(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

「ロース」が「もも」でもうまけりゃいいじゃん

狭義の「カルビ」「ロース」と、広義の「カルビ」「ロース」があるってだけの話ではあるんだけどね。

焼肉屋での「ロース」は「ロース」じゃねえよ問題。

狭義の「ロース」

農林水産省の「牛肉小売品質基準」で示された部位。

「肩ロース」「リブロース」が該当。「ロース」という文字列が含まれているわけだし。まあ間違いがないよね。

広義の「ロース」

焼くとうまいとこ

ほら、語源が「roast」だから。ローストしてうまいとこは、みんな「ロース」だよ。

脂身が少なく、赤身っぽいところ

これが焼肉店での一般的な解釈。「脂身がある部位=カルビ」に対して、「脂身が少ない部位=ロース」であると。ラーメンにおける「こってり」と「あっさり」の差といいますか。部位を示す言葉というより、脂身の量を示す言葉なのよね。みんなのイメージもこれでしょ。

今回、消費者庁に指導された全国焼肉協会は「焼肉のメニューよりも、牛肉の部位の基準ができた時期の方が遅いのに」とぼやく。
同協会によると、全国に焼肉店が普及し始めたのは昭和30年代で、当時はロース、カルビ、ホルモンの3種類しかメニューがなかったという。昭和50年代には「赤身の肉がロース、霜降りの肉はカルビというメニューのイメージが定着していた」と同協会は話す。

Expired

この言い分はようわかる。
焼肉店における「ロース」という言葉は、「ロース」という部位を示す固有名詞というより、「焼くとうまい」「脂身が少ない」という部位の代名詞であると。そういう解釈でよろしいかと思います。

虚偽表示じゃないの?

これも狭義と広義の差がありまして。ええ。

狭義の虚偽表示

早い話が法律違反だよね。JAS法違反とか。
ところが、焼肉店はこのJAS法の埒外

農水省食肉鶏卵課は「基準がないと、精肉店が思い思いの名称で肉を販売することになる。混乱を避けるために基準を定めた」と当時の背景を説明。この基準を定めたことで、牛肉の表示についての共通ルールが広まっていった。
食肉業界では、こうした基準や、原産地表示などを義務づけるJAS法などを踏まえ、平成7年に「食肉の表示に関する公正競争規約」を策定。精肉店やスーパーなどで一般に見られる牛肉の表示はこの規約に従っている。
だが、こうした表示義務は、流通や小売りの段階まで。飲食店のメニュー表示は、JAS法の対象から外れてしまうのだ。

Expired

別に法律違反じゃない。つーことは、狭義の虚偽表示ではないよね。

広義の虚偽表示

「言葉的におかしいじゃん」を虚偽とすると、まあ虚偽だよな。「ロース」なのに「ロース」じゃなくて「もも」なのだから。
ただ、狭義の意味合いの「ロース」をベースに考えるなら虚偽なんだけども、広義の意味合いなら虚偽じゃない。「牛肉小売品質基準」でのロースではないけども、「焼いたらうまい」「脂身の少ない肉」という広義の意味合いならセーフと。
つまり組み合わせとして、狭義−狭義の組み合わせだとアウトなんだけども、それ以外の解釈ならセーフなんだよな。「ロース」「虚偽表示」の双方で厳密な方で解釈するとアウトになると。そういう話。

厳密に表示した方がいいの?

で、ここからは私見なんだけども、わしゃこの話に関してはズバリ言って「どうでもいい」という立場。「もも」をきちんと「ロース」と表記せよとはまったく思わない。

長年の習慣でしょうよ

「ロース」なのに「もも」って問題っぽいけど、昔から焼肉店ではそうなんだから、今更なんだよという話。つい最近はじまった話でもなし。「虚偽表示」という概念ができる前からそうなわけで。焼肉店での「ロース」は、部位としての「ロース」とは限らんということを理解すればいいだけの話。

お店チョイスの問題

「いやいや、表示で嘘つかれているのが嫌なんだ」という話なら、嘘つかない店に行けばいいじゃん。きちんと名称通りの部位を出す店に行けばいい。

「当店では、この値段のロースはもも肉を使っています」

Expired

聞けば教えてくれるんだから。ここで嘘をつくなら問題だけど、本当のことを教えてくれるんだから、あとは自分でそういう店行けよと。つか、そういう店探せよ。「いい店」行けよ。

「もも」だと問題があるの?

あとさ、「ロース」が「もも」だからといってさ、そもそもそれのどこに問題があるのかがわからん。焼いて食べりゃわからんし、どっちみちうまいよ。
「『ロース』が『もも』でした」で問題なのは、「もも」が明らかに「ロース」よりマズイ場合であって、味のレベルが同じであれば問題ないし、「むしろ『もも』の方がうまくね?」であれば、むしろ「ナイス虚偽表示」。
で、実際に熟練したプロの技ともなると、「ロース」と「もも」の差なんてわからんし、その日の良い赤身部分を「ロース」として出すケースすらあるわけで、そういうポジティブ虚偽だってあるわけよね。
そういうあれこれを一緒くたにして「問題」とする感覚には、どうもついていけない。厳密な意味合いでは不正確な表記ではあるものの、じゃあそれでどんな損をしているのかと。店はどんな損害を客に与えているのかがようわからん。
そんなに表記の正しさが大事かね? 俺はそれよりもうまいかどうかの方が大事だと思うけど。うまいんならどこの部位でもいいよ。「ロース」が「もも」だからといって、それは味に関係ねえし、それが味に関係のあるような店には行かない。
それでいいんじゃないんですかねえ。そんなに厳密さを求めたいですか?