(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

大人の悪巧み発動ですか?

突然、民主党の小沢代表が辞任したわけですが……意図は何かね。よくない癖なのかもしれないけど、人の行動を額面通り受け取ることができないんである。何かあると思ってしまうのである。まして、それが小沢一郎であればなおのこと。「虎は死んで皮を残す」と言うけども、小沢は辞任をして何を残したのかがスゲエ気になる。
とりあえず会見の全文を見てみますか。

個人的にはこの部分が重要ではないかと。

 代表の辞職願を出した第1の理由。11月2日の党首会談において、福田総理は、衆参ねじれ国会で、自民、民主両党がそれぞれの重要政策を実現するために連立政権をつくりたいと要請された。また、政策協議の最大の問題である我が国の安全保障政策について、きわめて重大な政策転換を決断された。

 首相が決断した1点目は、国際平和協力に関する自衛隊の海外派遣は国連安保理、もしくは国連総会の決議によって設立、あるいは認められた国連の活動に参加することに限る、したがって特定の国の軍事作戦については、我が国は支援活動をしない。2点目は、新テロ特措法案はできれば通してほしいが、両党が連立し、新しい協力体制を確立することを最優先と考えているので、あえてこの法案の成立にこだわることはしない。

これ、凄く重大なこと。というのも、民主党を小沢がまとめきれずに大連立はご破算という形になっているけども、自民党だって「まとまったの?」という内容だから。時の首相が、党内とか、連立相手の公明党を飛び越え、いきなり民主党にこういう条件を出したことが重大。

 国際平和協力に関する自衛隊の海外派遣は国連安保理、もしくは国連総会の決議によって設立、あるいは認められた国連の活動に参加することに限る、したがって特定の国の軍事作戦については、我が国は支援活動をしない。

こういうことを福田が条件提示したと。で、どう考えても自民党がこれでまとまるとは思えないんだよなあ。これまでの安全保障政策全否定だしねえ。党内の保守派が諒とするはずもねえ。
で、民主党の突き上げがあって小沢は辞めたという形になってるけど、どちらかと言えば自民党公明党、そして「特定の国の軍事作戦については、我が国は支援活動をしない」という相手国・アメリカから福田首相が突き上げられるのが自然じゃないかね。少なくても党内に持ち帰って相談した小沢に対し、単独でこういう条件を出した福田。どっちが暴走かと言えば、福田の暴走の方が凄くねえですか?
話としてはこの件に近い。メリルリンチのCEO解任の件。

 オニール氏は、低所得者向け高金利型(サブプライム)住宅ローンの焦げ付きのあおりで赤字を計上した責任を問われていた上、役員会に無断で自社の売却を米大手銀行に持ち掛けていたことが明るみに出て、社内での信頼を失っていた。

この「役員会に無断で自社の売却を米大手銀行に持ち掛けていた」というところが福田と瓜二つ。党内に無断で政策丸投げを民主党に持ちかけていた福田。で、その話を持ちかけられた大手銀行なる民主党の代表が辞めたと。そういう構図に見えますな。
では小沢は何故辞めなくてはならんかったかと言うと、この話を表に出すためではないかと。政治家ってのは口の堅さが最低条件。それが信用となるわけですな。なので、この話を蹴ったというだけでは、福田が出した条件を表に出すわけにはいかない。今後も小沢がトップである限りは、あらゆる回線を開いておかねばならんので、回線を閉ざすことはできん。
ところが、辞めるとなればオッケー。辞める以上は合理的に説明しなきゃならんので、理由付けとして表に出さざるを得ない。また、トップでなくなるので、福田との回線を閉ざしてもオッケー。この話を知っているのは、密室で会談した小沢・福田の2人のみ。メリルリンチのCEOみたいに社内から解任の火の手をあげるには、小沢がバラすしかない。バラすならば身を賭す必要がある。自分のクビを賭けた大バクチに打って出たのでは。これがオレの仮説。自分のクビで、自民党のクビを獲りに行ったのでは。
で、実際、小沢は自分のクビを賭けるメリットはあるんだよね。

健康問題がある

民主党のトップなので、総選挙に勝って政権奪取となれば小沢政権になるわけですが、健康問題があるのでそれは難しい。今でも長時間の会議出席は避けてますからね。徹夜国会にも出ない。心臓が悪いので、首相の激務に耐えられるかどうか。
政権奪取が非現実的なうちはこれで良かったものの、ここまでリアルな話になってくると問題になる。であれば、程よいタイミングで辞めとくのはひとつの方法。「ただ辞めるくらいなら自民党にダメージ与えたれ」という発想はごくごく自然。

自民の痛手>民主の痛手

小沢辞任で民主党は混乱しとりますが、選挙間近の土壇場で混乱するより、早めに混乱した方がいいのですよ。先に混乱すれば、後で落ち着く。ましてスパッと身を引いたので、これ以上は混乱しようがない。混乱度は今がピーク。
ところが自民党はそうもいかない。何せ当事者が首相。簡単には辞められない。辞めればまた総裁選。そのダメージははかりしれない。また辞めない場合はじわじわとダメージが蓄積する。混乱を一気に解決する方法もないまま、火種はくすぶるばかり。公明党も連立解消に向けて動き出すかもしれん。民主党に声をかけたことによる、公明党との不和は多少あるはず。
となれば、一見民主党のダメージが深そうに見えるけど、自民党のダメージの方がデカい。参院選に向けてジワジワと安倍が追い詰められたように、総選挙に向けてジワジワ福田が追い詰められる。国会で法案は通らない。党内からは突き上げがある。公明党からの反発は増すばかりだし、アメリカもプレッシャーをかけてくる。こうした中で解散を迫られる。キツいのは福田じゃありませんかね。
ま、これはあくまで「小沢は意図がねえと辞任しねえ」という「小沢はできる男」を前提としたシナリオ。「実はボンクラでした」となりゃ成立しないシナリオではあるんですけどね。事実は当事者しかわからない。事実は小沢しかわからない。果たしてその意図は。……どうなりますかね。