環境税とか、たばこ税の話を見て思うのは、哲学というか、その税の目的が見えないことなんだよな。端的に言えば、次のどっちを目指すんだろう。
できるだけ多くの税収を得る(税収目的)
たくさんの税金を集めたい。その口実に環境を使う。喫煙者から集める。こういう考え方。
なので環境税であれば、環境に悪いことをじゃんじゃんしてもらった方が都合がいい。環境税は、基本的に温室効果ガスなんかの発生量に対して課税するわけだから、温室効果ガスをじゃんじゃん発生させる方が、環境税の税額は増える。
たばこ税も同様で、ガンガンたばこを吸ってもらった方が都合がいい。今のたばこ税は「1本あたり」で決まっているので、消費本数が増えると吉。なわけで、1本あたりが短い方が消費本数が増えるし、1本あたりの満足度が低い方がいい。低タールたばこが流行るのは、たばこを売る側も、1本あたりの税収を増やしたい側も、両方喜ばしいこと。まあとにかく量を吸ってもらいたい。
そのため、税率なんかも「税額の最大化」を目指して決められる。あんまり税率を引き上げて消費本数を減らしてしまっては、トータルの税収額が減ってしまうし、逆に安い税率にしておくと、消費量に対して得られる税額が低く抑えられたままになる。
その程良い妥協点を探し出して税率を決めるわけだ。マクドナルドとか吉野家が、「最もトータルの利益が出るハンバーガーの価格はいくらか?」「牛丼1杯いくらにすると最も儲かるか?」っていうのを考慮して商品の価格を決める話と一緒ですわね。
できるだけ税収を少なくする(非税収目的)
一方、その正反対の考え方もありうる。環境税にしろ、たばこ税にしろ、税額が減った方が望ましい。理想はゼロ。そういう思考だってありうる。
環境税は環境を良くするために、環境を悪くする行為に対して、罰金的に税を賦課するもの。いわゆる「負のインセンティブ」をかけるわけですよ。「環境を悪くさせると損をする」「温室効果ガスを発生させると税金をとられる」ことにして。一定の歯止めをかける。
ということは、目指すところは「環境を良くすること」であり、「温室効果ガスを発生させないこと」なわけよね。環境を良くするために課税するわけだから、当然、環境を良くしたい。温室効果ガスを減らしたい。たばこ税も同様で、「国民の健康のために」が目的ならば、「誰も吸わない」「1本も吸わない」が理想なわけよね。たばこが悪いなら、たばこを吸うことに負のインセンティブをかけるなら。
ということは、こっちの考え方の究極は、税収ゼロなんです。温室効果ガスを一切発生させない。たばこを誰も吸わない。これによって環境税の、たばこ税の目的は達成させる。こういう考え方もアリなわけ。「税収が目的じゃない!」こう力強く訴える人がいてもいい。「理想の実現のためだ!」という人がいてもいいと思うんだ。
どっちにするの?
