接触型ICカードは2種類あります。それはSuicaなどでおなじみのSONYのFeliCaと、フィリップスのMifare。で、中国と韓国はこのMifareを使っているんですねえ。Mifareという共通項がある。
そして国土交通省はこの両者を互換化するIC乗車券をつくろうとしているわけですよ。
同省は、アジアの国・地域で相互に利用できるIC乗車券の開発を推進中。現地で切符を買わずに、到着後すぐに電車やバスに乗れる便利さを実感してもらい、開発に弾みをつけたい考えだ。
http://www.asahi.com/life/update/0322/TKY200803220171.html
これが実現すると2つのシームレスが実現する。1つ目は国。アジア全域で1枚でOKとなりゃ、アジア全体にメリットがある。旅行者もビジネスマンも実に楽。料金表を見て、いちいち切符を買わなくても、ピッでいいわけだからねえ。日本でチャージしていけばいいわけだしさ。
2つ目は交通機関。香港なんかは世界でもいちはやく「オクトパス(八達通)」で鉄道・地下鉄・バス・トラム・フェリーをシームレスに使えるようにしている。これが便利なのはSuicaとPasmo(関西ではICOCAとPiTaPa)が互換化され、JRと私鉄の乗換えが楽になったことで日本人も実感があるはず。バスにまで対応が広がったときも楽になったと思ったでしょ。
それを香港はSONYのFeliCaを使って日本でSuicaができるはるか前に実現した。日本の企業の技術を、日本より先に導入して便利なシステムを作り上げた。これをアジア全域に広げると、あらゆる国の交通機関が1枚でいい。都バスも、近鉄も、バンコクのチャオプラヤ川のフェリーも、香港のトラムも、北京の地下鉄も全部1枚。国と交通機関のシームレス。
しかもこれは難しくない。少なくてもFelicaを使っている国同士はできる。SuicaとPasmoが大丈夫なら、同じFeliCaのオクトパスとも大丈夫なはず。同じSONYの技術だからねえ。できないわけない。
あとはFeliCaとMifareだけども、既に技術はある。
リアライズ・モバイル・コミュニケーションズは3月4日、ソニーとNXPセミコンダクターズが共同開発した近距離無線通信規格「Near Field Communication(NFC) 」を活用し、モバイルFeliCa、カードFeliCa、MIFARE、ICタグなど、さまざまな形状、規格のICカードを、1つのリーダ/ライター、POSなどで処理が可能な会員管理システムの販売開始を発表した。
リアライズ・モバイル、NFCを活用した会員管理システムを開発──FeliCaとMIFAREに対応 - ITmedia Mobile
技術はある。利便性があることもわかっている。あとは実現するかどうか。もうそういう段階。である以上は踏み出して欲しいねえ。是非やって欲しい。
ただその前に国内をなんとかする必要があるな。
SuicaなんかもJRの会社間で、実は互換性がないみたいなバカみたいなことしてねえで、さっさと揃えりゃいいのに。SuicaとICOCAは大丈夫だけど、関西でPASMOは使えないし、関東でPiTaPaは使えないとか。あまりにも不毛な話でねえ。同じSONYのFeliCaカードを使っているのに、何故システムを合わせられないのか。同じ商品規格を使っているのにねえ。こういうところが日本が遅れている理由なんだよねえ。
悲しいくらいの日本の遅れ - (旧姓)タケルンバ卿日記
こういう問題。アジアでどうこう言う前に、まずは日本で揃えんと。調べてみたらこんなにあるし。
少なくてもJRだけは揃えて欲しいやね。JR東海のTOICAとSuica・ICOCAが3月29日から相互利用できるようだけど、エリアをまたがって利用できんしさ。
2008年3月29日からSuica・ICOCAとの相互利用が開始され、新潟・仙台から岡山・広島に至る本州JR3社の各ICカードエリアで利用できるようになる予定である。ただしSuica・TOICA・ICOCAの各エリア内で完結した利用に限られ、各エリア間をまたがって利用することはできない。
TOICA - Wikipedia
例えばTOICAエリアの駅でTOICAで入場し、SuicaエリアやICOCAエリアの駅で出場することはできない。同様にSuicaエリアやICOCAエリアの駅からTOICAで入場し、TOICAエリアの駅で出場することもできない(下記の高山線・太多線の特例を除き、「使用可能なエリア」の図における灰色の線の部分を乗車すると出場不可となる)。
