(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

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中国とは株式会社中国共産党である(タケルンバの中国入門)

この前のチベット暴動まとめ記事が好評だったので、調子にのって中国について語っちまいますか。

中国ってなんだ?

中国は国じゃありません。え? いきなり過激すぎるって? 国じゃなきゃなんなのって?
じゃ改めて。中国では国じゃありません。国の形式をとった組織です。あくまで「国のようなもの」であって、国じゃありません。どっちかと言うと、会社の方が近い感じです。「株式会社中国共産党」と言った方がいいですかね。国より会社が近いです。
先ほどサラッと「株式会社中国共産党」と書きましたが、中国という国は中国共産党のものなのです。これ重要なところ。中国という国は国民のものではなくて、中国共産党のものである。だから国というより会社に近いわけですよ。
中国には国のオーナーがおります。中国共産党というオーナー。王様や皇帝、天皇という王制でもなく、かと言って国民がみな平等で、話し合いという民主主義によって運営しているわけでもない。中国共産党という組織が株式を独占し、取締役会や株主総会で何でもかんでも決めてしまう会社のような組織。中国はそのような国なのです。
その証拠をいくつか挙げましょう。
まず人民解放軍。中国の軍隊ですね。これは中国共産党の一組織です。中国共産党があり、その中に中央軍事委員会がある。そしてその中央軍事委員会に実際の軍隊がぶら下がっている仕組みです。中国の国軍は中国共産党の軍事部門に過ぎないのです。
そして中国の国会にあたる全国人民代表大会。いわゆる全人代。この構成員はほとんど中国共産党員です。少数民族の代表や、非共産党員もいますが少数。あくまで中国共産党の議決機関。「人民代表」とあるから「国民代表」と勘違いしますが、中国では「人民」と書いて「中国共産党」と読みます。人民解放軍もそうですね。あるいは「人民元」もそうです。あれは中国共産党のお金です。そもそも国の名前も「中華人民共和国」です。「人民と書いて共産党と読む」。こう思って差し支えありません。
ま、決定的なものは憲法にあるんですけどね。

中国各族人民将继续在中国共产党领导下

中華人民共和国憲法(中英対照)

これを訳すと「中国人民は、引き続き中国共産党の指示の下」ということ。憲法にあるわけですな。「国民は中国共産党の下ですよ」と。「中国共産党の方が大事ですよ」と。これを国として決めちゃっているわけです。憲法に。
だから中国は中国共産党をオーナーとする会社なのです。国じゃないんです、はい。

どういう人が偉くなるの?

会社なので、会社のためになることをした人が上に行きます。会社で言えば利益を出した人、トラブルを解決した人が出世しますよね。上司の命令を守り、上司の期待に応え、上司の予想をいい意味で裏切る成果をおさめる。それと同じです。全く変わりません。
現在の国家主席である胡錦濤がいい例です。彼は1989年、チベット自治区共産党書記に就任しました。統治責任者になり、当時起こっていたチベット独立運動を抑えるべしという指示を受けていました。そこで彼はその指示に従い、3月にはラサに戒厳令を布告。徹底的な弾圧を行い、混乱を抑えました。
株式会社中国共産党という会社の中では、これは出世の材料となります。わかりやすくたとえ話にしましょう。こういうことをすると偉くなります。

チベットリアルすぎるたとえ話

昔々のことでした。株式会社中国共産党チベット株式会社を敵対的買収で傘下におさめました。これは違法行為を伴うエグイ方法で、周りの人からも「それはヒドイ」「あまりにエグイ」と声をあげましたが、オーナーの毛沢東さんは「世の中金や、儲かればいいんや、うっしっし」と意にもとめず、敵対的買収を敢行。社内の信望も高かったダライ・ラマ社長や、それを支持する社員を追い出し、「チベット株式会社」を我が物としました。
その後、我慢強いチベット株式会社の社員たちは、不満の声を上げつつも、仕方なく親会社から送り込まれてきた社長の下で働いてきました。「金や、金や。もっと働かんかい!」「利益が上がれば、わしは栄転できるやさかいなあ。ガッハッハ!」と、社員をこき使う社長。
一方、追い出されたダライ・ラマ社長は、「打倒・株式会社中国共産党」を合言葉に新たに別会社を立ち上げようとしますが、どこの銀行も相手にしてくれません。
「うちは中国さんと取引がありますんで」「中国さんににらまれると商売にならんのですよ」「おたくさんとは仕事するなと言われてます」
そういうつれない返事が多い中、やっとのこと見つけたのがインド銀行。
「うちは中国さんは気に入りませんねん。手貸しまひょ」
こうしてインド銀行の支援を得て、やっと独立。「いつか見ておれ。社員たちよ、会社が大きくなったら迎えにいくからな」と対抗心を燃やすのでした。
そしてある日のこと、ある出来事が起こります。
「俺たちはダライ・ラマ社長の下で働きたいんだ!」「ダライ・ラマ社長を戻せ!」「じゃなければストライキだ!」
かつてのチベット株式会社は、株式会社中国共産党チベット支店となっていました。その支店の従業員が、本社から送られてくる支店長の横暴に怒り、労働争議に発展。ピケをはったり、社内の備品を破壊するなどの行動に移しました。
そこで困った株式会社中国共産党。本社で幹部会議を開き、対策を協議しました。
「どうする」
「あの支店には有望な顧客がいる。手放せんぞ」
「誰を送り込めばいい」
「そうだ。貴州支店の胡錦濤くんはどうだ。彼は若手だが、なかなかの切れ者だよ。彼を送り込んではどうだ」
「よし。では胡錦濤くんをチベット支店長にしよう」
そこで胡錦濤は本社の会議に呼ばれます。
「えー胡錦濤くん。君をチベット支店長にすることにした」
「ありがとうございます」
「やるべきことはわかっているね?」
「わかっております。労働争議の鎮圧……ですね」
「その通りだ。歯向かうものはクビにしても構わん。他の支店に混乱が飛び火しては面倒だからな」
「御意」
そしてチベット支店に派遣された胡錦濤は次々と手を打ちます。まずはピケを実力行使で排除。バリケードなどを取り除きます。そして支店内が非常事態であることを宣言。「会社に従わないものはクビにする」と告げ、実際に歯向かうものを次々とクビにしていきます。
また社内で破壊活動をしていた者に対しては、本店から派遣されてきた体力自慢の者をあて、実力で制圧していきます。相手の骨が折れようとケガしようと容赦ありません。
クビにされた社員、ケガをした社員、そしてこの光景を遠くで見ていた人たちはそのあまりに苛烈なやり方に「ヒドイ」「あいつは鬼だ」「あの会社は狂っている」と言いますが、胡錦濤は意に介しません。
「歯向かうヤツが悪いのだよ」
やがてこの労働争議は沈静化。チベット支店もすっかり落ち着き、この労働争議を治めたことで胡錦濤の評判はうなぎのぼり。
「彼はできるねえ」「ああ、なかなかだ」「難しい任務と思っていたが……やるものだ」
混乱が長引けば、せっかく手に入れたチベット支店を手放す羽目に陥る可能性もありましたが、胡錦濤の機敏且つ厳正な対処でその危機を回避したのです。
その結果、彼は本社の部長に栄転。取締役、専務と順調に出世し、遂には社長になったとさ。めでたしめでたし。

