(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

鮮度・深度・密度

ネットがあるおかげで情報はすぐ入るようになりました。便利ですよね。地震が起きたとなれば速報で見れる。重大な事件が起きたらどこかのサイトで流れるし、スポーツなんかでも途中経過をメールで知らせるサービスがある。マジメな分野から、ゆるーい分野まで、あらゆる情報はすぐに入手できるようになった。
そう考えていくと、月刊や週刊、あるいは日刊というサイクルで情報を発信するのが遅く思えてしまう。さらに言うと、新聞の締め切り時間の設定もなんだかなあという話になってくるし、あらかじめ更新時間を決め、その時間にしか更新をしない報道機関のサイトとかはナンセンスに感じてしまう。情報を溜め込まないで、すぐに流せばいいのに、決められた更新時間まで溜め込む。すぐに流せる環境があるのに、これだともったいない。わざわざ情報の価値を下げてしまう行為。
ただ、一方で情報の価値はスピードだけじゃない。即時性だけじゃない。分析を加え、解説し、その情報が持つ意味や背景などに関する説明することも重要な作業。こうした作業には時間がかかるので、ある程度即時性は犠牲になるものの、スピードとは別の価値観を創造するので、時間を犠牲にする価値は十分にある。

情報の鮮度と深度の追求

端的にまとめればこういうことなのかなと。スピードと分析の深さ。

ジャーナリズム崩壊 (幻冬舎新書)

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ただ、これを読んでみても思ったことなんだけど、じゃあ新聞社はどうなのかなと。鮮度と深度どっちに舵を切っているのかなと。スピードなのか分析力なのか。どちらを高めたいと思っているのかなと。
正直、紙媒体ってのはスピードはどうしようもない。オンデマンド印刷にしない限り、印刷するための締め切り時間が発生し、完成したものを輸送する手間がかかるので、どうしてもタイムラグが発生する。

昔、こういうシステムを考えたけど、こういう感じにしない限りは情報に遅れが出てしまう。オンデマンド印刷なら、随時内容を更新できるから、タイムラグが発生しないだろうけど。基本的には紙は遅い。
となると「新聞」という紙媒体、ビジネスモデルをとっている限りは、スピードに遅れが出るのはしょうがない。ネット媒体より遅くて当たり前。ネットなら情報を入手した時点で記事を書き、書けたら更新すりゃいいけども、新聞の場合、朝刊でダメなら夕刊まで載せられない。このロスは大きい。
となると話の流れとしてはどうしても深度の追求という話になる。

  • スピードを高められない。
  • ならば、スピードを犠牲にして得られる価値観を創造するべき。
  • それは分析力によって得られる。
  • 深度の追求に舵を切ればいいんじゃない?

こういう流れ、こういう思考になってもいいはず。どうせ速さはダメなんだから、そのロスの時間を有効活用すりゃいいんじゃねと。朝刊に間に合わないなら、夕刊までの時間に頭を振り絞っていろいろ考えて、それを付け加えればよろしいんでないの?
ってなことを考えると、新聞社の役割としては即時性を追ってもしょうがないんだから、通信社っぽい仕事をしてもしょうがないと思うんだよな。スピードじゃかなわねえんだもん。現に新聞社は通信社から記事を配信を受けてるわけで、そういう記事に関しては一次情報源の時事とかロイターより遅い。しかもどっかから流れれば、新聞ができるよりも早く2chとかで流れるし、誰かがブログの記事にすることもあるし。夜に流れた情報は、深夜のうちに知れ渡り、朝刊が来る頃にはもう遅いってこともあるわけだからねえ。
あるいはこれまでの長い歴史を使って、第三の道を探る方法もあるけれど。

密度の追求

情報って並べると意味が出てくるんだよね。一見関係なくても、寄せ集めると見えてくるものがある。統計なんかはまさにそうだけど、ある基準でデータを集める。ひとつひとつのデータが持つ意味合いは大したことなくても、量が集まると見えてくる。
戦前からある新聞社も少なくないわけなんだから、そうした新聞社が持つこれまでの情報の蓄積は相当なもの。そういうのを見れるようにする。あるいはこれから起きるニュースに関連しそうなものがあれば、それだけでも載せる。そういう風にすると、また一風違う視点を新聞社が提供できると思うんだよな。Permalinkがないとか、一定時間が経過すると記事を消すとか、そういうことしてないで、むしろPermalinkを増やして、どんどん記事を提供する方に舵を切る方法もあると思うんだよね。
で、社内に現在抱える人間は、そうした関連記事を知る貴重な生き字引でもある。そういうリソースも財産なはず。「似たような事件があった」「今の世相は昭和○○年と似てる」「○○は過去にこういうこともしている」そういう情報と手動で関連付けてもいいと思うんだよね。自動化された関連記事もいいけど、人力の関連記事だって需要があると思うんだよ。それこそ新聞社としてのレコメンド。オススメ記事。そういうやり方もあるんでないかい?

情報の鮮度と深度と密度の追求

情報を蓄積するコストがリアルよりネットの方が安いし、頒布性も高いのだから、こういう考え方もありだと思うな。ま、どっちみちビジネスモデルがネット広告頼りになってしまうのは難点だけど。とはいえ、即時性で勝負するよりは、まだ先があると思うけどね。現在の新聞社が持つ数少ない武器だし、しかもそれは他の誰をも持ち得ない強力な武器なわけだから。新興勢力に過去のライブラリがあるわけないんだから、最も差別化できるポイントだと思うんですけどね。
新聞社はどこに行くんでしょうなあ。