(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

生は食いたし、命は惜しし

レバ刺し好きが来ましたよ。

肉の生食を愛するNeekの出番が到来であり、レバ刺し好きは死にますか、山は死にますか、森はどうですか?(@さだまさし
レバーに危険性があることは、Neekも否定しません。カンピロバクターの危険性は常々指摘されているところですし、O-157サルモネラ菌に感染しているケースも考えられ、「安全ですか?」と聞かれれば「わかりません」としか答えようがありません。

こういう記事の通りでありましてね。

厚労省でも、今日の食肉処理技術で食中毒菌を100%除去することは困難としている。

http://mainichi.jp/life/health/news/20091030ddm013100136000c.html

汚染されたものは取り除けないんです。
とはいえ、逆に「危険ですか?」と聞かれても答えは「わかりません」なんです。汚染されたものは取り除けないんだけど、そもそも汚染されてなければ問題ないわけよね。

厚生労働省の調査(08年)によると、市販されている鶏肉の2割前後が汚染されていた。

http://mainichi.jp/life/health/news/20091030ddm013100136000c.html

ということは8割はおkだから。この8割の安全性をどう判断するかは別として、少なからず汚染されていない鶏肉があるという事実は頭に入れておかないと。

特にカンピロバクターは、牛肉(内蔵含む)、豚肉、鶏肉などで高率に汚染されており、鶏肉で
20から40%、牛胆嚢内胆汁で25%、牛肝臓で11%は保菌しているといわれています。

http://www.pref.shimane.lg.jp/matsue_hoken/syokuniku_seisyoku.html

で、元記事で引用されている島根県のサイトにはこういうデータもある。つまり単純比較すれば、こと生食に関しては、鶏肉より牛レバーの方が安全という言い方すらできるわけです。単純な確率で言うと、カンピロバクターを保菌する肉にあたる確率は、鶏刺し2割、レバ刺し1割であると。
で、あとはこの確率を如何に下げるかというところに食文化の知恵と技術とプロの矜持があるわけですよ。

厚生労働省は生食用の食肉に関し、こういう通達をしています。この基準を満たすものであれば生食用として扱っても問題ないだろうし、この基準に満たないものを生食用として扱わないように、生食用はそれと分かるように食品表示をせよと。加熱用と分けよとしているわけですね。
で、これって牡蠣と似ている話なんです。牡蠣も生食用と加熱用を分けています。牡蠣を育てる環境の大腸菌の個体数や、加工過程の手順あれこれで分類するわけなんですけど、生で食べるものは食中毒菌を加熱殺菌しないので、こうした菌に感染しないように別で扱えと。そもそも菌がいない場所で養殖し、加工し、出荷せよと。そうすれば牡蠣の身にも食中毒菌がつかないから、生で食べても問題ないよねと。
肉類も話は一緒で、生食用にできるものは基本的に加熱用と別なんです。生食用のレバーは加熱用とは別で、生食用は食中毒菌に触れないように、あらゆる手順に細かい規定がある。だから加熱用のレバーを生食したら危ないのは当たり前で、生食用のレバ刺しならば、基本的には問題ないわけです。
なのでポイントはこの3点に集約されます。

生で食べていいのは「生食用」と表示されている肉だけ

自宅で生食する場合は、「生食用」と表示されている肉でのみ行ってください。表示が何もない肉で生食するのは危険です。可能性として先述したように、実は保菌していない肉の割合の方が高いので、食べてもなんともないケースの方が多いわけですが、それはあくまで確率の問題です。あたる可能性を自分で生み出す必要はありません。
また心配な方は湯引きなどの加熱調理を加えると確実です。食中毒菌は基本的に表面に付着します。表面を熱処理することにより、菌を殺すことができます。内部はレアで食べれるので、生食に同じ食感を得つつ、安全性を高めるのでオススメです。

生食用を扱っている飲食店で食べよう

外食の場合は店次第です。お店が提供している肉が生食用であるかどうか。この一点にかかっています。

東京だと芝浦に市場がありますが、生食用の肉類、内臓は流通が少なく、こうした肉を仕入れるルートをもっているかどうかにかかっています。
ですから比較的老舗は安心で、古くからの仕入れルートを持っていると考えられます。ま、このあたりは見分けるポイントがないので、なかなか難しいところなんですけどね。「信用できる店で食べよう」としか言えないんだけど。ヤバそうな店では食べないことです。

100%の安全も危険もない

いろいろ対策は打てるんですが、基本的には100%の安全はありません。生食用の肉でも、あたるときはあたります。それは生食用の牡蠣なんかでも一緒です。完璧なものはありません。あたる蓋然性を減らす手段があるというだけです。薬味と一緒に食べるというのもその手段のひとつで、古くからの知恵としてあるわけですが、しかしそれとて完全に食中毒を防止する手段にはなりえません。
要はリスクを正しく判定しましょうということ。リスクはある。ゼロに近づける方法もある。但しゼロにはならない。この場合、どういう価値判断をするかという話なんです。俺は食べます。生食用のレバーを食べさせてくれる店で。レバ刺しが好きだから。で、もちろん生食用のレバーでも、信用のおける店が出すレバーでも、あたるときはあたるんです。
しかしそれを俺は割り切ってる。道を歩いていて交通事故に遭う確率と同じようなものだと思ってるんです。外出しなければ防げる。でもそれだとつまらない。なので事故に遭う確率が発生するのをわかっていて外出する。そういうことだと思っているんです。うまいから食べたい。でも食べる以上はあたる確率が発生する。ゼロではなくなる。
でもそういうリスクに見合ううまさがあると思うし、そのリスクはゼロに近いと思っているんだよな。ま、このあたりは価値観。
「フグは食いたし、命は惜しし」
って言葉があるくらいで。昔からこのジレンマに悩んできたのよ、日本人は。命は惜しいが、俺は食いたい。でも、このリスクを恐れて食べないという選択肢も当然ありうる。それは個人の価値観の問題で、それぞれがお好きにすればよろしいと思うわけです。レバ刺し好きが他の人に「食えや」と言う話でもないし、逆にレバ刺し好きが「食うなよ」と言われる話でもないしね。どちらかに統一する必要はまったくないわけで。
ただ、繰り返しますが生食用の肉だけね、生で食べるのは。加熱用の肉を食べたいと思わない。それは単なる自殺行為で、蛮勇。生食用の肉を生で食べたいってだけです。そこだけ混同しないように。
この世に100%の安全はないが、より安全にする方法はある。より安全な方法で提供されたレバ刺しを楽しむ。これがNeekのたしなみ。エンジョイ、生食。正しい知識を持って肉を楽しみましょうよ。