(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

議論を巡るやりとり帳

昨日、Twitterでいくつか議論に関してやりとりをしたんだけど、その内容が結構おもしろかったので、こちらにフィードバックしてみる。

Q.「感情論」の反対語は?

A.「論証論」

「感情」の反対語を考えると、「理性」とかがあてはまるので、「理性論」みたいな言葉でもいいと思うんだけど、自分は「論証論」という言葉を用いています。というのは、言葉をこう分解するとわかりやすいから。

感情論……覚と理によって説明する手法*1
論証論……理と明によって説明する手法

ともにあることを説明するときの方法論。「人に説明する」「他人に伝える」「外に発信する」という目的をかなえるために、どういう方法をとるかの手段の違い。そして「感覚と情理」か「論理と証明」かという道具の違い。こう考えるとわかりやすいかと。

Q.「感情論」は悪い手段なのか?

A.手段なので良いも悪いもない

あくまで「モノを伝える」が目的なので、伝わりさえすれば、感情論だろうが、論証論だろうが実は何だっていいんです。トウ小平の「黒い猫だろうが、白い猫だろうが、ネズミをとる猫が良い猫」ではありませんけども、伝わる方法がいい方法なんです。目的と手段を履き違えてはいかんのです。
但し、一点問題があって、感情論は感覚と情理に拠る説明方法なわけですが、感覚も情理も人それぞれ違うものなので、共通化されていない。一方、論証論は特にデータなんかは誰が見ても数字は数字なので、客観的であるし、共通化されうる。その共通認識の有無という差が出てきます。説得性の差ですね。相手が思ってもいないことは、いくら情動に訴えても伝わらないわけです。
なので、感情論を使う場合は共通認識があるかどうかが前提として必要になります。あれば伝わるし、なければ伝わらない。

議論で最も重要なのは前提の共有

知らないと損するフレームワーク思考活用法 - GoTheDistance

まさにこういうところじゃないでしょうか。

Q.競技ディベートで勝つポイントは?

A.主張の短所を守ろうとするあまり、長所を崩す主張をしないこと

ディベートの場合、ある論題に対して是非という両極端の立場に分かれて戦います。肯定側・否定側ということですね。で、基本的に立場の有利不利がない論題を用いるのが普通です。その理由は簡単で、有利不利が事前にある論題は、ディベートをする前に勝敗が決まってしまうから。いわゆる「ジャンケンディベート」になるわけですよ。立場が決まった瞬間に勝敗が決してしまう。
そういう論点を使うわけなので、基本的には両者に長所短所があります。強い部分があれば弱い部分がある。その長所短所は大体トレードオフなのです。長所が発生するものには、短所を伴う。よく「大きな政府」「小さな政府」なんて話がありますが、「福祉制度が充実しますよ!」って話には当然に「税金が高くなりますよ!」が背景にあるはずなんですよ。国の負担があるわけですからね。そのお金は税金で集めないといけないわけで。
そこで「福祉は良くします。税金も上がりません。みんな幸せになります!」と言うと、どうもウソくさくなるわけです。ありえない。「税金が上がる」というデメリットを補いたいのはわかるけども、それだと「福祉が良くなる」というメリットが怪しくなるわけです。総花的な主張をすると、何かが壊れる。
つまり言いたいことを効果的に言うには、ある程度の短所、デメリットの発生を受け入れつつ、それを上回る長所の存在、メリットの発生に目を向けたほうがいいのです。そこを言いつくろったり、目を背けると、本来強調すべきことの正当性まで失ってしまう結果になる。マイナスにこだわって、プラスを失うことをしてもしょうがないのですよ。
以上、論理系の3つのお話でした。

*1:Twitterでは「感情と情理」と打ってしまったが、それはミス。二重になってもうた。