(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

羽田ハブ化の論点

羽田空港ハブ空港化の話がかしましいわけですが。

この話はいくつかの論点に分けないと、ややこしくてかなわん。

羽田空港との共存

そもそも成田空港はもう容量が限界でしてね。

2)成田国際空港の整備
成田国際空港は、昭和53年の開港以来、日本の表玄関として重要な役割を果たしてきたが、現時点でその処理能力がほぼ限界に達しており、強い増便要請や新規乗り入れ要請に対応できない状況にある。

3 航空ネットワークの整備

成田の年間処理能力(発着回数)は20万回。

そして着陸回数はその半分に届こうという数値。もう限界なわけね。現実に就航したくでもできないとこもあるし。
ただ、実は羽田も限界なのよね。

こんな感じで昼間は限界。たた朝とか夜は空いているし、どっちみち成田は夜間・早朝の発着ができない。来年、新滑走路ができれば昼間もやや余裕ができる。
となると、その余裕枠を有効に使いましょうというのはごくごく自然な話。成田が現状で受け入れることができない新規枠を羽田にまわすとか、夜間・早朝分を羽田にというのは有効活用の範囲内だし、羽田が成田がという話でもなんでもない。
なので「ハブ空港」という言葉に釣られてしまうけども、要は首都圏の空港の有効活用の話だし、航空の需要と供給のアンバランスを当面どう解消していきますか? という話と考えたほうがいい。成田で受けきれない注文をどうやってさばくか? という話ですよ。ハブ化はかなり理想論。そこまでいかんよ。現実にハブ空港のモデルに名前が出てる韓国の仁川空港だって、ありゃ国際線専用なんだから、成田と現実面で違いがあるわけでもなし。成田−羽田と仁川−金浦の構図は一緒でして、ええ。
ま、問題があるとすりゃ管制の問題かね。横田との兼ね合い。ここはアメリカとの絡みがあるから、ちとややこしい。

代表する利益が違う

あとこの話ではあちこちの知事とか市町村の首長がいろいろ騒いでいるわけですが。

まあこれは当たり前でしてね、ええ。みんなプレイヤーだから。それぞれ利益を代表してるから。
例えば橋下大阪府知事大阪府の利益を代表している。だから関空押しになる。当たり前。それは森田千葉県知事だってそうで、成田を無碍にするわけにはいかない。一方で石原東京都知事は賛成。羽田は東京都にあるわけだから、そりゃそうだわね。
地方の首長は、その地方の利益を代表しているし、住人の利益の代弁者でもあるので、反対があって当たり前。極端な話、彼らは他の自治体に損させてでも、自らがトップの自治体の利益を優先する。理想は共存共栄だけども、どこかが損をする話ならば、自分のとこだけは損しないように回避するし、パイの取り合いならば、なるべく多くのものを得るようにする。そういうお仕事。職務。知事という一国一城の主だからねえ。
なので、こういう矛盾も仕方ないのよ。


森田健作がかつて羽田の国際化を主張していたという証拠なわけど、当時は国会議員、現在は千葉県知事。代表している利益が違うので、主張のブレ、矛盾はやむを得ないですよ。立場が違うんだから。演技だろうがなんだろうが、前原国交相に噛み付いて耳目を集めて、成田に不利にならないように誘導するのが彼の現在のお仕事なわけですからねえ。「どうぞどうぞ、みんな羽田へ」ってやったら、千葉県知事としてはどうよって話になるわけでしょ。ねえ。
もちろん前原国交相だって国の大臣、日本国政府の一員という立場なわけで。国の利益を背負っているわけでね。各プレイヤーがそれぞれ代表している利益が違うので、立場の違いによる価値観の違いは発生して当然なんですよ。

国会議員は何の利益を代表すればいいんだろう

でだ、ちょっとこれは直接は関係ない話だけど、早晩絡んでくることだから一応書いとこうかな、という話。
知事とか大臣とかは立場がスッキリしてるわけよ。それぞれが自治体とか組織のトップだから、何の利益を代表しているかがわかりやすい。誰に選ばれたかがわかりやすいしな。どこから給料が出ているかもシンプルだし。これはいい。
問題は国会議員なのよね。彼らをどうするか。

地方の利益を代表して国会に来る人
国民の利益を代表して地方から来る人

これ。このふたつの考え方があるんだ。
で、従来は前者の方が圧倒的に強い価値観だったわけよね。○○県選出の国会議員は、地元に公共工事なんかを誘致する。国から如何にお金を引っ張ってくるか。お金を引っ張ってくる議員が優秀だった。よそを犠牲にしてでも、地元の発展を実現させてくれる国会議員が良かった。国としての利益という発想は後回しで、まずは地元の利益だった。
ただ、これだと「何のための国会議員なのか」って話になるわね。「国のために考えてないじゃん」と。都道府県レベルの利益を考えるのは都道府県議の仕事のはずだし、そのトップは知事のはず。国会議員は本来国益を考える立場で、だからこそ国税から議員歳費は出ている。なのにと。こういう問題がある。
とはいえ、これまでは地方の利益を代表するにはそれなりの理由付けもあった。それは国と地方の関係。国が圧倒的に強く、地方は弱い。地方は自前の予算が少なく、補助金とかで事業をまかなうしかない。そして事業で交付されたお金は、他の用途に使うことはできない。となると如何に補助金を中央から持ってくるかという話になるわけで、そこに中央に対する圧力として国会議員が必要だったわけですよ。ほっとくと予算つかないわけで。地方からの圧力がなければ、地方にお金がこない。地方からのロビイストであったわけですな、地方選出の国会議員は。
ただ、地方分権が進んでくると、こういう国益を考えない国会議員って何なの? って話になるわけよね。最初から地方にお金が配分されて、それで勝手に地方でやってくれになれば、国会議員の横槍はいらなくなる。
となると話としては、地方分権が進めば進むほど、国会議員は地方から選ばれたといえども国の利益を代表すべきということになる。道州制とかが導入されたら尚更そうね。地方のことは道州単位に任せればいい。国会議員の仕事は、国全体の利益を考えること。逆にあくまで中央集権で行くなら、国に対して地方はあまりに弱いので、ある程度国会議員が地方の利益を代表しないとどうにもならない。
で、現状は地方分権にしても何にしても過渡期なので、かなり微妙。国益を損なってでも、みたいな地方選出の国会議員もいるだろうし。そういうのがお仕事と思っているのもいるだろうし。
まあこのあたりの方向性も踏まえるとなかなか味わい深いと思いますよ。単なる賛成・反対ではなく、何のために賛成・反対しているかを想像することで、その人が守ろうとするものが見えてくるし、代表する利益が見えてくるから。みんな一筋縄じゃいきませんよ。政治だからねえ。思惑がある。プレイヤーとしてなるべくいい結果を導こうとしているわけで。
ま、個人的には羽田が便利になってくれるとありがたいですけどね。国益という観点でもそうだし、俺は都民なので、近い空港が便利な方がありがたいからです。成田よりも羽田だし、関空よりは成田です。本音。
そういう本音のせめぎあいとして見た方が、この話はわかりやすいんでしょうか。生あたたかく見た方がいいですよ。