先日の音楽業界についての記事ですが。
- (過去記事)音楽業界はどうなるんでしょうね - 音楽メディアユーザー実態調査で考える - (旧姓)タケルンバ卿日記 2009-03-19
ブックマークコメンツをはじめ、「何故、着うたとかを含まないのか」と。まあ突っ込まれたわけなんですが、気付かなかったわけじゃないんですよ。
id:takerunbaがレコード・CDの生産、販売数にダウンロードコンテンツを合算しなかったのは、日本レコード協会のデータ自体がCD・レコードとダウンロードコンテンツを分けて表にしているからではないか、と思う。
http://d.hatena.ne.jp/ululun/20090320/1237518219
これは理由の一部ではあるんだけどね。
データとしての一貫性を保てない
ダウンロードコンテンツってのは、ここ最近の概念だし、昔にはなかったもの。これを混ぜて論じるよりも、CDやレコードという既存の物流での商品を軸に考えたほうが、時系列で比較できてわかりやすいと思ったんだな。「過去10年」ってくくりにしたところで、10年前に着うたもiTunes Storeもないわけで。
現実にデータ元にした日本レコード協会のサイトでも、ululun氏が指摘するようにデータを別に分けている。そして何よりも問題なのがだ。
2005年からのデータしかない。
……2004年までは?
データが別になると、こういう問題が出てくる。比較しようにも、比較対象が存在しないわけなんで。
2002年12月にKDDIがauブランドで開始し(CHEMISTRY「My Gift to You」が世界初の着うたである)、2003年12月よりボーダフォン日本法人(現ソフトバンクモバイル)、2004年2月よりNTTドコモも同様のサービスを開始、同年12月よりボーダフォン日本法人のVodafone 3G(現SoftBank 3G)端末向けにロングバージョンを開始している。
着うた - Wikipedia
「着うた」自体は2002年からはじまっているのに、データは2005年から。となると、ダウンロードコンテンツを加味した場合、2005年以前がどうしても不正確になる。
もちろん2005年以前のデータを自分で調査し、割り出せばCDなんかのデータと同様に、時系列の比較ができる。が、さすがにそこまでやってられん。データがネットに転がっていれば自前で計算するけど、日本レコード協会のサイトにデータ元が示されていない以上、そこから先を調べるのも難しいし。さすがに限界がありますよって。
データ量が少ない
あとだ。そもそも公表されているデータ自体少ない。公開されている4年分のデータで、何が言えるかという現実的な限界もあるわけで。概念もない。データも少ない。ここから強引に結論を導くのはあれかなあと。そういう判断があったわけでして、ええ。
だいたいタイトルに「どうなるんでしょうね」って書かれていて、当の本人も自分のわかる範囲でのデータを並べる以上のことは出来なかった的なことを言っているのだ。
しょせんブログだろ? | おごちゃんの雑文
なので、全体がこういう弱気な感じになったわけです。仕方ないんですよ。わからんもの。わからん部分があるんだもの。わかるほどのデータがないし、わかるほどの器量もないので。「結論がない」という指摘は至極ごもっとも。でも、無理に言い切るよりはいいんじゃないすかね。意外と慎重な面もあるのよ、ワタクシ。
ダウンロードコンテンツは伸びている!
力強く言えるのは、このくらいなものだしなあ。わざわざ言うほどのことでもないね。皆さんご存知の通りですよ。今までになかったものをみんなが使っている。その分のパイは増えている。当たり前ですね。
音楽市場の退潮は明らか
ただ、まだまだダウンロードコンテンツのパイは小さいんですよ。現状としては音楽市場全体の中で、CDなどのリアル物品が占める割合は大きい。そしてダウンロードコンテンツがあろうがあるまいが、音楽市場全体がしぼんでいるのは明らかなわけですよ。
(表1)日本の音楽ソフト生産金額の推移(単位:百万円)
1979 | 262,589 |
---|---|
1980 | 292,844 |
1981 | 288,65 |
1982 | 281,037 |
1983 | 281,663 |
1984 | 274,111 |
1985 | 281,337 |
1986 | 298,920 |
1987 | 311,584 |
1988 | 342,947 |
1989 | 383,332 |
1990 | 387,770 |
1991 | 449,252 |
1992 | 478,247 |
1993 | 513,679 |
1994 | 519,246 |
1995 | 574,031 |
1996 | 583,862 |
1997 | 588,019 |
1998 | 607,494 |
1999 | 569,559 |
2000 | 539,816 |
2001 | 503,061 |
2002 | 481,454 |
2003 | 456,179 |
2004 | 431,269 |
2005 | 422,210 |
2006 | 408,408 |
2007 | 391,113 |
2008 | 361,775 |
こちらは過去30年間のデータを表にまとめたもの。1998年に向けて増加し、そこを境に減少していった感じがよくわかる。
ちなみに2007年の額は1990年と1991年の間に位置し、2008年の額は1988年と1989年の間となる。ともに約20年前の数値。「失われた10年」とはよく言う話だけども、10年どころか、20年が失われた形。
これは着うたが生まれる前からの傾向であるので、着うたの影響を考慮に入れなくても、十分に音楽業界の退潮傾向は言えるのではないですかね。
ダウンロードコンテンツを含めても芳しくない
それにだ。そもそも、ダウンロードコンテンツを加味しても、そんな芳しくねえんです。
(図2)日本のオーディオレコード生産金額・有料音楽配信売上金額の推移(単位:億円)
2005年・2006年・2007年とほぼ横ばいで推移してたけども、2008年でついに減少。ダウンロードコンテンツの増加分でも、CDなどでの減少分を埋め合わせられなかった。
ただ、いずれにせよダウンロードコンテンツのデータは2005年以降のもの。たかだか4年程度のデータ。これだけで断定することはできない。これだけでネガティブな話にも持って行きづらいし、かといってポジティブな話にもできない。2005年からの3年間の横ばいという事実をもって、今後もなんとかなるという発想をするのは、さすがに楽観が過ぎるような。現実に2008年は減少してるわけだしさ。
それに2004年はダウンロードコンテンツの数字がないだけで、それを加算すれば、実際は2005年の数値を上回ってたかもしれん。数字がない以上は推測にしか過ぎないけども、推測にしか過ぎないということは、いずれの結論も導けないっちゅうことですよ。不明確な事実からは、明確な結論は導けない。
ただ、このアメリカの推移は示唆的ではあるけどね。
(図3)アメリカの音楽出荷金額の推移(単位:百万ドル)
2004年・2005年と横ばいだったし、2006年も微減でおさえていたが、2007年でがくんと落ちた。2008年のデータがないので何とも言えないがアメリカのような現象が日本で起きないとは言えない。その可能性はある。
ただ、現状で手に入るデータと、俺の処理能力では、明確な結論を得ることはできないし、証明することもできない。これが冷厳なる事実。何かを言い切れるほどの根拠がない。だから書かない。着うたに関して言及しなかったのは、そういう事情があるのでございますよ。
現在の学生が社会人になったとき、大きな変化が起きる可能性がある。
http://d.hatena.ne.jp/ululun/20090320/1237518219
結論ではこう書きましたが、携帯電話で着うたを買ったり、iTunes Storeで曲を買ったり、YouTubeやニコニコ動画で歌を聴くのが当たり前の世代が大人になり、自分で使えるお金を手にしたとき、消費動向にどういう変化があるかというのは、現状では読めない。少なくても俺はわからん。
なので、わかる人は是非分析してちょうだい。わしゃ一石は投じた。続きを是非よろしく。