今回は久々に選挙分析を。山口での補選を見ていきたいと思います。データは山口県選挙管理委員会のデータを使いました。
ではいってみまひょ。
どんな切り口で行けばいいのやら
分析してみるとは言ったものの、これがなかなか難しいのであります。その理由は市町村合併。山口2区内でも市町村合併が進み、過去の選挙との比較がしにくいのです。
山口県内でこれだけの合併があるわけですが、それがもう見事に山口2区にかかっているもんで。一番極端なところが那珂郡。前々回、2005年の衆院選のときには、以下の町村がありました。
そして今回はというと……あるのが和木町だけ。あとはほとんど岩国市に吸収。大畠町も柳井市に。
そんなわけで、従来有効な市部と郡部の時系列比較がなんの意味もありません。前々回郡部だった地域が、今回はほとんど市部なんだもの。また市部にしても、元々郡部だった地域の票が幾分入っているもんで、これまた横の比較ができもはん。
なので、今回は市町村合併に関係なく、前々回の衆院選から現在まで変わりなく郡部である次の地域のデータを使うことに。
周防大島町は合併してできたのですが、大島郡内の4町が統一された形なのでセーフ(久賀町・大島町・東和町・橘町)。大島郡としての規模に変わりはないので、この5町で見ていきます。
自民候補と民主候補の比較
それではまず最初に、過去3回の選挙での結果を見て行きましょう。わかりやすくするために、自民党候補と民主党候補の2者だけで比較してみます。自民党の候補は前々回2003年が佐藤信二氏、前回2005年が福田良彦氏、今回が山本繁太郎氏。民主党はいずれも平岡秀夫氏です。
(表1)自民候補・民主候補得票比較
2003 2005 2008 自民 91,087 104,322 94,404 民主 109,647 103,734 116,348
これをシェア比にすると、こうなります。
(表2)自民候補・民主候補シェア比較
2003 2005 2008 自民 45.4% 50.1% 44.8% 民主 54.6% 49.9% 55.2%
この数字から次の仮説が考えられます。
これがそもそもの実力ではないか?
平岡氏は過去3回とも10万票をとっている。しかも前回は小泉旋風の逆風下。そういうことから考えて、元々10万票をとる実力がある。実際、2003年と同じようなシェア比であった。ということは、今回は風があったわけでも、例外的な結果でもなく、実にノーマルな結果である。例外はむしろ前回の選挙で、小泉旋風があったことによる異常値。本来はこんなものでは? という推測が成り立ちます。
となれば、実は今回の自民敗北は失政とかの問題でないことになる。風が吹かない限りはこんなもの。むしろ予測どおりの結果であって、福田政権の問題でもなんでもない。福田首相の責任ではないことになります。この仮説が正しいなら、政局の問題にはならないことでしょう。
過去3回の選挙結果比較
では、この仮説が本当に正しいか。過去3回の選挙結果を比較してみます。比較対象は先にあげた5町です。
03票数 05票数 08票数 03シェア 05シェア 08シェア 自民 8,407 8,133 7,444 59.1% 59.1% 53.8% 民主 5,810 5,632 6,390 40.9% 40.9% 46.2%
(表4)和木町の自民・民主比較
03票数 05票数 08票数 03シェア 05シェア 08シェア 自民 1,453 1,634 1,314 43.9% 48.2% 41.0% 民主 1,859 1,755 1,892 56.1% 51.8% 59.0%
(表5)上関町の自民・民主比較
03票数 05票数 08票数 03シェア 05シェア 08シェア 自民 1,602 1,509 1,669 59.8% 58.8% 61.3% 民主 1,075 1,058 1,052 40.2% 41.2% 38.7%
(表6)田布施町の自民・民主比較
03票数 05票数 08票数 03シェア 05シェア 08シェア 自民 4,513 4,930 4,582 50.0% 53.0% 46.5% 民主 4,507 4,366 5,265 50.0% 47.0% 53.5%
(表7)平生町の自民・民主比較
03票数 05票数 08票数 03シェア 05シェア 08シェア 自民 3,493 3,819 3,805 47.1% 50.4% 47.0% 民主 3,928 3,756 4,289 52.9% 49.6% 53.0%
そしてこの5町を合計するとこうなる。
(表8)5町合計の自民・民主比較
03票数 05票数 08票数 03シェア 05シェア 08シェア 自民 19,468 20,025 18,814 53.1% 54.7% 49.9% 民主 17,179 16,567 18,888 46.9% 45.3% 50.1%
かつて自民党と言えば農村をガッチリ抑えてという印象があっただけに、この数字はショッキング。何せ郡部で負け。それも、あれだけの大勝利をもたらした小泉旋風でさえ、シェアを1.6%しか伸ばしていないのに、今回は4.8%も下げている。前々回と比べてもマイナス3.2%。全体では前々回に対し、マイナス0.6%であることを考えると、牙城である郡部が大きく揺らいでいると考えるべきでしょう。
となると先ほどの仮説は間違い。実力どおりどころか、そもそもの実力以上に負けてます。
果たして福田首相で選挙を戦えるのだろうか
ここからは予想ね。誰でも手に入るデータで検証しても、農村部で自民党が揺らいでいることは明白。細かいデータが上がってくれば、よりリアルな現実が浮かび上がってくることでしょう。そうなった場合、果たして福田首相で次の総選挙を戦えるか。ここに混乱の目がある。政局の予感。
結論から言えば、福田首相の退陣は近い気がします。極端な話、安倍首相のときみたいに、今日、いきなり退陣の一報が流れてきても、オレは驚かないです、ハイ。そのくらい深刻な選挙結果。「福田では戦えない」という大合唱がはじまるのは目に見えてます。最速で今日。ゴールデンウイーク明けにいきなりというパターンもあるだろうし、サミットまでは……どうかなあ。もつとは思えない。風雲急を告げる展開になりそう。
もっとも、これはオレの予測。あまり気にせずに。昨年の参院選はほぼピタリだったとはいえ、2005年の衆院選は大外しをしております。目も当てられないほど外しております。いち市井の政治ウォッチャーの予測ということでひとつ。でも……福田政権は長くないぞ。
追記(2008/04/28 18:20)
念のため、参議院選挙も含め、2001年以降のデータをつくってみた。
(表9)5町合計の自民・民主得票比較(2001年以降)
01参院 03衆院 04参院 05衆院 07参院 08衆補 自民 22,521 19,468 20,827 20,025 20,270 18,814 民主 9,123 17,179 13,663 16,567 13,096 18,885
(表10)5町合計の自民・民主得票シェア比較(2001年以降)
01参院 03衆院 04参院 05衆院 07参院 08衆補 自民 71.2% 53.1% 60.4% 54.7% 60.8% 49.9% 民主 28.8% 46.9% 39.6% 45.3% 39.2% 50.1%
逆風が吹いていた昨年の参院選でさえ、この地域では民主党に対し6割のシェアを維持していたことを考えると、自民党の農村部における退潮ぶりは明らか。想像以上に深刻な数字だぞ、こりゃ。