(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

追悼id:kousuke-i

先週水曜日夜。携帯電話に1通のメールが入った。

康祐の通夜、葬儀にご参列いただき、ありがとうございました。
このメールは、康祐の携帯に登録されていた方々に送らせていただいております。
康祐は生前に抱いていた志<ミッション・ステートメント>を残し、また多方面にわたる関心をブログやサイトに残しております。
それらをまとめたサイトを作りましたので、ご覧いただければ幸いです。URLは以下のとおりです。
http://www.ksl.co.jp/kousuke/

通夜? 葬儀? そして康祐って誰?
心当たりがなかった。ここ最近、通夜・葬儀に参列していなかったし、そもそも康祐という名前に心当たりがなかった。そのため、宛先間違いあるいは迷惑メールだと判断した。何せ心当たりがないのだ。ごくごく自然な判断だろう。
「不幸をネタにする迷惑メールが出現したのか!」
とこう考えるに至った。まったくけしからん話だ。SPAMの世界に人情もへったくれもないもんだと。
とはいえ、自宅に帰って改めてメールを見るとどうも気になる。胸騒ぎ。予感。そして迷惑メールと断定しきれない面。
文面がリアルだ。
urlが自然だ。
そして実名や電話番号、住所が記載されていた。
これが自分宛のメールと考えると、確かに不自然なのだ。心当たりがない。その理由に尽きる。しかしまた、これをただの迷惑メールと考えるのも、不自然なのだ。愉快犯にしては手が込んでいる。SPAMという商売でやっているなら手間がかかりすぎている。一般的な迷惑メールでは、ここまでのことはしない。
そこで自宅のPCから記載されていたurlにアクセスしてみた。

個人のページと思われるものにつながった。この時点で最初の迷惑メールであるという推測が間違っていることを直感した。商売っ気がない。リンク先に誘導して、何かの利益につなげようという意図はない。
となると可能性はメールの宛先ミスということになる。他のページを見てみることにした。
ミッションステートメント。前向きで真摯な姿勢がわかった。この時点で「康祐」とは「kousuke」であることに疑問の余地がなかった。そして、誰だかわからないが、彼が亡くなったこと。携帯電話のメールにあるように、葬儀が行われていることに疑問を差し挟む余地はなかった。
いや、誰だかわからないなんてことはなかった。

法律学徒の英語と読書な日々

それはまさしく俺が知っているブログ、読んでいたブログ、そして縁があったブログにしか他ならなかった。

「康祐」とは「kousuke」であり、はてなダイアリー上では「id:kousuke-i」だったのだ。
「誰だかわからない」どころではなかった。実は彼と私は会っていた。直接お会いしていたのだ。

今年1月に行った「全国オフ巡り」。名古屋で彼と会っていた。2009年1月10日。間違いない。名古屋の地で一緒にご飯を食べ、談笑したのだ。ブログの話をした。彼の将来についての話もした。その彼が亡くなった。亡くなっていたのだ。
親御さんは、彼の携帯電話に登録があったメールアドレスすべてに、先のメールを送っていたようだった。私のもとにメールが届いたのは、そういう理由だった。名古屋で会うために、連絡先を彼に教えてあった。それが携帯電話に残っていたのだ。
わずか4ヶ月前にオフ会で出会った人間が亡くなる。ネットでの、ブログでのやりとりという縁をきっかけに直接会った人間が亡くなる。携帯電話に残っていたメールアドレスを通じて、その情報を得る。薄いつながりのようで、偶然のようでいて、リアルほどつながってはいないようで、しかしそれでも尚、結局は縁がつながっている。
彼が旅立ったのは3月29日。2ヶ月前。Twittermixi、そしてブログを見る限り、旅立つ直前まで更新をしていた。それが最近途絶えていたので、「見かけないなあ」とは思っていたが、そのとき彼は既に旅立っていた。21年と4ヶ月の道のりを終えて。道のりを終えるその瞬間まで走り続けて。
親御さんとメールを交わした。

この企画で名古屋に立ち寄った際、一緒にご飯を食べました。
これが最初にして最後の出会いとなりました。
たった一度の出会いでしたが、同じブログを書くもの同士、
食事しつつ会話に花が咲いたことを思い出します。

この部分に関し、こういう返答が来た。

タケルンバさんにお会いするために出かけていくときに
康祐が話してくれましたので覚えております。

何とも言えない気分になった。たった一度の出会いではあったけれど、私は彼の人生史にきちんと登場していた。

康祐の書き残してくれたブログやサイトを
一人でも多くの方に読んでいただけたら幸いです。

ブログをやる者として、親御さんのこの気持ちに応えるには記事を書き、リンクを貼る。それに尽きる。

是非読んでいただきたい。

この記事は読まれた方も多いのではないだろうか。これだけの立派な記事を書くブロガーが旅立ったのだ。他の記事にも目を通して欲しい。彼の新作はもう読めない。しかしこれまでに書いた記事は残る。ログは永遠だ。康祐は旅立った。しかしkousukeは、id:kousuke-iは生きている。
また、はてなの関係者にお願いする。彼のブログを消さないで欲しい。何か問題があり、ご遺族に連絡がつかない状況などがあれば、私に相談して欲しい。彼のブログを残すあらゆる協力をしたい。それがブログ書きの人情だし、縁があった人間としての人情だと思っている。ブログ書きの生命とは、書いたものに他ならない。それを残すことが彼の生存証明。生きていた証なのだ。
この記事を書くにあたり、ご遺族の皆様のご協力とご配慮を得たことに感謝します。
康祐さん。あなたに会えてよかった。安らかに。あなたのブログ記事は今後も読まれていくことだろう。あなたの書いた記事はあなたの親御さんが守ってくれる。微力ながら私も協力させていただきます。安心してお休みください。またオフ会で会えるさ。「天国オフ巡り」をやる日はそのうち来るさ。そのときに会おう。
この記事を康祐さんに捧げる。