腐ってません

オレは床屋に言わせると最低の客らしい。髪質がだ。

多い

髪の量が多いので、切るのが面倒だと。髪の毛が多ければ多いほど手間がかかるので面倒だと。そういうことらしい。
特に困るのがスキばさみ。やたら入れられる。らめぇ。

太い

太いっていうのも面倒らしい。しかもオレの場合、太くて多いから、他の人よりずっしり手に重量がくるらしい。
「すごく太いです……」

硬い

髪が硬いと切りにくいらしい。指の力がいるらしく、疲れるそうだ。おまけに太くて多いときてる。困るそうだ。
「すごく硬い（以下略）」
なので、オレは床屋にとってはHardな敵キャラらしい。「多い・太い・硬い」の三冠王。
その一方、マッサージ屋には喜ばれる。知り合いのマッサージ屋曰く「みんなオマエの体みたいだったらいいのに」だそうだ。

肩幅がでかい

ガキのときに水泳をたしなんでたせいで、そこそこの肩幅があるのだけれど、マッサージをするときにある程度肩幅があると、つかみやすくてやりやすいのだそうだ。

筋肉の硬さが程よい

筋肉質だと指が入りにくいので揉みづらいのだが、逆にブヨブヨでも指が入りすぎて揉みづらい。その点、オレの体は丁度よいらしい。つかみやすく揉みやすい。適度な肉質。……和牛か。

体の力が抜けている

体に力が入っていると、マッサージしにくいらしい。世の中にはマッサージとなると体をこわばらせる人もいるそう。そういう人をムリにマッサージすると、いわゆる揉み返しがひどくなるので、怖いらしい。
「へえ、そんなオレってラクなんだ」
オレの言葉にマッサージ屋答えて曰く。

ラクだよ。腐乱死体みたいで。

「腐乱」は余計だ、腐乱は。