(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

オレと大納言

「自分はケモノだなあ」と思う習性がある。どうも初めての場所に行くと、尿意とか便意が湧き出でてやまないのである。これがチェリッシュの「てんとう虫のサンバ」であれば、くちづけせよとはやしたてるところであるが、オレの中の野獣の血は、ニオイづけせよとはやしたてるわけである。あの雛形あきこ主演の名作「闇のパープル・アイ」もびっくりのケモノの習性なのである。……いちいちわかりづらいよ。
まあ、これが尿意方面ならまだいい。男の尿意など秒殺である。観光地の女性トイレのような大名行列は発生しないし、最近はトイレの順番待ちも秩序立っている。昔は「高速の料金所方式」というか「スーパーのレジ方式」というか、各トイレコーナーに並ぶスタイルだった気がするが、いつしか「シャトル方式」というか「銀行のATM方式」というか、空いたところにおさまる並び方になった。これだと、たまたま前のヤツが大量放水につき、お時間を頂戴いたしておりますとなると、結構厳しいわけである。こっちも消火器の黄色いピンを抜いているわけである。世の中は優しくなったものだ。
でだ、小はどうでもいい。男の場合、最終兵器として「オープンバースト」が可能である。問題は大納言だ。男の大納言ルームの場合、うっかりするとそこで寝ているヤツがいるし、さらにうっかりすると、生活なされている人がおる。「幸せのちから」って映画があったけども、日本でも大都市界隈の洋式トイレで生活なされている方は意外におる。まして寒くなってくると切実な話である。「1畳1間トイレ込み」で冬を越しているわけだ。
「ニオイづけ大納言注意報」が発令されている時に、そのような「開かずのトイレ」に遭遇したら、一大事。折角の注意報のうちに対策をというオレなりの安全保障なのに、ほどなくして警報発令である。便意はリアルタイムに進行中である。そしてヤツは波のように襲ってくる。引いたかと思ったら、今度は大挙してお出ましだ。そして「ゼルダの伝説」よろしく、奥側の隠し扉を発見し「お、もうひとつトイレがあった」と歓喜の声を上げるが、扉を開けたら用具入れでガッカリである。モップさん、雑巾さんハローであり、ここで気を抜くと大納言も頭出しハローである。油断大敵でやれやれである。
こういう場合は迅速な選択が必要だ。即ちそれは「ひたすら耐える」か「諦めてダッシュ」。で、大抵の場合「諦めてダッシュ」が正解なのであるが、大納言警報が直撃している場合、「動かない方が、かえって安全」という場合もあり、往々にして「隊長! 動けません!」であったりもする。こういう状態になると、もはやもれなく内股である。「心拍数下がってます!」「出血止まりません!」「大変危険な状態です!」と危篤一直線。
運良く大納言ルームの扉が開いたとしよう。しかしまだ油断はできないのである。「家に帰るまでが遠足」である。大納言を無事トイレの大海に送り出すまでが大納言である。特に冬場が注意が必要だ。下にジャージ・肌着の類を余計に装着しているからである。いわば、大納言の視点で考えれば、寒さ対策のためにコンドーム氏を装着している状態である。ここでジャージを脱がねば、コンドーム内に大納言が鎮座まします展開となる。コンドームの役割としては、それはまずもって正解なのであるが、ジャージとしては不正解であるし、公衆衛生の観点からしても不正解である。優しい数学の先生なら「途中点」はもらえるかもしれんが。もらえねえよ。
こういう時のジャージの紐は、非常にうざったい。「ええい、ままよ」と破りたくなる衝動にかられることもまたやむなしである。なかなか脱げないのである。焦ると何もかもダメなのである。ああ、神は我に七難八苦を与えたもうた!
しかしこれだけの道のりを経て、いざ大納言をするとなると、意外と大納言は出渋るときがある。また、大納言はお出でにならず、大放屁様が代わりに出陣されて終了ということもある。七難八苦に釣り合いがとれぬ。気が抜ける瞬間。ケモノことタケルンバはこんな小さな戦いを日々しております。