(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

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生食の誘惑

さっきの記事に関連して。

今度は焼肉業界視点でのお話。
焼肉店にとっての生肉提供って、野球におけるランナーのリードのようなもので。最初はびくびく。基本的にはリードなし。塁にビッチリ。でも「いけるぞ」となると次第に塁から離れるようになる。でもって牽制などでビクッとすると、またもや塁にビッチリ。そういうランナー心理にそっくり。
チェーン展開しているような焼肉店では、従来あまり生肉メニューをおいていなかった。それは万が一が起きたときに、チェーン全体に影響を与えてしまうというリスクの大きさと、店舗ごとの衛生管理のぶれが万が一に直結し、しかもそれを本部がなかなか管理できるものではないという現実的な理由があったから。
しかしながら、ある程度の実績があり、自社の食の安全性に自信を持つと、やはりどこかで生食をやりたくなる。ビジネス的な利益追求もさることながら、「こんなにいい肉使っているんですよ」というアピールもしたい。
仕入業者なんかも「御社にはいい肉を納入してますよ」アピールをしてくる。定番のセリフは「生でもいけますよ」だ。焼くべき肉が生でも食べれる。仕入業者にとってはこれ以上の鮮度アピールはない。肉に限らず、魚でもよく聞くセリフ。
最初はおっかなビックリ出してみる。薬味を多目につけたり、常連限定、あるいは店舗限定メニューとして。いけるとなるとそれが変わってくる。やはり肉の味をストレートに味わって欲しい。薬味が減る。タレの味付けが薄くなる。一般メニューに昇格。店舗限定が外れる。
どこかで危ない思いをすれば、この流れは止まる。牽制に合わせて塁に戻る。しかしまた時間が経つと、少しずつ塁を離れていく。この繰り返し。危ないと思っても、何故かやりたい。生肉はそういう魔性の存在。

今後予想される展開

とりあえずは生食全般の自粛。当面は仕方ない。
特に塩ダレ系の生肉を出していたお店は影響が大きそう。塩ユッケなんかまさにだし、レバ刺しなんかでも、ごま油塩の取り扱いが微妙になるかも。にんにく醤油や、生姜醤油の時代に戻るかも知れない。

ボイル系刺し

一方で、加熱後に刺身として提供するようなものが、ユッケなどにかわってレギュラーメニューに昇格する可能性がある。例えばセンマイ。センマイ刺しと言うが、実際は茹でているのが普通。ガツ刺しなども同様。消化器系は茹でるのが普通。

タタキ処理

妥協の産物として、タタキメニューが増えるかも知れない。食材の表面だけを加熱処理する。こうすれば、表面に付着していた菌は死ぬし、中心は生に近い。
正肉やレバー、ハツなどはタタキでの提供が増えてもおかしくない。

いたちごっこは続く

しかしながら、再び何もない時間が経過すれば、やがて元通りになる。一度は塁に戻ったランナーも、またリードをはじめる。
適度な「ヒヤリ・ハット」が食の安全にはいいんだけども、それがなさすぎる時期に「ヒヤリ・ハット」が行き過ぎた重大な事故が起きる。リードしすぎたあまり、牽制で刺される。アウトになる。アウトになってはじめて行き過ぎたリードであると気づく。
事前にそれがわかればいいのだけれどね。