(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

安定性と機能性は車の両輪

はてなブックマーク2のベータ版が、早くも落ちております。
ま、ベータ版だし、正式リリース前なんでしょうがない。実際に使ってもらって、実地テストをして、いろんなトラブルを目の前にし、トラブルシューティングして正式リリースという段取りをする。だから、今はトラブル品評会でいいし、なるたけ今のうちにトラブルを勢ぞろいさせて、それを解消した方が後々のためになる。そのためのベータ版だしね。テスト版ということでもあるしね。それはわかる。わかるんだけども……大丈夫かなと。不安になる面があるんだよね。
というのは、先日行ったはてブのリニューアル発表会。オレが最後の方で質問するそのときまで、システムの安定性の話ってほとんど出てこなかった。なかった。もちろん現行のはてブだって基本的には安定してるし、問題なく動くんだけど、時々落ちる。その時々がどうなるのか。改善方向なのか現状維持なのか。ここってみんな知りたいところだと思ったんですよ。利用者としての関心事だし、同時に機能面の向上と並ぶ、大きなポイントでないかと思ってるわけなんです。

機能 < 安定

ハッキリ言って、オレみたいなド素人には細かいところはわからんのです。動くか動かないかなんです。そしてせいぜい動かしやすいかどうかなんです。で、そこにどういうテクノロジーがあろうが、どうだっていいんです。結果として動き、且つ動かしやすいのであれば無問題。
なので、動くという点が最優先で、それ以外は後回しなのです。極端に言えば、不便なものでも動くものなんです。古くても、使い慣れたものがいいんです。動くことがわかっているから。そして動かし方がわかっているから。信頼性が優先なのです。安定性が全てのベースなのです。安定した上での機能。礎は安定性。
同じくらい安定しているなら、機能性で選択するけどさ。機能って後だね。

乗り換え需要は止まった時に発生する

また、そのサービスが止まってみたことを考えればわかるけど、そのときに出てくる発想としては当然に代替サービスを意識すると思うんだよね。同じ機能を持った他のサービス。同業他社。はてブが落ちたら他のソ−シャルブックマークサービス。TwitterならWassrとか。そういう発想は当然出てくる。
もちろんそういう発想が出てくるからといって、必ずしも乗り換えるわけじゃないし、乗り換えれるものでもない。長年使い続けていた愛着と、その背景には乗り換えのコスト負担がある。面倒くさい。でも、システムが落ちれば「替えようかな?」というきっかけを与えてしまうのは確かだし、その具合がひどければ、乗り換えの面倒くささに堪えて動いてしまう。
つまり安定性が欠けると、それだけ同業他社にチャンスを与えてしまうことになる。利用者を手放すきっかけをつくってしまう。本当に利用者が動くかどうかは、そのシステム障害の重大性とか、乗り換えのコストとか、あるいは代替可能なサービスかによるけど(ふぁぼったーがちょくちょく503になっても人気があるのは、他にああいうサイトがないからじゃね?)、損失の実現可能性で言えば有。いいことではないよね。

敵失で同業他社のチャンス

逆に言うと、システムが安定している同業他社としては、敵失で利益を受けるチャンスが増える。あるサービスが落ちまくる。となると、似たサービスを提供し、尚且つより安定したものに利用者は駆け込む可能性が出てくる。Twitterがダメになればなるほど、Wassrに人が流れ込む可能性が出てくる。
但しそれは安定していなければダメで、不安定性を嫌って人が出るわけだから、それよりも安定していることが条件になる。敵失につけ込むには、安定性が必要。
安定しているシステムを提供していれば、黙っているだけでチャンスが出てくる。そういう考え方もあるんじゃないかな。

不安定なシステムでは長期的展望が開けない

不安定なシステムというのは、落ちるたびに利用者を失うリスクを抱える。乗り換える動機を与えてしまう。同業他社が魅力的でないうちはいい。明確な差があるうちはいい。しかし同業他社のサービスがほとんど同じ内容になったとき、比べられる内容が安定性くらいになったとき、コモディティ化したとき、不安定なシステムはそれまでにどれだけシェアがあっても風前の灯。先が読めない。どうなるかわからない。
そう考えると、不安定であることは、長期的展望を描きにくいという経営的な不安定を招く可能性があるわけです。先の収益計画が読めない。右肩上がりというのは安定成長をベースにする発想であるし、現状維持は今と変わらぬ経営環境であることを前提にした発想。ウェブサービスのように、いつ誰が同じサービスを提供するかわからない世界において、類似のサービスができる。まして安定している。そういう環境になったときに、今の体制を維持できますか? 開発を続けられますか? ここに話が行き着く予感。
ウェブサービスを使う人が増え続けている現状はまだいいけど、どこかでこの拡大も止まる。携帯電話はまさにそういう感じだしな。パイの奪い合いになってる。そういう状況になったときに、利用者が減るリスクを抱えて大丈夫か。不安定であるというだけで、草刈場にならないか。そういう懸念が経営にまで負担を与えかねないと思うのです。……考えすぎかね?

安定性・機能性は車の両輪

もちろんこれは「機能を疎かにしろ」って話ではありません。「安定性を第一にしろ」という話でもありません。「安定性は機能性と同じように大事である」という話です。不安定でも魅力的なサービスには人が残るでしょう。同じように機能が劣っても、安定するものにも人は残ります。しかし理想なのは安定性と機能性を高レベルで確保することで、どちらかを疎かにしてはいけないという、ごくごくありふれた平凡で凡庸の結論なんですよ。片方だけではいけない。車の両輪。両方を確保しなければならない。片方だけではその場でぐるぐるまわるだけ。まわらない車輪を軸にまわるだけなのです。
思うに、はてなは機能性の方に力が行き過ぎている。そんな疑問を持っているわけです。機能性の方に舵を切りすぎている。もちろん機能性は大事なんだけど、忘れてはいけない要素もあるんだよと。そういうことを言いたいわけですよ。長期的に愛されるサービスを作るうえで、それは大事な考え方じゃないかな。特に多数を相手にするサービスを目指すならば。世間ではオレみたいな技術も何もわからない人が多数なわけでね。
サービスの開発というのは難事とは思っております。またどんなことでも新規の立ち上げというのは大変で、予想もできない出来事の連続と、新しい場面に対する判断の連続で、大変であるかとは存じます。が、それでもなお安定性に対する配慮を是非いただきたいなと思うわけです。
正式リリースまでのお時間、はてな開発スタッフの皆様のご活躍に期待しております。ガンガレ。