TOICAご利用可能エリア内で完結するご乗車の場合に限りご利用いただけます。
http://toica.jr-central.co.jp/others/notes/index.html
ご利用可能エリア内とエリア外をまたがってご乗車いただく場合や、新幹線に乗り継がれる場合は、で入場せず、あらかじめ全乗車区間のきっぷをお買い求めください。
http://toica.jr-central.co.jp/others/notes/index.html
他の鉄道会社ではご利用いただけません。
http://toica.jr-central.co.jp/others/notes/index.html
もうアホかと。「なんのためのグループ会社やねん」という感じ。
海外はともかく、まずは国内から。電子マネーの統合までは難しいけど、まずはJR系を完全互換させて、その次はJRと私鉄。次にバス。こんな感じで全国シームレスを実現して欲しい。SuicaとPASMOが行き来できて、Suicaが関西で使えないって、論理的におかしいもの。関東ではイコールなのに、関西ではイコールじゃないってねえ。イコールにできるのに、しないだけだもんな。少なくても統合可能であることは既に証明されているわけで。
まずはJR系カードの互換化を急がんと。あんまり遅いと主導権を中国にとられかねんぞ。向こうは香港を持っているんだから。ここは是非急ぎでひとつ。
今日の国王は良き君主でも、もし悪しき君主が現れたらどうするのだ?
ブータンの王制からの民主制移行がいよいよ大詰め。
ヒマラヤ(Himalaya)山脈の王国ブータンで24日、絶対君主制から立憲君主制への移行の総仕上げとなる初の国民議会(下院)選挙が行われる。1世紀近くに及んだワンチュク(Wangchuck)王室の統治が終わりを告げ、民主化が実現する。
ブータン総選挙、国王主導の民主化の総仕上げ 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News
世界でも珍しい権力を持った側からの民主制移行。革命によらず、軍事力によらず、国民からの民主化運動にもよらない非常に稀有な例。
ブータンは昨年「首長の多選禁止」をテーマにしたディベートのジャッジをしたときに縁がありまして。
多選禁止って「行政のトップが長いことやると腐敗すっから」というのがきっかけで、「権力は腐敗する」というのが根底にあるのだけれど、ブータンは国王自ら「オレ、国王辞めるわ」と昨年譲位した上に、絶対君主制から立憲君主制にモデルチェンジ中という国である。市長とか知事どころじゃなくて、国王自らである。世間一般では権力にしがみつく人が多いわけで、非常に面白い。ブータン恐るべし。
インチキ英語国際会議 - (旧姓)タケルンバ卿日記
多選の弊害、権力の弊害はジョン・アクトン卿の「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対に腐敗する」の言葉に尽きますよ。その権力をわざわざ自ら手放すという決断。ブータンは実に聡明な国王に恵まれましたね。
「今日の国王は良き君主でも、もし悪しき君主が現れたらどうするのだ?」と人々を諭したという。
ブータン総選挙、国王主導の民主化の総仕上げ 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News
本質ズバリ過ぎて吹いた。ブータン、やっぱり恐るべし。
熊本県から目が離せない
おお、蒲島先生。いつのまに出馬を。しかも大差で勝ってるし。
- http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080323-OYT1T00437.htm
- http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080324-OYT1T00138.htm
圧勝。さすが選挙研究の第一人者。伊達に今まで人が出ていた選挙を研究しとらん。自分にそのノウハウを活かしまたか。こりゃどうも。
ま、日本の場合、政治学者が政治家に転身して、政治の最前線に立つ例が少ないので、今後の活躍を願うばかり。長年の知見を役立てていただきたいし、またそうでないと困る。少なくても日本の政治学は、ひとりの偉大な学者を一時的にせよ失うわけだからねえ。その学問的損失を、ご自身のご活躍で埋め合わせて欲しいと願うでござるよ。
ご活躍、お祈り申し上げます。
字がうまいヤツはできる!?
