(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

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食品衛生責任者が語る食品衛生論(スゲエ偉そう)

今週号の「SPA!」になかなかいい記事が。「食の裏事情全部バラす!」という記事。関係者には周知の事実でも、一般的に知られてないことってたくさんあるのよね。これについてオレも語ってみますか。実は「食品衛生責任者」って資格持っているんでね。1日講習を受けただけで取れる資格なんだけどさ。寝ててもOK(寝るなよ)。
例えばサラダなどに使う生野菜。基本的に生食用の物は食中毒の原因になりやすいので、殺菌・消毒をして提供しなさいって指導が保健所から出てます。「かいわれ大根騒動」って昔ありましたけど、あの事件後は特にうるさい。で、問題はどうやって殺菌・消毒するかって話なんですけど、比較的ベタなのが「希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液に漬ける」って方法。これが一般的。

これは一般向けサイトだけど、外食店向けにはもっと厳しい指導が入っておりやす。

「希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液」とは

はい、ここで用語解説。何だか難しい言葉ですね。まず「希釈」って用は「薄めた」ってことです。で、「次亜塩素酸ナトリウム溶液」。何だか理科の実験に出てきそうですが、実は身近なもの。とりあえず何でもいいので洗剤を手にとってくださいな。大体入ってますよ、これ。最もベタな殺菌剤としての成分です。
もっとわかりやすく言えば、要は「ハイター」ですよ。漂白剤。あれが次亜塩素酸ナトリウム溶液ですよ。ハイターには汚れを落とす役割が必要なため、「界面活性剤」とか他の成分が混じってますけど、基本的にはあれが次亜塩素酸ナトリウム溶液と考えるとわかりやすいですな。業務用は他の成分は入ってないけどね。

ということは「漂白剤を薄めた水に生野菜を漬けて殺菌・消毒しなさい」というのが保健所の指示なわけです。国のお墨付き。厚生労働省推奨。その証拠に次亜塩素酸ナトリウム食品添加物指定されとるのよ。

使用基準のところに「使用制限」って項目があるけれども、次亜塩素酸ナトリウムの場合は「ごまに使用してはならない」とありますね。黒ごまを漂白して白ごまにしてくれるなってわけで、こんな項目があるわけですけど、それ以外の規制がねえってことは、これを使って何を殺菌・消毒してもいいってわけですよ。

メリットは?

で、このやり方をすると、実は外食店側にメリットがございます。

  • 誰がやってもいい

溶液に漬ければいいので、溶液の濃度さえ合っていれば、一流シェフがやっても小僧がやっても結果は同じなのですよ。道場六三郎がやっても、茶髪のあんちゃんがやっても同じ。なわけで、バイト・パートを多用するチェーン店にとってはありがたいわけですな。品質が安定するから。チェーン店は店舗数が多く、たくさんの従業員を抱えるので、作業者の能力によって結果に差が出ないやり方が好まれる。なわけで、チェーン店にとっては特に都合が良いのです。

  • 手間がない

やるのも簡単。シンクに水をため、野菜をバサッと入れる。で、規定の溶液を入れてあとはしばらくほっとく。そして隣のシンクに水をため、殺菌完了した野菜を移して水洗い。はい、これで完了です。実に簡単。誰にでも出来る。
この作業、カット野菜の工場だとさらに露骨であり豪快。要するに洗濯機方式よね。洗いとすすぎってわけで。

  • 色が悪くならない

漂白剤だから色がなくなるんじゃないかと思いきや、実は逆。色落ちしないし、色が悪くなりにくい。切り口の腐食が防げるし、きゅうり、赤キャベツ、トマトなんかの色もそのまま。「塩素系」なのでアルカリ性だから、中性の状態よりは酸化しにくいってわけね。
こういうメリットがあるので、外食店側もじゃんじゃん次亜塩素酸ナトリウム溶液で殺菌しとります。最近はさすがに学校給食では、食酢とか他の殺菌方法を使うケースが増えてきたようだけど、「化学の力で殺菌を」というのは実に一般的。これを悪いとみるか、仕方ないとみるかは人それぞれの価値観でしょうな。ま、不二家だけじゃないよってことですよ。某割烹なんて柚子釜使い回しとかしとるし、某フランス料理店は賞味期限が切れた肉でスープという不文律があるし、某寿司屋はダメになったらバラちらしというルールがあるからね。「本日のオススメ」は「昨日の残り物」って高級店は意外とあるので気をつけろ!