中国はチベット問題で妥協する?

しません。絶対にありえません。
何故なら、株式会社中国共産党にとってチベットは財産です。既に手に入れたものなのです。企業がむざむざと売上を手放すことがないように、中国共産党が領土を手放すことはありません。手に入れようとしても、手放すことは絶対にありません。
これはあらゆる役職の人間もそうです。部長は部の利益、課長は課の利益の責任者であるように、中国共産党の人間も職務に応じた責任を負っています。株式会社中国共産党にとっての利益に対する責任です。
ですから指導部は「チベットを手放すわけにはいかん」と言い、それを受けて中間管理職は「殺してもいいから鎮圧しろ」と言い、現場は「鎮圧すればいいんだから、殺せ」となります。人の命とか人権は関係ないんです。それが株式会社中国共産党の利益になるかどうかが大事。株式会社中国共産党の利益になれば、いくら犠牲が出ようとしったこっちゃないんですよ。警察や軍が普通に発砲するのはこれが理由です。人命よりも株式会社中国共産党の利益が優先なのです。
また、これは会社組織であれば当たり前でもあります。上司の指示は絶対ということ。会社なので、上の命令を守り、結果を出すことが大事なんです。それを破ればクビなのです。逆に指示を守り、結果を出した者は出世します。会社というものはそういうものです。
ここに海外の意見とかは入る余地はありません。あくまで株式会社中国共産党の中の問題。他はどうでもいいんです。何を言われてもいいんです。自分たちが儲かればいいんですよ。周りの国は、国というシステムの非営利企業ですが、中国は中国共産党がオーナーの営利企業なんです。オーナーが儲かるようにしないと怒られるのです。
なので、中国が各地に進出したり、非常に資本主義的に見えるのは、こういう背景が原因です。国として商売しているのです。中国という国が、株式会社中国共産党として活動している。こう考えると説明がつきます。お金が欲しいのです。利益が欲しいのです。それは社員を食わせるためであり、会社を大きくするためであり、オーナーである中国共産党を儲けさせるためなのです。そのために邪魔なものは叩き潰す。そういう競争本能を持っているからだ。こう考えるとわかりやすいと思われます。
以上、タケルンバによる中国入門でした。
(追記)2008/03/17 7:25
創業者の毛沢東亡き今は、国家主席というトップの胡錦濤ですらも会社の歯車のひとつです。
会社で言えば胡錦濤は会長やCEOにあたるわけですが、舵取りを間違えればトップである彼ですら失脚することでしょう。それは他の幹部もそうです。副主席になった習近平は副主席ということで、次期国家主席が有力視されていますが、彼も何かチョンボをすれば次はありません。職を解かれてハイさようなら。そういう意味で、厳しい会社なのです。
ちなみに、こういう体制化の中国でクーデターはあり得ません。あっても、経営者の交代です。誰がトップになるかという社内の紛争はありえても、会社が倒れることはないです。何故なら、チベットに向けた刃が自分に来る恐さを知っているからです。笑顔で頬を叩きあうまではあっても、グーで殴りあうことはない。
また、軍がクーデターを起こし、指導力を握ったとしても、到底政権転覆とは言えません。軍事部門が会社全部を統括するというようにシステムが変わるだけで、株式会社中国共産党の実態は何も変わりません。これらは「誰が上か、どこが上か」という小さな問題であって、会社を根底から揺るがすことはありえない。オーナーがいなくなったことで会長以下働く人全てがコマとなり歯車となり、組織内がどうなろうと生き残るシステムができあがっています。株式会社中国共産党は世界最強最大の会社として、内部崩壊をしないシステムをつくりあげたと言えましょう。