(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

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食品の安全問題が中国のターンになる日

今、日本で起きている食料問題は「入」ばかり。食料の安定的な確保とか、如何に安値で買い付けるかとか、安全性を高めるにはどうするかなど。これは全て「入」の問題なのですよ。日本に食料を入れることの問題で「in」の話。中国の食料に関する話はそのいい例で、結局は水際対策の話になり、検疫体制の話になったりする。発想が全て「入」であり「in」。
ところが、今後は「出」の問題になるね。「out」の問題。安全性の話で言えば、これまでは「如何に安全な食料を輸入するか」ばかり問題になっているわけですが、今後は「如何に安全な食料を輸出するか」になる。この問題はあまり注目されていないし、重要視されていないけども、時が経つにつれて大きな問題になっていく。それはこうした事情があるから。

日本産ブランドの強さ

「Made in Japan」は工業製品に限らんのです。今や農産物や海産物でも「日本産」はブランドになりつつある。
例えば海産物における北海道ブランド。お刺身でも乾物でも、北海道とつくだけでちょっと上がる。北海道産が味と安全の品質保証になっている面がある。あるいは牛肉における松阪牛、神戸牛。高級牛としての名声を確立している。ロサンゼルス・レイカーズコービー・ブライアントの「コービー(Kobe)」が神戸牛に由来するというのは有名な話だけども、柔らかくて甘みのある肉質は他に代わりがないと人気。あるいは果物。甘くておいしいと日本の果物は人気がある。特に桃、りんご、ぶどう、いちごは人気で、高くても売れるし、高いものから売れる。中国圏ではお祝いごとに桃は欠かせないのだけれど、そこに日本産の桃が大活躍している。
こうした結果、次のことが起こりうる。

日本が日本産偽装をする

従来は海外がニセ日本産を装っていたわけですよ。ニセソニー、ニセパナソニック、ニセシャープ。それは海外にも生産施設はあるが、日本産ブランドまでの商品価値がなかったからやっていた。日本より安く作れるが、日本ほど高く売れない。安いものを高く売るには、高いブランド価値のあるものとして売るに限ると。だから日本産として売っていた。
ところが農産物や海産物は偽装したくても偽装できない。農産物にしても海産物にしても、日本の気候風土があってこそ獲れるものだし、それなりのノウハウがあるのでマネできない。またこれは逆説的な話だけども、日本でしか獲れないものだからこそ、彼らは買うわけですよ。自国にない、獲れない、作れない。だから買う。高くても買う。
となれば、この構図を利用できるのは、他ならぬ同胞、日本人だけなのですよ。裏切るとしたら身内。身内の強みを生かして商売する輩が出現する可能性が高い。
現に日本国内でこういう話はごまんとある。いわゆる産地偽装。お米を魚沼産と言ってみる。本当は茨城産だったりする。これは同じお米でも、魚沼産と言うことで高くなるから、魚沼産にしとくわけです。見た目一緒。でも産地を偽るだけでブランド価値が付く。あるいはニセ関アジ・関サバ。大分の佐賀関で獲れたものだけが関アジ・関サバであり、高値でやり取りされるわけですが、その周辺の漁港で獲れたものをニセ関アジ・関サバとして出荷されるケースは枚挙にいとまがない。これも関ブランドが付く付かないで値が大きく違うから。こうした話は日本国内でいくらでもあるわけですが、これを国内向けにしかやらないとは到底言えない。騙せるもんならと、海外向けに偽装するケースがあって当たり前。むしろ無いのは不自然でないかい? どっかのノーブランドのさくらんぼを「山形の佐藤錦です」だとか、微妙和牛を「神戸牛です」とか、養殖のブリを「氷見の寒ブリです」だとかしてないかね。
でだ。問題なのは、これがバレたら日本が相当なダメージを負うってこと。「危ないから中国産はイヤ」と日本人がひとくくりに判断しているように、「おいしいから日本産」「安全だから日本産」と思われている。その信頼が偽装発覚で一気に崩れるリスクがある。今までは日本が海外(ほとんど中国)に対して禁輸やらなんやらしてたわけですが、これが逆転する可能性がある。日本産は産地が不明確で信用ならねえから輸入はまかりならんと言われるケースが出てくる。
特に恐いのは北京オリンピック終了後。オリンピックが終わるまでは中国は大人しくしているけども、終わってしまえば関係ナシ。食品の安全問題が一気に中国のターンになる可能性がある。これまでの「中国なにやってんだ」が一気に「日本なにやってんだ」。そして「日本は産地を騙すひどい国」「日本の食べ物は危ない」みたいな話になったら。……中国・台湾・香港はどこも日本の高級農産物・海産物を輸入しておりますのでね。ここらににらまれると相当キツイ。
マジメな農家や漁協がじわじわと着実に輸出を増やしている中、少しずつ「出」のリスクが大きくなっているという現実。そしてそれを脅かしているのは「獅子身中の虫」。第二のミートホープとか吉兆が、海外向けに行われている可能性がありますよ。中国をバカにできるのは今だけよ。