(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

すき家は深夜営業とかより運用面をなんとかしましょう

基本的には一歩前進。

大手牛丼チェーン「すき家」を展開する「ゼンショーホールディングス」は、長時間勤務など過重な労働が指摘された従業員の勤務態勢を大幅に見直すとして、10月1日から24時間営業の店舗の60%以上に当たる、およそ1200店舗で深夜営業を中止する方針を固めました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140930/k10014989321000.html

が、結局は運用次第なので、実効性があるかどうか評価できない。

閉店した後の仕事・開店する前の仕事

こちらが会社の正式リリース。

深夜=原則として0時から5時までの営業時間帯のことを指します。

http://www.zensho.co.jp/jp/news/company/docs/20140930skrelease.pdf

基本的には五時間閉店すると。しかしながら、ではこの五時間の間に仕事がまったくないか? というところが飲食店ならではのところ。
閉店時間が来る。お客様がいなくなる。レジを締める。売上を出す。掃除をする。次の営業日のための準備をする。施錠して退店する。
閉店担当のスタッフはざっとこんな仕事をするわけですが、〇時閉店の店で、この作業が何時に終わりますか? という問題が当然あるわけです。
二三時五九分の来たお客様をぞんざいにできない。そんな扱いをしたらまた炎上するし。で、なかなか帰らない。やっと〇時三十分に帰った。やっとレジ締められる。お掃除しないと。え? バイトくん終電? じゃ、先上がっていいよ。チッ、結局俺ひとりの作業かよ。ふー、やっと食器洗い終わった。やべ、明日はエリアマネージャーの巡回だ。床掃除って店長言ってたな。……クソ、ひとりじゃ終らねえええええ。
こんなケースよくあります。順調に終わってプラス一時間。へたすりゃ二時間、三時間は余計にかかる。〇時閉店なら二時退店とかあっても不思議じゃない。
そして開店。開店も閉店同様にいろいろ作業がある五時開店のお店で五時出勤なんてありえない。
鍋の火入れ。朝定食の準備。お米の炊飯。紅生姜や箸などのセット。看板を出す。のれんをかける。さあ開店。
こういう準備を考えると、最低でも一時間前出勤が妥当。四時出勤。……ってことは、五時間お店を締めるっていっても、実際に人がいない時間帯なんてわずかであるということがわかります。閉店後に一時間、開店前に一時間だとすると、完全な閉店時間は三時間。掃除とか準備がもっとかかれば、その三時間も削られる。

終電・始発の影響はないか?

郊外型の店舗は車などの出勤を前提にしているので、あまりこの手の問題は起きないのですけども、都市型の店舗ですと通勤手段の問題が関わってきます。電車の終電・始発時間の問題。
先ほどの例にも書きましたが、迅速に閉められれば終電セーフ。しかし少し手間取るとアウトみたいな人がいたとすると、その人を早めに退社させなければなりませんし、残った人はその分つらい。
また、運悪くひとりシフトで手間取ってしまったら。終電には間に合わないので、始発待ち。働く必要はないが、結局は帰れない。

鍵を預けられる従業員はいるか?

また閉店までのシフトと、開店からのシフトというように、深夜シフト・朝シフトという形態にする場合には、一時的にお店を閉めるので、鍵の問題が発生します。恒常的に「鍵を閉める人」と「鍵を開ける人」が必要になる。
お店の鍵を任せておける信用できる従業員は果たしてどれだけいるでしょう。そもそも従業員が少ないから、こういう問題になっているというのに。運用面に心配の種があります。
まあ、最終的には「鍵は社員」みたいな話になりがちなんですが、そうなると社員の限られた店舗では、その社員の負担が増します。休めなくなります。誰かは鍵を閉めなくてはならないし、誰かが鍵を開けなくてはならない。

開け閉め通しシフト

こういう諸問題が大きい場合、「じゃ、閉めの人は開けまでやろうよ」という解決方法が導き出されます。閉店をした人が、開店まで残る。閉店後作業と開店前作業の人を一緒にする。こうすると終電・始発は関係ないし、鍵の問題もない。
しかしながら、これだとお店は二十四時間営業ではないものの、お店の人は二十四時間営業となってしまう。営業時間が減るだけで、本質的な意味がない。過重労働であるという現実に変更がない。

仕事あたりの人員配置を楽にしないと意味がない

深夜営業を止める。二十四時間を止める。こうすると、確かに時間あたりの人員配置は楽になります。閉店中の時間帯に人をおかなくていい。その分は楽になる。これは簡単な計算。
しかしながら、終電や始発という通勤の問題はあるし、鍵などの運用面の課題もある。また、視点を「仕事あたり」に変えると実効性がないんです。お店が閉まっている時間に新たな作業をつくれば、結局は仕事が減らず、過重労働の状態は解消されない。
忙しくて掃除できない。深夜帯もひとりシフトで無理です。じゃあ深夜営業止めます。閉店中に掃除してよ。ひとりでもお客様が来ないならできるよね!
こういう発想だと根本が解決されない。負担を減らすための営業時間短縮であり、深夜営業の中止なのに、他の負担を用意すれば効果がなくなる。

問題は運用面

すき家の問題ってこういう運用面の問題なんだよなあ。従業員ひとりあたりの限界仕事量を超える業務が日々ある。だから従業員が疲弊する。辞める。お店も荒れる。汚れる。評判が悪くなって新規求人も来ない。だから現場は余計に疲弊する。こういう繰り返し。
今取り組んでいる改革は「従業員の仕事量を、適正な仕事量にする」ってところにあるはずなので、深夜営業の中止というお題目よりも、仕事をさせすぎない労務管理とか、従業員に負担をかけすぎない業務管理とか、そういうソフト面の改革が本質だと思うわけです。
とはいえ、一歩前進には違いはないので、これから改善に進むといいなあと。
老婆心ながら、こういう改革の最も強力な反対勢力は内部にいます。実力のある店長、エリアマネージャーとか。「俺やってた→お前もやれ」を平気で言うので。いやいや、それをやるのを当たり前にしてたからダメになったんでしょうよ。その常識を変えないと……。
元飲食系ブラック企業経験者からは以上です。