(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

「だけ」発想を捨て、「も」発想へ

あんまり深く考え込まないようにしてるんですよ。で、考えるときは、なるべく思考を単純化するために、偏った立場をベースにして考えてみることがあるんですが、物事に極端な答えなんてないんです。ステレオとかの重低音のチューニングにように、それぞれが落ち着くポイントがあって、それは最大とか、最小とかの両極にはなく、真ん中付近のどこかにあるのが常なんです。
例えば、働いてるとこんな話が山ほどあります。

  • 商品開発と営業、どっちがえらい?
  • モノをつくる人と売る人、どっちがえらい?
  • 制服組とスーツ組、どっちがえらい?

まあよくある話ですよね。飲み屋さんでのグチネタとしては定番です。「俺がどんなにいい商品つくっても、あいつらが売らねえんだよ。開発の苦労をわかってるんか!」「頭下げてモノを買ってもらう苦労を、開発の連中は(以下略)」っていうね。誰もが耳にした事のある対立概念。
でも、こういった話の答えなんて簡単なんです。

どっちもえらい。

はい、これ。これだよ。両方えらいんだよ。えらい。みんなえらいよ。売るのも作るのもえらい!
……っていうだけなんだよね。上も下もないんだよな。例えて言うなら車の両輪でして。車輪の大きさが同じで、同じ回転だからこそ曲がらずにまっすぐ進む。片方に偏れば曲がる。片方が動かなければ、その車輪を中心にグルグルまわるだけ。両方大事なだけよ。車の両輪。
企業活動でいえば、モノを売って、お金がなければ何にもできない。会社が存続できない。だから営業はえらい。売上をとってくるわけだから。そして開発は、その売るためのものをつくるわけだからえらい。いくら営業が頑張っても、売れるものがなければ売れない。売れるものをつくる開発は、やっぱりえらい。
どんな商売、職務でも同じことだと思うんだよね。工場で働く人もえらい。実際にモノができなければ売れないし、開発してもそれが現物にならなければ絵に描いたモチ。つまり行き着くところは「職に貴賎なし」なんですよ。いつだって本質は平凡なものなのです。当たり前のことって、誰しも聞いたことあるし、感覚的にわかってるんだけど、わかってるからこそなおざりにされるような。

あくまでも役割の違い

人間的な上下でみんなとらえてしまいがちなんだけど、本質は役割だと思うな。上司・部下の関係だってそう。上司という役割と、部下としての役割がある。人としてえらい・えらくないの関係じゃない。部下としての役割上、引くべきときがあり、甘受しなければならないことがある。逆に上司の役割として、人前だろうがなんだろうが、ガツンと言わなければならないこともある。そういう仕事上の役割の差であって、それを他に持ち込むとややこしい。
ま、ある意味で役割というのは仮の人格であるわけでしてな。どんな優しい人でも、厳しさを求められる仕事をしているなら、それをしなければならない。俳優における芝居の役柄と一緒でね。その役に染まらないといけない。それが仕事だし、プロフェッショナル。逆もしかりで、冷酷な人格でも、優しさを求められる仕事なら、優しくなれないといかんわけで。それだけのことだよ。
なので、理想型も結局はこうなる。

両方の立場を理解できると良い

売る側はつくる側の感覚がわかるといいし、つくる側も売る側の感覚がわかるといい。これもまた平凡な話。価値観がふたつあるなら、両方わかった方がトクだよね。そういうこと。両方理解し、実践できると、片方だけよりは有利だし、そういう人が多い会社は、社内の軋轢が少ない気がします。
「売れるものをつくる」にたどり着くには、営業として「何が売れるか」が理解しており、尚且つ自分自身につくれる技術がある。あるいは開発としてつくれる実力がもともとあり、「何が売れるか」という感覚もある。このどっちの道でもいいわけです。で、必要なのは営業的素養と、開発的素養。つまり両方。どっちもあるといいんです。平凡な話ですね。でも当たり前のことですね。
あと、できればこの発想もあるといいな。事務屋としての発想だけど。

金勘定ができるとさらに良い

売る・つくるも大事なんだけど、金勘定も大事なんです。やっぱり欠かせない。お金は社会の血液で、同時に会社としての血液でもあるわけで。お金がなければ給料も出ない。当たり前ですね。
なので、モノを売る・つくるという発想の中に、「お金を如何にして手に入れるか」「会社の会計状況をどうやってよくするか」という発想があるともっといいんです。手形より現金の方が、リアルに会社の資金繰りは良くなるわけですよ。キャッシュフローがプラスのうちは潰れませんしね。「すみませんが、半金は振込みで」の一言がどれだけ会社を助けるか、ってケースは往々にしてございます。
でだ。これは全部できるといいね、どれがえらい・えらくないの話じゃないよねの話なんだけど、同時にこれも言えてしまう。

ひとつだけの視点だとダメ

これまで「売る」「つくる」「金勘定」という3つの視点、立場を出したけど、どれかひとつだけじゃダメなんです。
売るだけにこだわってしまえば、モノの品質や内容とかが置き去りになる。
つくるだけにこだわれば、売れるものができなくなる。
金勘定だけにこだわれば、会社としての中身がなくなる。
こういうことになる。どれかが上、どれかが下ではない。どれもこれも大事。

「だけ」の発想ではなく、「も」の発想を。

結論としてはこういうことだなあ。自分が対立する立場があるのなら、その立場を理解するといいですよ。自分に足りない考え方がわかるから。そして、そういう考え方をたくさん身につけることで、発想豊かな人間になれると思いますです。はい。