個人的な思い込み。
「字がうまいヤツはできる」
誤解してもらいたくないんだけど、「字がヘタなヤツはできねえ」とは思ってないからね。あくまで「字がうまいヤツはできる」。
まあ根拠も何もない思い込みで、イメージによるところも多いんだけど、字がうまいと他の何かもうまいことが多い気がしているのですよ。長所が長所を呼ぶっていうのかね。不思議とそういう傾向を感じる。
量を書いている
何かがうまい人は、その背景に量をこなしているもんです。量の裏付けがあって質がある。字がうまい人は、大抵字をたくさん書いている。そういう過去がある。経験がある。あるいは今もそうである。経験量が質の向上に変異するまでに書いているから、字がうまくなる。
いきなり字がうまい人なんていませんしね。字にはそういう天才性はほとんど発揮されない。字がうまい人でも、しばらく書いてないとヘタになるくらいだし。日々の繰り返しや経験、慣れによって字はうまくなるし、維持できる。うまい字を見ると、その人のそうした過去の蓄積に思いをはせてしまうのですよ。「おお、この人はこれまでたくさんの時間を書くことに費やしてきたんだなあ」と。
そういう地道な繰り返しがあるので、比較的我慢強いタイプが多い気がしてます。悪い結果が出ても粘り強く取り組むというかね。そんなイメージ。
平面認識力がある
字がうまい人ってデッサン力があると思ってます。字の美しい形やバランスを認識し、それをものにしている。だから書ける。再現できる。うまい字を書くには、うまい字をわかってないと書けない。それを認識できているんです。平面認識に長ける。空間認識まではわからんけど、平面認識とは相関があるような気がします。
頭と体が一致している
そしてそれを実現するには頭と体が一致してなくちゃダメ。認識しているうまい字のイメージと、それを実際に書く手の動き。それが一致してこそうまい字が書ける。どっちか一方ではできない。イメージを実現するに足る能力を持っている。
量を書くって、これを一致させるトレーニングであるんだよね。イメージと結果をすり合わせていく作業。手本を見て書いても最初はうまく書けない。目で見たものと、手で書くものが一致しない。しかしそこで諦めず量をこなしたり、見本の上に紙を敷き、なぞって練習したりしていくうちに、少しずつイメージ通りのものが書けるようになる。イメージと結果が一致していく。「心技体」とはよく言ったもんですよ。
何かに長ければ何かに秀でる
「字がうまい」というところからこうした話を書きましたが、何も字に限ったことじゃないんだよね。なにかできる人は、その他のこともできることが多いんですよ。何かに長ければ何かに秀でる。
ピアノなんかも楽譜と現実の演奏を一致させる作業ですしね。楽譜がある。弾くべきものは決まっている。しかし初見ではなかなか弾けるものではない。何回か繰り返し弾いてみて、指に馴染ませる。間違いを修正していく。楽譜と現実のズレを調整していく。そうやって演奏はできるわけですよね。
で、こうしたプロセスが身についている人は、他のことに関しても同じことができる。我慢強いし、調整能力がある。そして何より諦めない。自分ができることを知っている。できるようになることも知っている。そういう面がオレにこういう思い込みをさせているのかなあと。そう思う次第。
まあ中々実がつき花開くまでには時間がかかるし、大変なんですがねえ。手っ取り早く字がうまくなりたいわけで。過程を否定すると結果を得られないことはよくわかってはいるんだけどねえ。結果欲にはあらがえません。だって、楽したいんだもん。
若者は使うために貯金する
本当に旅行離れなのかねえ。
1位の海外旅行(20・4%)に次いで、貯金(17・3%)が2位に入り、3位の国内旅行(12・5%)を大幅に上回った。
http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_08032107.cfm
そうですか、そうですか。貯金する人が増えると旅行離れですか。
これを受けて早速こちらでも話題になってます。
ま、この盛り上がりはこの件と展開が一緒でして。
貯金や節約をクサす動きと言いますかね。そこまでして金使わせたい?
