(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

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「釜あげうどん」とは

長田in香の香で釜あげうどんを食べたのですが。

意外と知られていないことなので、ちょっとハシ休め的に「釜あげうどん」について書いてみます。
さて、皆さん。「釜あげうどん」と聞いてどんなうどん想像します? タライに入ったアツアツのうどんをイメージしません? アツアツのお湯の中にうどんがあるってのをイメージされるんじゃないでしょうか。
じゃ、「釜あげうどん」の定義ってわかります? 何をもって「釜あげうどん」か。実はこれ、意外と知られてないのです。先ほどのイメージでは定義としては不十分です。

「タライに入ってる」「アツアツ」「お湯の中にうどん」

これは釜あげうどんの条件としては不十分です。イマイチです。

これは長田in香の香の釜あげうどんですが、普通の器に入ってでてきます。タライは関係ありません。「アツアツ」と「お湯」に関しては、それ自体が条件ではないが、「釜あげの条件を満たしたら、当然そうなるやろ」ってなもんです。
「『釜あげ』って言うくらいだから、釜からあげたもんやろ」
実はまだこっちの方が正解なくらい。シンプルな字面判断の方が正解です。

普通の温かいうどん:茹でる→水で締める→湯がいて温める

基本的なうどんの作り方はこうです。麺を茹で、それを冷水で締めます。締める過程で、麺表面の糊化した部分を落とし、磨いてきれいにします。そうなると白くピカピカに輝く麺になるわけですな。コシも出ます。
冷たいままで食べる場合(ざるなど)はこのまま出します。温かいうどんの場合は、もう一度湯がきます。茹でた麺を一度冷やして締め、それをあらためて湯がく。温かい麺の場合、二度茹での形になります。

釜あげうどん:茹でる

ところが、釜あげうどんにはこの「水で締める」という工程がありません。茹でた麺をそのままで出す。故に「釜あげ」なわけです。
この場合、水で締めないので、麺表面の糊化した部分はそのままです。ただ、そのために他の食べ方より麺がモッチリします。麺表面は柔らかです。また、締めないといっても、麺が伸びているわけじゃないので、芯のコシは残っています。表面のモチモチと、芯にあるシコシコという麺の魅力を味わいつくす調理法です。
最近はやりの「釜たま」も同じことです。「釜たま」では茹で立ての麺を卵に合えます。作り置きの麺では「釜たま」になりません。出来立て、茹で立ての麺でしか「釜たま」とは言えないのです。

釜あげうどんのデメリット

しかし水で締めてないので、他の麺より伸びやすいです。ほっとくとマズくなります。できたてのおいしさを味わう調理法なので、あまりゆっくり食べるものじゃありません。伸びる前に食べるのが鉄則です。
また出来上がりまでに時間がかかります。他のうどんの場合、麺の茹で置きができますが、釜あげうどんの場合、茹で立てでなければ「釜あげ」とは言えませんので、茹で上がりを待つことになります。ま、逆に考えれば「釜あげうどん」であれば確実に茹で立てなので、茹で立てを食べたい向きにはベターなのですが。

香川以外の釜あげうどんには注意

但し、この話は香川以外では通用しない話が混じっています。

香川以外では、茹で立て以外の「釜あげうどん」がある。

こういう真実があります。なんだかややこしいのですが、事実です。

「タライに入ってる」「アツアツ」「お湯の中にうどん」

これ、先ほど一般的な「釜あげうどん」のイメージとしてあげました。そして実は、香川以外では、このイメージ3つは事実上の「釜あげうどん」の定義となっています。この3つを兼ね備えていれば、それは「釜あげうどん」なのですよ。香川以外では。
どういうことかと言うと、水で締めた麺を湯がいて、タライの中にお湯とともに入れる。アツアツである。これを「釜あげうどん」として出しているのですな。茹で立てじゃないのに。釜あげじゃないのにです。「ニセ釜あげうどん」が横行しとるわけです。
ただ、実はこれはこれでおいしい。一回水で締めたほうがコシが出るので、これはこれでうまい。本来の「釜あげ」よりこちらを好む人は香川にもいます。意外といます。正直言って単なる好みの問題だったりします。
ちなみに香川ではこうした「ニセ釜あげうどん」を「湯だめうどん」と言います。ためたお湯に入れて出すうどんってわけですな。「釜あげうどん」とはまったくの別物。立派なジャンルです。

うどん=水で締めたもの

基本的にはこう考えるとよろしいかと思います。単に「うどん」とある場合は水で締めている。

釜=水で締めないもの

但し「釜」がつくものだけ水で締めない。例外的なものだと考えるといいでしょう。

香川以外の「釜あげうどん」=「湯だめうどん」

同時にこう考えるとよろしいかと思います。本当の「釜あげうどん」を食べたいのなら香川へどうぞ。モッチモチでうまいぞお。