で、問題はどっちの目的を掲げるのか、どっちの理想を善とするのか。その基本的な立場の違いによって、具体的な手法がまるで正反対になることなんです。片や税収の最大化。片や税収ゼロ。同じ環境税、たばこ税でも、目指す目的によって180度異なる。こうしたベースとなる考え方の話を抜きにして、環境税やたばこ税の話をしてもしょうがないだろうと俺なんかは思うわけ。環境税という税制を通して国をどうしたいのか。たばこ税を通して訴えたいことは何か。それがあっての議論じゃねえかと。
個人的な考え - 全部消費税にしちゃえよ
で、ここからは個人的な考えですが、俺はこういう個別税の考え方は嫌いで、全部まとめて消費税にしちゃって、消費税率を引き上げればいいんじゃねえかと思ってます。
まずたばこ税についてですが、これは酒税なんかもそうで、こういう嗜好品に課税するというのはあまり好きじゃない。狙いうちみたいな気がしてね。俺はたまたまたばこを吸わないし、別にたばこ税が上がったところで実害はないんだけれど、喫煙者にとってのたばこのように、俺にとって大事なものに課税されるリスクがある。例えば「パソコン税」とか「ゲーム税」とか「書籍税」とか。個別の商品に対する税というのは、どれもそういうリスクがある。たばこにかけて、それ以外にかけないという説得力のある反論ができる自信がない。「なんで酒に税金がかかって、ジュースはいいの?」とか。そういう疑問に答える自信がない。「別に水に税金かけてもいいじゃない」ということになってもおかしくないよな。「ミネラルウォーターはぜいたく品です!」って意見は的外れじゃないと思うし。
たばこ税を認めるというのは、そういう「自分が被るリスク」があるんだと思ってるんで。俺が好きなものと、喫煙者にとってのたばこは同価値だと思っているんです。どっちが上でどっちが下ってことはないし、自分の価値観を大事にしたいなら、相手の価値観も大事にするってのが俺の考え方。
一方環境税は、現状で揮発油税(いわゆるガソリン税)なんかがかかっているし、しかもその上に消費税がかかっている。二重課税状態なんですな、ガソリンは。個別の商品によってこういう問題がある。ある商品だけ高い税率が課されていたり、ある商品だけ二重に税金が課されている。
それならば、そういう個別税制を廃止して、消費税に一本化すりゃいいんじゃねえの? ってのが俺の考え方なんですよ。消費税というか、商品税という考え方よね。課税率がバラバラな状態をなくして、一律の消費税を課す。その方がシンプルでいいし、二重課税なんかも問題も解消される。その場合に消費税率は上げないとしゃあないな。10%から15%。将来的に20%まで考えないと。そういうイメージ。
ただ、こういうやり方にするなら、次の2点はクリアしたい。
低所得者対策
一応個別税に関しては「ぜいたく品に課税し、生活必需品は少なめに」という考え方もあるわけですよ。所得が少ない人への配慮というか。バランスという意味で。一律税率の消費税方式にすると、このあたりの配慮が欠ける。かといって特定の商品だけ消費税を減税するとかやると、税徴収や申告とかの事務的な手間がかかるし、「何故その商品は減税で、その商品は減税されないの?」みたいな話にもなってくる。こういう話には特例を作らない方が良く、一律の原則はなるべく守った方がいい。
そこで「消費税減免カード」なんかあるといいんじゃないでしょうかね。所得に応じて消費税を払わなくていいとか。写真付きのカードとかにすれば、なりすましの問題もねえでしょうし。
益税解消
もうひとつは益税の問題。消費税って受け取る側が代理徴収して、それを税務署に納める流れなんだけど、売上が一定額未満とか、登記して○年以内とかだと、その消費税を納める必要のないケースがあるのよね。その手元に残ったお金が益税。受け取る側の利益になっちゃう。
これを解消しないと不合理だわな。やり方としては源泉所得税なんかと同じように、毎月毎月受け取った分を翌月とかに申告納付する。年間でまとめて処理させるんじゃなくて、各月処理の方がいいだろうな。右から左へ即納付。面倒な計算抜きで、消費税として受け取った同額を納付させるようにすれば、面倒な処理はないだろうし。支払った消費税の還付は別に処理すればいいだけのことで。毎年一年分の消費税の納付と還付を同時に処理するから、面倒な計算があるわけでね。納付は納付、還付は還付で処理すれば事務手続き上もラクだ。
とまあ個人的にはこのような考え方をしております。環境税にしてもたばこ税にしても、そういう目的で税を集められるのは困るし、国に税と統治手段によって「たばこはダメ、他は良し」みたいな価値観を押し付けられるのは嫌いなんで。環境にしても国民の健康にしても、そういう特定のモノ叩きじゃないと思うんだなあ。「温室効果ガスが悪い」「たばこが悪い」じゃないでしょうよと。
皆さんはどうお考えでしょうかね。ではでは。