(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

「うまい」と「おいしい」

あるものを食べ、いい感情を持った。そのとき、あなたは何と言います?

「うまい」「おいしい」

どっちかでしょ、大体。「いいものを食べた」という正の感情を伝える二大巨頭というか。東西の横綱というか。
ただ、意味合いとしては同じことを表現するものの、使われ方というか、人の意識の中では結構な差があるような。

「うまい」は下品?

「女性が『うまい』と言うのは下品である」という考え方ってよく聞くよね。「はしたない」とか。「あまり上品ではない」とかって。礼儀作法の点から好ましくない言葉遣いであるという考え方は、あちこちで聞きますねえ。

(上品さ)うまい < おいしい

であると。

「うまい」は直感

「『うまい』の方が直感的」という話もよく聞く。「おいしい」よりも反応が速いと。より舌からの反応が速く、脊髄反射的である。こういうとらえかたをしている方は多いみたい。

「うまい」はうれしい

なので、料理人の中には「うまいと言われたい」と考える人も自然と多い。「『うまい』は直感」と考えるからこそ、「うまいと言われたい」と考える。その言葉をかけてもらうとうれしい。そう思っている。
口の中に入れた瞬間の感情、それが「うまい」というプラスの評価であるからこそ、つくった人間、言われた人間は喜びを感じる。少し間をおいた「おいしい」よりも、と。ま、なるほどな帰結ですなあ。先ほどの「うまいは下品」という話があるんで、そう考える人は従来、女性がひとりで入りづらかった業態がメインだけど。居酒屋とか、焼肉・焼き鳥・ラーメンとかね。

「おいしい」はじんわり

「『うまい』は直感」の一方、「『おいしい』は理知的」な印象を受けますね。ちょっと考えてから、後でその感覚が来る。遅効性といいますかね。「うまい」は即効性ですぐ来る。「おいしい」は遅効性で、じんわり来るって感覚なのかな。舌から感覚が脳に行き、そこから信号が発せられてわかる感覚。

  • 「うまーい!」
  • 「……おっ、おいひい」

こういう違いがあるのかな?

英語だとどうなる?

……とまあここまで書いてふと思ったのは、他の言語ではどうなんでしょね。ちと翻訳かけてみるか。出でよ、Google翻訳!

  • うまい………good
  • おいしい……delicious

あ、「うまい」だと「旨い・美味い」だけじゃなくて「上手い・巧い」の意味があるから、「good」になっちゃうか。
逆に「おいしい」だと味の表現以外の使い方ってないもんな。糸井重里の名コピー「おいしい生活」くらいなもんで。例が古いな。ま、それくらいしかねえってことだ。
同じアジア圏・漢字文化である中国語で変換したらどうなるかね。

  • うまい………良好的
  • おいしい……美味

同じことか。ま、そうなるわな。
となると、本来、味を伝えるのは「おいしい」が一般的というか、そのための単語ということなんだな。味以外のものを伝える機能がないということは、そのためにしか存在意義がなかったはずなので。逆に「うまい」はいろいろな使い方ができるってことは、本来、それを味について使わなくてもいいってことだよね。どんなことでも「good」、つまり「良い」ものは「うまい」であると。汎用性が高い。

「おいしい」は味専用、「うまい」は何でも屋

こういうことなんだなあ。言葉的には。となるとだ。逆に言うともっと「おいしい」を大切に扱ってもいい気がするのだ。個人的には「うまい」の方を好んでいるし、「うまい」の方がうれしいという人は知っているけど、「おいしい」の方がうれしいという人を知らないので、大抵「うまい」と言う。でも、せっかく味専用の言葉なので、もうちょっと大事にしてもいいのかなと思った。

「おいしい」をたくさん言って、おいしい生活

ということなのかな。結論としてはやっぱり「糸井重里は偉大だ」というところでしょうか。違うね。