(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

これはあちこちで揉めるぞ

竹中工務店に61億追徴課税というニュース。

ううむ、これはどうなのかね。これは揉めるケースだぞ。簿価では1株500円の竹中工務店株を、1株4000円で持ち株会から購入した。その差額3500円は実質的な配当、「みなし配当」だというわけなんだけど、これを「みなし配当」というのは問題ないかねえ。

株式の価格はどうやって決まるのか

まずこれについて考えて見ましょうね。株式の価格はどうやって決まるのか。
資本金1000万円の会社をつくるとします。発行する株式は1000株です。となると次のようになります。

  • 1000万円÷1000株=10000円

で、1年後この会社は100万円の利益を出したとします。総資産額は最初の1000万円から1100万円になりました。するとこうなります。

  • 1100万円÷1000株=11000円

この式はえらく単純にしてますが、簡単に説明するとこうなります。で、市場で取引されている株も、基本的にはこういう構造で値がつきます。「向こう10年間の利益は確実だ」であれば、向こう10年間の利益を含めた株価になります。例えば資本金1000万円で1000株の会社が、10%ずつ10年間成長すると、こういうことになります。

  • (1000万円+100万円+110万円+121万円+133万円+146万円+161万円+177万円+194万円+214万円+235万円)÷1000株=25910円 ※四捨五入してるので、細かく計算すると違うよ

また「この先どうなるかわからんぞ」となれば、未来の利益は含まれない。現状の価値を元に決まる。逆に「これからスゲエ勢いで伸びるぞ」となれば、現状の価値を無視したエライ価格になると。そういうことです。これが基本ね。

竹中工務店の株はいくら?

じゃ竹中工務店の株がいくらくらいなのか計算してみますか。竹中工務店のサイトで決算書を公開してます。

これ見ると、資産・負債・資本は次のようになっとります。

  • 資産 1兆1153億円
  • 負債   7678億円
  • 資本   3474億円

スゲエな、1兆円も資産あんのか。それはさておき、竹中工務店には3474億円の資本がある。資産から負債を引くとこの額になるわけで、この額が竹中工務店の価値と考えることができるわけですな。
でもって、竹中工務店の資本金は500億円。発行株数は1億株。元々の1株あたりの価格は500円です。はい、ここで500円って数字が出てきましたね。「みなし課税」と指摘した根拠の500円という数字はこれね。ついでにこの決算期の1株あたりの価格を出してみますか。

  • 3474億円÷1億株=3474円

帳簿上だと500円の価値だけど、実際は3474円くらいの価値があるってことがこれでわかるわけ。で、実際は竹中工務店というブランド価値、信用、技術力など、帳簿に出てこない価値もあるので、4000円という購入価格は「時価」という観点で考えれば実は無謀でも何でもないわけね。500円上乗せしただけだから。通常の株取引であれば、本来なんでもねえ話なのよ。適正価格ですねって話で。

帳簿価格と時価

ところが、税務当局は(4000円−500円=3500円)という差額を配当と認定しとるわけね。「帳簿価格より高く買ったんだから、それは株主に利益を渡したと同じだろ。それって実質配当じゃん」と。一方、竹中工務店側の言い分としては「帳簿上では1株500円ですけど、実際は4000円くらいの価値があるでしょうに。時価で買って何が悪いの?」という話。簿価基準か時価基準かで見解が対立しとるってのが今回の話の本質。
でもこれは竹中工務店の言い分が正しいような気がするな。株の売買が「持ち株会」だからこういう話になってるけど、一般的には時価で売買するのが当たり前だからね。不当に高い価格で買い取って、利益を与えたケースでもないし。そういう不正がないように4000円という価格を設定した気配あるしね。これは税務当局が突っ張りすぎたかな。
でもこれで同じケースを抱える企業が衝撃を受けたことも事実。竹中工務店はまともな価格設定しとるけど、持ち株会に対し、相当有利な取引をしちゃったところは山ほどあるからね。今後はどこからセーフで、どこからがアウトかって線引きの話になりそう。今回のケースは問題なくセーフだと思うけどね。