罰当たり一族
タケルンバ家の母方は比較的まともな家系で、常識人が多いのだが、父方がどうにもおかしい。破戒者オールスターズ。オレも含めて一族総罰当たり。田舎ものなら田舎ものらしくすべきだが、そういう常識を壊してはやし最上川である。
イタコ降臨事件
父方の実家は青森である。青森なんで、イタコなんかもいたりするわけだ。あるお盆、たまたまイタコが来ることになった。
「どなたか、お呼びしましょうか?」
という話になったので、一族の長兄が「じゃ、亡くなったおじいちゃんを」ということにした。わかりましたということになった。そしておじいちゃんをおろしはじめた。
ただ問題がある。そのおじいちゃんはオレの隣にいるのである。バッチリ生きているのである。もう既に見えないハマチをつまんで、それを口に入れ、食った気になりご満悦というくらい、本当の意味の天然ボケは進んでいたが、ジジイはバッチリ存命である。でもヤツにはおりてきているらしい。誰だ、そいつ。
その後、イタコにおりているらしいジジイと、ジジイ本人の競演が実演。これが本当のダブル・キャスト。まさか自分がおろされているとは気がついていないジジイと、まさか生きているヤツをおろしているとは思っていないイタコの会話。ボケにボケを被せるという奇跡の競演。江原ネタの先取りを既にやっていたのだよ、我が一族は。
葬式事件
そしてそのジ様が本当に亡くなった。90歳近くまで生きていたので大往生。死ぬ直前まで朝からコップ酒をかっくらっていた陽気なジジイなので、葬式とはいえ実に陽気である。涙ゼロ。悲しみ指数もゼロ。愛されてたジジイだし、みんな好きなジジイだったので、陽気に送ってやろうと。そういう雰囲気。
とはいえ葬式っつーものは厳粛なものである。一応ド田舎としての作法があるし、風習がある。葬式も坊主トリオによる三重奏の読経である。「世界三大テノール」とは言わないまでも、その地域の三大坊主である。そこそこエライ坊主もいたらしい。やっぱりおごそかなオーラを放っているのだ。最初のうちはそのオーラに従い、我が一族もしんなりしていたわけである。
ところが、我慢できないのも我が一族。悪乗りするのも我が一族。読経に飽きた一族の次兄が「あの木魚、8ビートだぜ」とか急に両脇と話し始めたのである。「そろそろ来るぞ、シンバル」とか言いやがるのである。そしてそういうタイミングに坊主が鉦を鳴らすわけだ。笑うのもやむなしである。
そんなあんまりの風景に遂に坊主の怒り炸裂。
「もっと真面目にしてください」
葬式で坊主に怒られる遺族。