ところがこれ、他のデータを含めて考えると、決して旅行離れとは言えないのよね。これをご覧あれ。
冒頭のアンケート同様、これも20代に対して行った調査。この中で「貯蓄をする目的」を聞いているのだけれど、複数回答のうち2番手が旅行資金なのよね。「いざという時のため」に次ぐ2位。
2008年 若者の生活意識調査|マクロミル
- いざという時のため 65.1%
- 旅行資金 28.3%
- 病気や事故の備え 27.1%
- 老後の蓄え 23.4%
- 貯金が楽しい・好き 22.3%
- 結婚資金 21.9%
- 住宅購入のため 17.5%
- 子供の教育費 15.6%
- 自動車購入のため 12.3%
- 起業のため 5.2%
- 海外留学のため 5.2%
- とくに目的はない 9.3%
- その他 3.0%
ということは、とりあえず貯金したとしても、それは旅行に戻るんですよ。貯金してもいつか使われる。その使い道は旅行であることが多いと。
それを裏付けるように同調査の「2007年にお金をかけたもの」では、国内旅行は外食に次ぐ2位。「今後(も)積極的にお金をかけたいもの」でも国内旅行は貯金に次ぐ2位。決して若者は消費意欲がないのではなくて、いざという時のためにまず貯金する。そして大丈夫だとなったら旅行に使う。こういうことを示しているんじゃないですかね。旅行離れじゃねえですよ。お金が入ったらとりあえず貯金するってだけでしょ。慎重なだけだよ。
国内の観光旅行に年1回以上出かけている人は男女とも約8割に上った。
http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_08032107.cfm
8割行ってんじゃん。全然離れてないじゃん。それなのにこれ以上旅行さそうというのはちと太いな。広告代理店乙。
旧世代より新世代の方が良くなるただ一つの条件
「豊かさ」とは「多様性」であり「選択肢」が多いこと。
金を手に入れる方法も、金で手に入れられるものも、どちらも昨日よりも今日、今日よりも明日の方が多いのだ。
404 Blog Not Found:旧世代より新世代の方がいいと思えるただ一つの理由
オレが未来に対して常にポジティブなのもこれが理由なんですよ。過去よりも現在がいいし、現在よりも未来がいい。それは何かしらの発展があり、何かしらの集積がある。時が進めば進むほど、その発展を享受できるし、集積されたものを使うことができる。もちろんそれを享受しなくてもいいし、使わなくてもいい。とにかく、選択肢は増える。選ぶことができる。それは豊かであると言ってもいいんじゃないか。
ただ、そのためには自由でなくちゃダメ。選択できる状況は自由の賜物。自由だから選べる。選べるから多様になる。オレが自由主義にこだわるのはこれが理由です。選べないとどうにもならない。選べなければ選択肢が増えるはずもない。豊かさの前提は自由にある。
規制がダメであるのも同様。規制があると過去の発展を享受できないし、過去の蓄積を使えない。現在が時の流れによって過去になっていくことで、現在の人間はその選択肢を広げることができる。けれども、規制によってある選択肢を選べなくなると、その部分において過去と現在が断絶される。そのノウハウを使えない。現在に役立てることができない。時の連続性が失われてしまい、過去を活かせない未来になる。そこに明るい展望を見出すのは、如何にバカポジティブのオレでもできん相談なわけですよ。現在よりも未来がいいと言えなくなっちゃうからさ。
そういう意味で、「旧世代より新世代の方がいいと思えるただ一つの理由」の成立条件は自由であること。自由であるから多様であり、選択肢があり、豊かであり、過去より未来が良くなる。昔より自由が狭まらない以上は、時が経過した分、過去より現在の方がいい。今ある物はすべて過去となり、今を生きる人は過去を使える立場にあるのだから。